四月 05

RED BULL MUSIC ACADEMY 2018 BERLIN:参加者リスト PT.2

記念すべき20回目のRBMAに参加する世界37カ国から選ばれた61人のプロフィールを前後半に分けて紹介する

By Red Bull Music Academy

 

2018年9月、世界中の都市で開催されてきたRed Bull Music Academyが、全てが始まった場所に戻り20周年を祝う。世界から選ばれた61人のミュージシャンがドイツの首都に集まり、レクチャー、スタジオセッション、スペシャルイベントに満ちた5週間を過ごすことになる。

 

毎年、Red Bull Music Academyは世界各地で活動するアーティストたちから数千通のアプリケーションを受け取っている。ジャッジがそれら全てに慎重に目を通し、耳を傾けたあとで決定するクラスは、RBMAに届くアプリケーションのスタイル、アプローチ、文化的背景の多様性が反映されている。2018年は、ケニア、韓国、メキシコ、カナダ、フィリピン、ロシア、ニュージーランド、スペイン、トルコ、ブラジル、そして日本など、世界37カ国から選ばれたアーティストたちが、9月8日から10月12日までドイツ・ベルリンで開催されるRed Bull Music Academy 2018 Berlinに参加する。

 

Red Bull Music Academy 2018 Berlinに参加するアーティストたちの多種多様なサウンドとスタイルには、示唆に富んだ日本産エレクトロニカ、イランのアンダーグラウンドクラブシーン発のIDM、ニュースクールUKジャズ、南アフリカ産アフロフューチャーダンスミュージック、ドイツ産エクスペリメンタルヒップホップ、ナイジェリア産ネオソウル、ジョージア産ドローン、ポーランド産インダストリアルテクノ、US産ポストパンクなどが含まれている。

 

Red Bull Music Academyは、サウンドへの新しい視点と意見を提示してながら毎回独自の世界を生み出してきた。ベルリンの参加者たちも、トップアーティストたちによるレクチャーやワークショップに参加しながら、カスタムメイドの最新レコーディング施設で他の参加者やトップアーティストたちとのコラボレーションセッションを重ねていく。また、同時にRed Bull Musicによる1ヶ月間のフェスティバルも展開され、ベルリン市内で様々なコンサートやクラブナイトが開催される。Red Bull Music Academy 2018 Berlinではこれらを通じて、音楽史に残るトップアーティストたちと新世代のアーティストたちが交流し、お互いに刺激を受けながら、音楽の過去・現在・未来を共に祝うことになる。

 

ベルリンへ向かう61人のプロフィールを2回に分けて紹介していくが、Part.1では以下の29人を紹介する。(アルファベット順M〜Y)

 

Maqueta // Mess_Montage // metabora // Milan W. // Mira Aasma // MORPSIS // Mulherin // nami sato  // NewRa // Nick León // OG LULLABIES // Perel // Quinn Oulton // ramsha // robogeisha // Sasha Vinogradova // Sequoyah // Shelly // Sichangi // similarobjects // Sneaks // Solid Blake // Soul Of Hex // Svetla V // vōx // VTSS // Wasted Fates // Yakamoto Kotzuga // Ylia

 

 

 

 


Maqueta

ブエノスアイレス(アルゼンチン)

 

 

Ariel Schlichterは主にMaqueta名義で作品をリリースしているアルゼンチン人アーティストだ。地元ブエノスアイレスのバンドをホームスタジオでプロデュースしていない時の彼は、リバーブに浸されたトロピカリアと1980年代シンセポップがわずかに感じられる中、情熱的なヴォーカルがメロドラマ感と広がりを加えていく、揺れのある魅惑のエレクトロポップを制作しているが、そのサウンドは、リスナーが掴んだと思った瞬間、指の間をするりと抜けていく。たとえば、2017年にリリースされた「Mientras Miro el Cristal」は、後半に入るとスタンダードなポップソングが奇妙な姿へと変容する。スローモーションを見ているかのようにテンポが落ち、Schlicheterのヴォーカルとドラムがまるで自動車事故を起こす直前のような不思議で不気味な感覚を生み出す。Schlichterの音楽は基本的には気楽に楽しめるものだが、このような実験的な部分がリスナーの緊張感を保ち続けている。

