一月 26

Ryan Hemsworthとビデオゲームミュージック

Kanye WestやLana Del Reyなどのリミックスワークでも知られるカナダ人トッププロデューサーが思い出のビデオゲームミュージックを語る

By Ryan Hemsworth

 

ビデオゲームミュージックをテーマにしたRBMA Radioの番組『Diggin’ in the Carts』ではゲストアーティストに記憶に残っているサウンドトラックをリストアップしてもらっている。今回はマルチな才能で知られるカナダ人プロデューサー、Ryan Hemsworthにビデオゲームとの歴史を振り返ってもらい、今でも強く印象に残っている5曲を挙げてもらった。


 

RBMA Radio『Diggin’ in the Carts』はこちら

 

 

“Gate of Your Dream”

From:『NiGHTS into dreams…』(SEGA / 1996年)

 

 

僕はSEGAのゲーム機を1台も持っていなかったけれど、SEGAの全ゲーム機を揃えていた従兄弟がいたから、よく彼の家へ行っては、彼がビデオゲームをプレイしているのを延々と眺めていたんだ。その中で『NiGHTS into dreams…』には奇妙な思い出が残ってる。従兄弟がプレイしていたのはクリスマスバージョンの『Christmas NiGHTS』だったから尚更ね。クリスマスに夢や悪夢を組み合わせたビデオゲームは他には存在しないから(だから、正直に言えば楽しかったというより、怖かったというイメージが残っているんだ)。サウンドトラックも不気味なほど夢の世界だった。ゲーム内のステージも上下鏡映しみたいになっていて、上にも下にも地面が存在している。このトラックはしっかりとパンニングされていて、子供の声も聴こえる。音数は多いけれど、バランスが取られているし、派手すぎない。8秒ループの繰り返しなんだけど、ヒプノティックなんだ。

 

 

“Over”

From:『サイレントヒル』(Konami / 1999年)

 

 

このシリーズはどういうわけか僕とずっと一緒に歩んできたんだ。9歳の誕生日に僕の家でお泊まり会をした時に、沢山の友人が遊びに来てくれたんだけど、この時に初めてこのゲームに出会った。お泊まり会にはピッタリの内容だったから、出会いとしては最高の形だったんじゃないかな。全員が怖がって、太陽が昇るまで眠らなかったのさ。あの恐怖感は、僕がそれまでプレイしたことがあったビデオゲームではまったく得られなかったもので、とてもエキサイティングだった。僕ひとりの時は、ミュートするか、音量を絞ってプレイしていたよ。サウンドが怖いから聴きたくなかったんだ。

 

でも、音量を上げる勇気があった日にプレイしてみると、このゲームのサウンドの重要性に気が付いた。音響、音楽、そして静寂の3つのバランスを取ることに多大な努力が注ぎ込まれているのが分かった。音楽を担当した山岡晃は音響とサウンドデザインを得意としているけれど、彼にはメロディセンスもある。手際よくクラシカルで装飾的な音楽も生み出せるんだ。これって実は凄く難しいんだけどさ。彼がサウンドエフェクト、音響、音楽のすべてを扱えて、そのすべてが本物のクオリティを備えているってことは触れておくべきだね。このトラックで聴けるディテールの細かさは当時の他のビデオゲームミュージックにはなかったものだ。

 

 

“テク2Walking / Polaroid”

From:『ビブリボン』(SCE / 1999年)

 

 

『ビブリボン』はリズムゲームだから、当然、サウンドトラックは最高に面白くてクレイジーだ。でも、『ビブリボン』はリズムゲームとは言え、『Dance Dance Revolution』のようなゲームとは違う。今回取り上げたトラックなんて本当にクリエイティブでキャッチーだし、松浦雅也をはじめとするサウンドチームは楽しみながら作曲したはずさ。

 

僕が特に気に入っているのは、音数が少ない点だ。使われているサウンドひとつひとつがとてもユニークで、それぞれが非常に大きな意味を持っている。リズムはよくあるドラムマシンのサウンドを思い切り歪ませたものだし、様々なシンセグリッチがポラロイドカメラのサウンドエフェクトと組み合わさってずっと鳴っている。そして、ちょっと音程が外れた女性シンガーが、山や海を走り回ることや死ぬ準備などについてのナンセンスな歌詞を歌っているんだ。ゲーム自体も基本的にはひたすらジャンプしながら歩いて行くだけなんだよ。

 

 

“Sarah”

From:『Sanitarium』(ASC Games / 1998年)

 

 

このゲームとどうやって出会ったのかは憶えていないんだ。僕は当時10歳くらいだったと思うんだけど、こういうポイント&クリックのアドベンチャーゲームに馴染みがなかった。実はこのゲーム以来、ポイント&クリックのゲームを1本もプレイしていないくらいさ。でも、この作品がポイント&クリックの世界を教えてくれたのは確かな事実だし、このジャンルはサンプルソースとして優秀なんだ。

 

この作品のゲームプレイはまさに悪夢だったね。兄妹に関する抑圧された記憶や、精神的疾患を扱っているから、色々と怖いサイコホラーなんだ。サウンドトラック自体はそこまで突出したクオリティじゃないけれど、カットシーンと音楽が上手く組み合わさった時は強烈だった。今回取り上げている「Sarah」はSarahというキャラクターとその妹が若くして命を落としてしまう様子を描いているカットシーンで使われているんだ。シーン自体はかなりディープなんだけど、MIDIで鳴っているこのベタなメロディがどういうわけか上手く機能している。とはいえ、映画やビデオゲームの世界ではもう二度と使われない類いのサウンドだと思うよ。今の時代には合わないサウンドだ。最近のプロダクションテクニックや機材は当時よりかなり進化しているのさ。

 

 

“Nanorobot Tune”

From:『Machinarium』(Amanita Design / 2009年)

 

 

僕がこのトラックを気に入っている理由は、プレイヤーがヘッドフォンを装着してプレイすることを想定して作られているからなんだ。僕はそういう音楽が大好きなんだよ。しかも、この作品のサウンドトラックは、ビデオゲームミュージックがどこまで進化したのかを教えてくれる存在でもある。ビデオゲームミュージックの作曲家たちは、エモーショナルな奥深さと個性、キャッチーさやスウィング感を生み出す方法を巧みに見つけ出してきたけれど、『Machinarium』のサウンドトラックはビデオゲームミュージックのシステムと作曲家の才能を極限まで引き出している音楽だと思う。

 

今回取り上げている「Nanorobot Tune」は、作曲を担当したFloexが新旧の様々なサウンドを織り交ぜた音楽世界に僕たちを案内してくれるトラックだ。ゲームの世界観とロボットの姿をしたキャラクター陣とパーフェクトにマッチしているよね。デジタルでシャープなんだけど、同時にアナログでどこか壊れているような感じもある。BGMとしても機能するし、集中して聴いても楽しめる。

 

彼のようにありとあらゆる音楽をバランス良く表現するためには相当の才能が必要だ。でも、僕はそれこそが、ビデオゲームミュージックの作曲家に必要なものだと思う。彼らの仕事はある意味自己が存在しないからさ。彼らがビデオゲームやゲーム機の前面にフィーチャーされることはないけれど、彼らの仕事はプロジェクト全体、パッケージ、そしてゲームエクスペリエンスにおいて非常に重要な意味を持っているんだ。