二月 02

Thundercat:『Show You The Way』を語る

Kenny LogginsとMichael McDonaldをゲストに迎え入れたニューシングルについてBrainfeederが誇るベーシストが熱く語った

By Torsten Schmidt

 

2017年2月24日、Thundercatがニューアルバム『Drunk』と共にシーンに帰ってくる。Thundercatはアルバムをこのタイトルにした理由について次のように説明している。「Erykah BaduとFlying Lotusから言われた “酔っぱらった状態(Drunk)は、その人の正直な部分が出ている” って言葉を信じているんだ。俺も色んな形で酔っ払ってきたし、色んな酔い方を見てきた。飲酒には何か感じられるものがある。もちろん、酔っ払い方にも善し悪しがあるけど、どういう酔い方であれ人間的な側面を見せてくれると感じていたし、仲間のそういう部分も色々見てきたし、飲酒による仲間の死も沢山見てきた。そういう死ってのはミュージック・カルチャーに根付いているものだと思う。でも、絶対に公には語られない部分なんだ」

 

『Drunk』にはラップシーンのスーパースター数人(Kendrick Lamar、Wiz Khalifa)が参加しているが、先行リリースされたファーストシングル「Show You The Way」には別のスーパースター、Kenny LogginsとMichael McDonaldが参加している。RBMAラジオのインタビューからの抜粋となる今回の記事では、本人がこのシングルが生まれた背景について熱く語ってくれている。

 

ゲストアーティストについて話をする前に、曲自体について話しましょう。この曲のテーマは?

 

これはリスナーを “ウサギの穴” に落として別の場所へ連れて行く曲だ。「Show You The Way」は、俺の中では「別の場所へ行く方法を教えてあげるよ」ってことなんだ。歌詞に「On the edge of dark, there’s the brightest light(暗闇の端に最も明るい光があるんだ)」ってあるけど、この一節は俺の中で凄く大きな意味を持っている。ある意味、これは俺が友人や仲間と一緒にしてきた経験なんだ。一緒というか、自分の感情に彼らの感情を巻き込んでいく感じに近いから、かなりパワフルな経験になる時もある。要するに、物事が予想外の方向に進む時があるってことさ。この曲にMichael McDonaldとKenny Logginsが参加してくれることになったのも凄く面白い話だしさ。

 

2人のどちらがチェシャ猫でどちらがマッドハッターですか(笑)?

 

(笑)。実は、今回の制作で実際に2人に会った時も、2人が「進み方を教えてあげる」って示してくれているように感じたんだ。それこそまさに今回の作業を通じて2人が俺にしてくれたことさ。この曲は俺ひとりで書いたわけじゃないんだ。Michael、Kennyと一緒に書いたのさ。俺は俺のパート、Michaelは彼のパート、そしてKennyにも彼が気持ち良く感じる部分に自分のパートを落とし込んでもらった。それぞれが思い思いに取り組んだ。だから、この曲には色んな解釈の仕方がある。でも、俺にとってはウサギの穴に転がり込む曲なんだ。

 

 

最初は2人にもそういうテーマの曲だと説明したんですよね?

 

ああ。本当は何もヒントを与えたくなかったんだけどさ。俺の説明を聞いた2人は「何言ってるんだ?」って顔をしていたけど、俺は「今の説明を聞いてどう思いました?」って逆に質問した。こういう形で作業が進んでいったんだ。

 

曲中でアーティストを紹介するMCを担当しているのは誰ですか?

 

ああ、あれは俺だよ。ラウンジで「レディース&ジェントルマン」って紹介する感じさ。

 

ラスベガスのショーホストのようなこのスタイルは最初から考えていたんですか?

 

ちょうどそんな感じのマイクがあったからさ。イントロを作っている時に、俺とFlying Lotusで笑いながらこのアイディアについて話したんだ。「絶対そういうスタイルでやるべきだよな」、「2人は絶対に紹介すべきだよ。2人共長い間ソングライティングに携わってなかったし、凄いことなんだからさ」ってね。

 

この曲はどうやって生まれたのでしょう?

 

最初はKenny Logginsと始まったっていうか、彼の息子がきっかけだったんだ。実は、ラジオで「無人島に行くなら誰と一緒に行きますか?」って質問された時も、ジョークかと思うかも知れないけど、俺は大まじめにKenny LogginsとMichael McDonaldって回答したていたんだ。音楽の中に正直さが存在するってことを教えてくれたのがこの2人だったからね。

 

Kenny Logginsは俺が大好きなソングライターのひとりで、お気に入りの1曲は「Heart to Heart」だ。なぜなら、この曲は彼の人生の厚みを感じることができるからさ。この曲は俺の今回のアルバムに多大な影響を与えたし、大声で歌っちゃうくらいさ。この曲を聴くと「Kennyって何でも知っているな。彼は分かっている。すべてを経験しているんだ」って感じられるし、今回のアルバムのお手本にしていたんだ。

 

 