 

 

Mess_Montage

トビリシ(ジョージア)

 

 

Mess_Montageとして知られるTornike Margvelashviliは、非常にゆっくりとビルドアップしていくメランコリックなアンビエントサウンドを生み出しており、リスナーは知らぬ間にその世界へ引き込まれていく。メインストリームの外側に位置していると自己評価するその音楽は、ジョージア民謡のハーモニーにアートや映画の抽象表現主義を組み合わせており、本人は、このレイヤーが折り重なったエレクトロニック・ミュージックは座ったり、寝そべったりしながら聴くのがベストだと考えている。Tbilisi State Conservatoire(トビリシ州立音楽院)でサウンドシンセシス(音合成)を教えている彼は、クラシック音楽のバックグラウンドを持たない初の生徒のひとりとしてこの音楽院で学んだあと、デンマークのオーフス王立音楽アカデミーで勉強を続けた。2017年にShimmering Moods Recordsからリリースされたデビューアルバム『The Death of Optimus Prime』は最短の楽曲でも6分もある。Tornikeの世界では、良い物はゆっくりと楽しまれるのだ。

 

 

metabora

タリン(エストニア)

 

 

子供の頃、Nathan Tulveは父親が指揮する合唱団のために曲を書いていたエストニアを代表する作曲家Arvo Pärtの家へ招かれ、Pärtがピアノで演奏したその曲を兄と共に聴くと、その美しいミニマリズムに衝撃を受けた。そして、それから何年も過ぎたあと、Amnesia Cannerのトラックに出会ったTulveは、同じようなサウンドの祝福の瞬間を体験したとしている。このように大きく異なる音楽と制作手法を平等に受け容れている彼の姿勢は、Metabora名義で制作する作品群に活かされている。クラシック、メタル、エクスペリメンタル・エレクトロニック・ミュージックなどの要素を組み合わせながら、Tulveは空間的なデジタルサウンドを生物のように呼吸をするサウンドスケープにまとめあげている。また彼は、地元タリンでClub Felicityと名付けたパーティの共催やヴォーカルアンサンブルVox Clamantisとのコラボレーションを行っており、最近もダンスパフォーマンスのために8分のロングトラックを手掛けたが、どのフォーマットでも、音楽で衝撃を与えるというTulveのテーマはぶれていない。

 

 

Milan W.

アントワープ(ベルギー)

 

 

Milan W.は、AutechreやAphex Twinの系譜上に位置する、ダンスミュージックの外縁をなぞる音楽を作っているが、彼の音楽がリスナーに完全な不快感を与えることはない。Milan W.の作品はアンビエント系が多く、2016年にリリースされたアルバム『Intact』の大半は眠りにつくのにパーフェクトだ。彼の作品群は震えるような不協和音を縫い合わせていくが、時としてソフトなビートがリスナーの体を揺り動かす。星が美しく輝く夜空を見上げるような、または霧に包まれた夜の街を歩くような彼のサウンドは非常に静かだが、そこには常に “未知” のスリルがある。

 

 

Mira Aasma

ストックホルム(スウェーデン)

 

 

Mira Aasmaは2015年にストックホルムのBirds Recordsからデビューして以来、その洗練されたエレクトロポップで高く評価されてきた。独学で音楽を学んだプロデューサーである彼女の作品は、森の近くで育ったヨーテボリでの子供時代や、James Blake、Highasakite、Björkなどのアーティストからインスピレーションを得ながらごく自然な形で進化を遂げてきた。2017年にBirds Recordsからリリースされたファーストアルバム『Mira Aasma』は、自信に溢れるヴォーカルを、ギター、シンセ、力強いベースライン、深いリバーブ、美しいエフェクトなどに重ね合わせている。ビデオゲームのサウンドトラックの制作や楽器店での仕事も楽しんでいるAasmaは、シンセのはんだづけや4人編成の聖歌隊のための編曲なども行っている。

 

 

MORPSIS

パティアーラー(インド)

 

 

Ikagarjyot Singhは、MORPSIS名義の前に複数の別名義で音楽制作を行っていた。インド・パンジャブ州出身のSinghは、インターネット上のチュートリアル動画とアーティスト仲間を通じて音楽制作の世界に足を踏み入れたあと、ソロギタープロジェクトInfinite Jar Spaceで2017年にEPを3枚リリースした。また、Astral Doormenのメンバーとしてパフォーマンスも行っている。MORPSIS名義では、ミュージックコンクレートとフィールドレコーディングからヒントを得たアンビエントなサウンドスケープを生み出しているが、その抑えの効いたサウンドレイヤーが現実世界から離れすぎることはない。

 

 


Mulherin

ロサンゼルス(US)

 

 

2017年、Parker Mulherinはモーテルに寝泊まりしながら11日をかけて地元メンフィスからロサンゼルスまでドライブした。ニューメキシコ州、グランドキャニオン、ラスベガスなどに立ち寄りながら自国を再発見していったParkerは、スムースに自分の人生を次の章へ進めたが、彼は同じスムースさで、Drake、The Beatles、James Blakeなどから受けた影響を自分のR&Bの中に取り入れている。このロードトリップに同行したのが、RBMA 2015の卒業生で、双子の兄で、Mulherin名義のパートナー、Marshallだった。高校の鼓笛隊で初めて音楽に触れたParkerは、ニューオーリンズのロヨラ大学在籍中にビートメイクをスタートさせ、Marshallと組んだMulherin名義で2015年にリリースした「Daily」で注目を集めたが、このトラックには彼らの特徴と言える、控えめなアレンジとパラレルなヴォーカルが確認できる。現在ロサンゼルスに拠点を置くParkerは、地元メンフィスから受けた影響とモダンでミレニアルなアプローチを組み合わせた音楽を作り続けている。


 

 

nami sato

仙台(日本)

 

 

2011年3月11日、佐藤那美の地元仙台市荒浜は地震と津波に襲われた。この日以来、佐藤は音楽制作を通じて「景色、匂い、意識の中の神聖な部分」を表現しようとしてきた。テレビやショートフィルムの音楽制作から離れている時の佐藤は、被災者を癒やすことを目的としたアートプロジェクトへの参加や、アルバム制作(2013年の『ARAHAMA callings』など)に取り組んでいる。周囲の環境とBrian Enoのようなアンビエントのパイオニアたちから等しくインスピレーションを得ている佐藤のアトモスフェリックな作品群は、リスナーに心の平穏と感嘆を同時にもたらす。シンセ、ピアノ、ギター、フィールドレコーディングなどを美しく重ね合わせている彼女の音楽は、我々が住むこの世界を再考しながら再現している。

 

 

NewRa

ベルン(スイス)

 

 

NewRaは、自分の音楽を「低音と空間への頌歌」と呼んでいるが、実際は、この2つへのオマージュを捧げることよりも、これらと格闘しながら、新たな地平線を生み出すことにウエイトが置かれている。スイス出身のこのプロデューサー / ヴォーカリストは、6人組のディープハウスユニットSirens of Lesbosのメンバーとしての活動が最も良く知られているが、ソロはそこから大きく異なる別の世界へ飛び出している。NewRaのソロ作品は、温かさと異世界感が同時に感じられるテンポとテクスチャが特徴のエクスペリメンタルな音楽だが、そこにアカデミックな感じはない。また、彼女の声も、メロディの中心に据えられる時もあるにせよ、基本的には間接照明程度でしか使われていない。自分の足で歩き始めているNewRaは、プロデューサーとして成長してエンジニアリングスキルを向上させることで、すでにハイクオリティな自分の音楽をさらなる高みへ引き上げようとしている。