俺のバンドのピアニストのDennis HammがKenny Logginsの息子(Crosby Loggins)と一緒に仕事をした経験があって、Kennyも含めて一緒にツアーに出たこともあったんだ。だから、俺はしょっちゅうDennisにKenny Logginsの話をしていたのさ。「Kenny Logginsって本当に最高だよな。彼こそ真のアーティストだよ。彼はすべてを分かっている。彼の音楽を聴けば人生経験豊富だってことが伝わってくるぜ」なんてまくしたてていたんだ。するとDennisが「じゃあ連絡を取ってみて、Kenny Logginsが君と一緒に仕事をするつもりがあるかどうか訊いてみるよ」って言ってくれたのさ。「冗談だろ?」って思ったね。

 

Kennyから連絡がきた時、彼は開口一番に「これはジョークなのかい?」と訊ねてきた。あれは気まずい一瞬だったね。そのあと「本気で私と仕事をしたいのかい?」って訊かれたから、「本気です」って答えた。それでようやく彼は取り合ってくれて、デモを聴いてくれたんだ。

 

最初は疑っていたと思うよ。なにしろ、俺はビッグアーティストじゃないからさ。でも、俺は本気で説明したんだ。だから、彼も何が起きようとしているのかを真剣に理解しようとしてくれた。もし、俺が彼にタックルしたいって話をしていたら、TVのドッキリ番組だと思っていただろうな。

 

Kennyはデモを聴いたあと連絡を返してくれて、「今聴いているところだよ。君はジャズから随分影響を受けているようだね。Mahavishnu Orchestraは好きかい?」と訊ねてくるから、俺は「もちろんです!」と答えた。するとなんとKennyは「OK。それならMichael McDonaldにも連絡を入れてみよう。彼を加えるのはグッドアイディアだと思うんだ。彼もこういう音楽が好きだから」と言ってくれたんだ。

 

マジでチビるかと思ったよ。言葉には出さなかったけど心底驚いたね。電話では「分かりました」なんて返したけど、内心は「おいおいおい、これってマジですか?」って思ってたよ。それで今度はMichael McDonaldが連絡をくれたんだ。Michael McDonald本人と電話で話をして、スタジオに入ってもMichael McDonald本人がいた。俺とMichaelがスタジオに座ってるんだぜ。銀髪の彼がネルシャツを着て目の前にいたんだ。

 

 

 

“Michael McDonaldがボイスメモを送ってくれた時は、涙を流して感動したよ”

 

 

 

共同作業を通じて2人には何個か違うアイディアを聴かせたし、本当は2人に歌ってもらいたい具体的なアイディアもいくつか用意してたんだけど、どうやってそれらを彼らに紹介したら良いのか分からなかった。部分的にしか用意できていなかったからさ。

 

共同作業をしていて最高だと思えたのは、Michael McDonaldの素晴らしさに改めて気付けたことだった。彼は色々なアイディアを試してくれたし、彼自身も色々なアイディアを持っていた。「今のをもう一度お願いします」って頼むと、「どんな感じで?」なんて返してくれるんだ。そういうやりとりだけでも魔法のように感じられたし、「家に持ち帰って色々試してみるよ」とさえ言ってくれたんだ。それで、あとでボイスメモを送ってくれるんだけど、俺は涙を流して感動したよ。こうして仕上がった曲は、長年色々やってきた俺とLotusでさえも「こりゃタイトだぜ!」って感じることができるものになっていた。

 

この話にはまだ続きがあるんだ。ある日、Kennyが「Michaelには長年会っていなかったから、こうやってまた一緒に仕事をするチャンスをもらえたのは嬉しいね」と言ってくれたのさ。俺はもう… 本当に胸が一杯になったよ。なんて言ったら良いか分からなかった。純粋な幸福感を得られたと同時にぶっ飛ばされたね。

 

俺の仲間は、俺がいつもMichael McDonaldの真似をして歌ったり、彼になりきって質問に答えたり、彼の声真似をしてDrakeのトラックを歌ったりしているのを知っているよ。

 

Drakeの「Over」ですか?

 

家を歩き回りながらMichael McDonaldの声真似でこのトラックを歌うんだ。目を閉じて、拳を突き上げる感じでさ。

 

Michael McDonaldも歌う時に目を閉じるのでしょうか?

 

ああ。今でもそうだよ。

 

どう言葉で表現したら良いのか分かりませんが、彼はファルセットと通常のヴォーカルの間の声域と言いますか、グレーゾーンの声域を操るのが本当に上手いですよね。

 

しかも、そこには独特のハスキーな感じもある。彼のあの歌声を通じて、俺は自分の歌声を学んだんだ。だから、俺はいつもハイトーンで歌うんだよ。彼のあの声域は俺には難しいんだ。負荷がかかるんだよ。俺はそれを分かっているから、彼の歌声をより一層素晴らしいものに思えるのさ。負荷はかかってるんだけど、すごく自然で正しい歌声なんだよな。それがMichael McDonaldなのさ。