 

 

Nick León

マイアミ(US)


 

 

Nick Leónは、Denzel CurryやRobb Banksなどサウスフロリダのトップラッパーたちとコラボレーションを重ねることでヒップホップシーンの中に自分の居場所を得た。しかし、独学で音楽を学んだこのプロデューサーは、自身の先行きに不安を感じ、ビートシーンへ転向。この賭けが上手くいった。2016年、マイアミを拠点に置くLeónは瑞々しいデビューアルバム『Profecía』をリリースして数多くの高評価を得た。洗練されているが独特の湿度が備わっており、フロリダの湿地帯に生息する鳥や虫の鳴き声などのサンプルから生命の息吹も感じられるこのアルバムは、Leónをひとつのブランドに押し上げ、実験性に溢れる彼のビートは、ここ何年もシーンで見かけなかったエキサイティングなプロデューサ-のひとりという評価を本人に与えた。映画音楽の制作や他のアーティストとのコラボレーション、DJ、マイアミの同士たちと組んだレーベル / コレクティブの運営と、Nick Leónは忙しい日々を送っているが、本人はこの生活に幸せを感じており、そのビートは生命力に溢れている。

 

 

OG LULLABIES

ワシントンD.C.(US)

 

 

ヴァイオリン、ピアノ、ギターなどを独学で学んだワシントンD.C.出身のTaylor Brookeは児童音楽教室の先生として生計を立てているが、教室の外では、ローカルヴェニューでのパフォーマンスとソロワークのレコーディングを行っており、OG LULLABIES名義でのリリースも重ねている。オルタナティブなR&B、エクスペリメンタルなエレクトロニカ、ジャズ、クラシックをスピリチュアルに融合させている彼女の音楽は、ひと言にまとめるなら、"フューチャリスティックなネオソウル" になるだろう。2016年にリリースした『Intuitive』EPは、美しいヴァイオリンソロからトランス状態を生み出すようなハーモニーまで、彼女の幅広い才能が全て示されている。2018年にリリースした『cruescontrol』EPの明るいがダウンテンポなリードシングル「Water on Mars」は、彼女のコズミックな美学がさらに高められている。

 

 

Perel

ベルリン(ドイツ)

 

 

Perelことドイツ人DJ / プロデューサーAnnegret Fiedlerのドリーミーなエレクトロニック・サウンドスケープの中心に位置しているのはアルペジエイターだ。ドリーミーなシンセパッドとストリップダウンされた4/4ビートの上でアルペイエイターが上下し、抑えられた色彩の万華鏡を作り出していく。Nina Hagen、DAT、Depeche Mode、Kraftewerkなど、パンクやシンセポップのパイオニアたちに影響を受けているFiedlerは、境界線を押し広げる新しい何かに挑戦しようという強い気持ちを持ちながら、自分の音楽を感情と繋ぎ合わせて自然と色彩に対する独特のセンスを表現している。ライブエレクトロニックアクトKlub.Monoでの活動を経て2014年からソロとして活動してきた彼女は2017年にDFA Recordsと契約しており、現在はデビューアルバムの準備を進めている。

 

 

Quinn Oulton

ロンドン(UK)

 

 

Quinn Oultonはまだブレイク前のアーティストだが、すでに歴史に名前を残している。2017年2月、ジャズインストゥルメンタリスト / シンガーの彼は、British Airwaysのニューオーリンズ就航記念便に乗り込んでパフォーマンスを披露し、世界最高高度ジャズライブを記録。ニューオーリンズは丁度マルディグラの時期だったため、Oultonはそのままこのジャズシティが誇るフェスティバルに向かった。ロンドンを拠点に活動するOultonは、この経験を "人生で最も重要な経験のひとつ" に数えつつ、サックスを始めた8歳から続く自己鍛錬の延長上にあるものだとしている。幼い頃から正式なジャズ教育を受け、数々のバンドでプレイし、2013年にはロサンゼルスで開催されたGrammy Campに参加した彼は、ロンドンの王立音楽アカデミーでジャズサックスを学んだ経験も持つ。2017年は、デビューソロアルバムの制作とOultonの優れたアレンジを整備士の姿で再現する5人編成のバンドQuinn’s Carsでのパフォーマンスに1年の大半を費やした。

 

 

ramsha

トロント(カナダ)


 

 

Brian EnoとPink Floydからインスピレーションを得ているトロント出身のプロデューサー / マルチインストゥルメンタリストのRamsha Shakeelは、宇宙的と表現できるアンビエントの制作に取り組んできた。グラフィックデザイナー / イラストレーターとして働いていない時の彼女は、ギター、ピアノ-、シンセ、エフェクトなどを用いて、光まばゆい星座や異世界から届く光を彷彿とさせる音楽を生み出しており、『Daastanemarg』EPと『Veils』EPでは、ディストーションや旋回するノイズ、リバーブなどを駆使して茫洋な宇宙と冷気に包まれた漆黒を同時に表現している。イーロン・マスクと話す手段を持っていない人にとって、Shakeelの音楽は火星旅行をイメージする最適な方法のひとつと言えるだろう。

 

 

robogeisha

イスタンブール(トルコ)

 

 

2017年リリースの『rofl』EPで、robogeishaことEsra Gençはブリープと金属音、様々な雑音をまるで貪欲に動き回る生物のように響かせることで、昆虫が蠢くようなサウンドや液体的なノイズが際立つタイトルトラックや、強烈なテクノトラック「But Drowning」などを生み出した。幼少時のヴァイオリンレッスンから始まり、クラブでのオールナイトや実験用オーディオ回路の生じるノイズのサンプリングへと音楽の旅を続けていった彼女は、社会生活や公共スペースをテーマにしたインスタレーションも制作している。robogeishaは、最もラフなエレクトロニックサウンドの中に意外な形で潜んでいるオーガニックエナジーを見つけ出している。

 

 

Sasha Vinogradova

モスクワ(ロシア)


 

 

Sasha Vinogradova名義で活動しているAlexandra Vinogradovaは、柔軟で美しい歌声、ライブパフォーマンスへの情熱、そして豊かなアレンジが光るインディーフォークバラードを書ける才能を持っている。16歳の時に名付け親からギターを受け取った彼女は、直感に従いながら、新しい言葉を生み出しながら、Canのようなサイケデリックバンドから影響を受けながら、そして音楽療法士として傷を負った子供と大人を癒やしながら、自身のスキルを磨き続けてきた。2017年にリリースされたアルバム『Аласкавль』には5人編成のバンドSirius Orchestraがフィーチャーされており、彼女の柔らかな作品をチェロ、ヴァイオリン、ウクレレ、トランペットなどが支えている。Vinogradovaは次の目標に声だけを使ったアルバムの制作を挙げており、歌詞とヴォーカルテクニックを組み合わせてサウンドの “アブストラクトウェア” を編み上げたいとしている。

 

 

Sequoyah

アトランタ(US)

 

 

通常、「音楽が自分のDNAに組み込まれている」という表現は比喩として使われるが、アトランタ出身のSequoyah Murrayにとってこの表現は現実に近い。パーカッショニストとヴォーカリストの間に生まれたMurreyのパワフルでダイナミックなバリトンヴォイスは努力の積み重ねによるものだが、天性のものでもある。また、シンガーとして天賦の才を備えているMurrayは、アップライトベースの演奏と作品の大半のプロデュースも担当している。2015年のデビューアルバム『True Fun』は、ジャンルの垣根を跳び越えた野心的な作品で、ロック、トリップホップ、アフロビート、ジャズを組み合わせる実験に挑んでいる。『True Fun』のあと、アトランタを拠点に活動するエレクトロニック・アーティストPamela_And Her SonsとツアーをこなしたSequoyahは、2017年にセカンドアルバム『Dream Sequence』をリリースした。エレクトロニック・ポップにルーツを持つ自信とまとまりが感じられるこのアルバムで、Murrayはアフロビートを用いながらギターサウンドをユニークなビートに変えているが、依然としてその中心にはリスナーの魂を震わせる彼のヴォーカルが位置している。

 

 

Shelly

バルセロナ(スペイン)

 

 

ShellyことJoan Cañellas Rodríguezは、16歳の時に地元バルセロナで開催されたSónar FestivalにDJとして出演した。この出演は話題になったが、プロデューサー / インストゥルメンタリストの彼はその後も地道に自分のサウンドを磨き続け、大学でオーディオヴィジュアルのエンジニアリングを学びながら、サウンドトラックやいくつかのミニマルミュージックを制作した。InnoDB名義ではドローンやアンビエント的な作品を制作している彼は、Shelly名義(以前はDJ iTunes 10.2と名乗っていた)ではベースミュージックを制作しており、コスモポリタン的な魅力を備えたダンサブルなシンセフレーズを用いているが、同時に子供の聖歌隊や部族のチャントなどをレコーディングしたスイートでアーシーなサンプルも起用している。このような特徴が、Sónar Festivalをはじめとする数々のダンスフロアを朝まで踊らせる刺激に満ちたソニックブレンドを生み出している。

 

 

Sichangi

ナイロビ(ケニア)

 

 

Samuel Namasakaはバッドアイディアを試すことを恐れていない。プロデューサー / DJ / インストゥルメンタリストの彼は「そういうアイディアから色々学んでいるんだ。自分が求めているアイディアがより明確になるんだよ」とコメントしている。バッドアイディアが彼の邪魔になることはないのだ。ナイロビで育った彼は母親の意向でピアノを習い始めた。ピアノは難しかったが、彼はこの楽器を気に入り、「創作する」喜びに刺激される形で2年後に才能を開花させると、そのソウルフルでシルキーなR&BサウンドはWillow SmithやTylor Coleなどを惹きつけ、彼らとの共作へと繋がっていった。Sichangiの柔らかなサウンドは、聴けば聴くほど魅力的に感じられるもので、地味だがつぼを押さえているファンキーなアレンジとスイートでメロディアスだが洗練されたリズムに満ちている。そして、2018年のデビューアルバム『The Project Greatness』で示されている通り、彼の音楽の中に “バッドアイディア” はほとんど確認できない。

 

 

similarobjects

マカティ(フィリピン)

 

 

デ・ラ・サール=カレッジ・オブ・セント・ベニールでエレクトロニック・ミュージックを教えているJorge Juan Wienekeは、2016年に自分の音楽学校Cosmic Sonic Artsを開校した。教壇に立っていない時の彼は、プロデューサー / DJとして複数の名義でレコーディングやパフォーマンスを行っており、similarobjectsはそのひとつだ(他の名義としてはpercentiusden sytyなどがある)。名義を問わず、Wienekeは自分の音楽を “ネオ・ポリスタイリズム / Neo-Polystylism)” と呼んでおり、この言葉が、異種のサウンドを組み合わせる自分のスタイルを的確に表現していると信じている。たとえば、2016年にリリースされたアルバム『Placed into Abyss」は、ロサンゼルスのビートシーンを思わせる強烈でダイナミックなパーカッションとシンセを多用したモダンファンクグルーヴを組み合わせているが、その一方で、2017年のプロジェクト『samadhi loops vol.1』では、ほこり臭いジャズレコードのサンプルチョップをグルーヴィーに試している。

 

 

Sneaks

ニューヨークシティ(US)

 

 

Tewadaj Eva Moolchanは、サウンドをシンプルかつタイトに保つことで、ストレートなポストパンクトラックの中に仕込まれている魅力的なフックを際立たせている。Sneaks名義のデビューアルバム『Gymnastics』では、ニューヨーカーの彼女のどこか愉快でドリーミーなヴォーカル、けいれんするようなリズム、手際よくまとめられたベースメロティが確認できたが、それから1年後にリリースされた『It’s a Myth』は、ヒプノティックなマントラ「Look Like That」や幼児的なライムがリスナーを困惑させる「Not My Combination」などが彼女のスタイルをさらに進化させている。Nelly FurtadoからL7まで様々な音楽から影響を受けつつ、アトランタのAwful Recordsに興味を示し、さらには自分のルーツであるエチオピアのサウンドも探求している彼女の中では多種多様な音楽がごく自然な形で交わっているが、Moolchanの才能が、その内面を簡潔で自信溢れる音楽にまとめ上げている。

 

 

Solid Blake

コペンハーゲン(デンマーク)

 

 

Emma Blakeは大学の修士課程に進むために地元グラスゴーからコペンハーゲンへ移住したが、彼女は実践的な音楽知識の多くを、堅苦しい教室ではなく汗ばんだクラブから得ている。グラスゴーのトップラジオ局Subcity Radioでプロデューサーとして働いていたBlakeは、コペンハーゲン移住後にこの都市のアンダーグラウンドシーンで活躍するAperion Crewの主要メンバーのひとりとなり、現在はSolid Blake名義で、シンプルだが強烈なビートが特徴のテクノとエレクトロを制作している(尚、Solid Blakeというアーティスト名はビデオゲーム『メタルギアソリッド』の主人公ソリッドスネークのオマージュだ)。2017年の彼女は、Brokntoys、Herrensauna、Outer Zoneから作品をリリースしながらギグを重ねてヨーロッパ圏内のファンを増やしていった。尚、Blakeは空手の茶帯所有者でもあり、この事実が彼女のトラックにフィジカル的な強度を加えている。

 

 

Soul Of Hex

ティファナ(メキシコ)

 

 

Gerardo Cedilloはまだ20代半ばだが、10年以上に渡りダンスミュージックシーンに深く関わってきたベテランアーティストだ。Kry-Lonのメンバーとしてティファナの “ニューレイヴ” シーンを牽引した彼は、その後、高い人気を誇るプロデューサー / DJ / マルチインストゥルメンタリストへと成長し、現在は自身のレーベルVicario Musique Recordingsも運営している。Soul Of Hez名義の彼は、生々しい官能とクラシックハウス / テクノの抑制に、ジャジーフレーズやトーン、リズム、テクスチャの色鮮やかな変化を加えることで、美しいディープハウスオデッセイを生み出している。2014年にLarry Heardがリミキサーとして参加した「Lip Reading」をリリースしたあとDJとして多忙な日々を送っているCedilloは、2017年にはアムステルダムのトップフェスティバルDekmantelに出演した。

 

 

Svetla V

ベルゲン(ノルウェー)

 

 

ロシア人アーティストのSvetla Vは物憂げなシンセポップの制作と日常生活の両方にミニマリスト的アプローチを用いている。ラップトップ、マイク、キーボードコントローラーのみで音楽制作をしている彼女は、自分のスタジオは片手でどこにでも持って行けるとしている。尚、ノルウェー・ベルゲンとスウェーデン・ストックホルムを行き来している彼女は、スカンジナビアの厳冬に触発された熱心なハイカーでもある。2017年にシベリアのカセットテープレーベルPerfect Aestheticsからリリースされたアルバム『Mattias』での彼女は、英語・ロシア語・ノルウェー語でクールに歌いながら、そこにベースライン、ドリーミーでアンビエントなサウンドスケープ、アップビートなアルペジオをぶつけている。ノルウェーのレーベルEget Selskapが2018年内にこのアルバムの再発を予定しているため、近い将来、彼女のサウンドはより多くのファンに届くはずだ。

 

 

vōx

ロサンゼルス(US)

 

 

ロサンゼルスを拠点に活動するアーティストvōx( “ウォクス” と発音)として知られるSarah Wintersは、ヒップホップに影響を受けた幽霊のようなポップを生み出している。Kendrick Lamar「i」などを透明で滑らかな質感でカバーすることで広く知られている彼女のサウンドは、氷のように冷たいシンセとゆったりとしたドラムマシンのサウンドが特徴的だが、ソロ名義の作品はさらに興味深く、かすれた質感の声とデリケートなビブラートがユニークなストラクチャーの楽曲の中で揺れている。Wintersのヴォコーダーの使い方はImogen Heapのようなアーティストとの比較が避けられないものだが、リスナーを落ち着かせるメランコリーなバイブスが備わっている彼女のサウンドがユニークであることに変わりはない。

 

 

VTSS

ワルシャワ(ポーランド)

 

 

Martyna Wieczorekは、次のAmy Winehouseになることを夢見ていたシンガーだったが、喉に深刻な問題を抱えたことがこの夢の妨げとなった。そこで自分を “一匹狼” と評価する彼女は、VTSSとして自分の内面の強さを活かした強烈なインダストリアルテクノを生み出すことにした。2018年にニューレーベルIntrepid Skinからリリースされる予定の「Linked」や、2017年にリリースされたデビューシングル「Ununtrium」など、彼女のトラック群は無慈悲そのもので、積み重ねられていく金属音やビート、そして洞窟のように深いマシンの叫びがスピーカーを屈服させる。力強いビートを備えている彼女のトラックはピークタイム向きで、リスナーの体を強制的に揺り動かしていく。また、Wieczorekのライブセットはさらに激しく、Helena HauffやDJ Stingrayと問題なく肩を並べられるクオリティを誇っている。

 

 

Wasted Fates

メキシコシティ(メキシコ)

 

 

レイヴに通い始めたティーンエイジャーの頃、Octavio Márquezはまさか自分がその中心に位置することになるとは思ってもいなかった。しかし、現在の彼は、DJブースの中からレゲトンや疲れ知らずのダンサーでさえも踊り続けるのが難しい強烈な音楽として知られるバイリファンキのフレーバーをふんだんに盛り込んだ、陽気なラテンパーカッションとハイパワーなベースを長時間に渡って鳴らしている。熱のこもった16トラックが収録されている2016年のデビューアルバム『Data Nomadics』は各メディアから称賛され、同年にメキシコシティのクルーN.A.A.F.Iに参加するきっかけとなった。また、彼はAriana GrandeからMC Bin Ladenまで様々なアーティストのリミックスを手掛けていることでも知られている。日の出を見ていない時の彼は、愛猫と眠っているはずだ。

 

 

Yakamoto Kotzuga

ヴェネツィア(イタリア)

 

 

Yakamoto Kotzuga名義で活動するGiacomo Mazzucatoは、基本的にはギターかベースを演奏しているとしているが、複雑に進んでいく彼のビートは、彼がダウンテンポ、ヒップホップ、IDMなど、様々なエレクトロニック・ミュージックからも大きな影響を受けていることを示している。2015年にリリースされたデビューアルバム『Usually Nowhere』は、軋むようなシンセサウンドと囁くようなヴォイスサンプルがFlying Lotus的なジャズトラックにユニークな背景を加えていたが、2018年3月にリリースされたニューアルバム『Slowly Fading』では、跳ね飛ぶようなパーカッションとリバーブで飛ばしたシンセラインを用いながら、瞑想的、メランコリー、凶悪と様々な雰囲気を持ったバラエティ豊かなトラック群を生み出している。トラック毎に違った表情を見せるMazzucatoの音楽は聴いていて飽きることがない。

 

 

Ylia

バルセロナ(スペイン)

 

 

ティーンエイジャーの頃に音楽と出会ったSusana Hernandez Pulidoは、親友の家に行っては、ヴァイナルとターンテーブルが置かれていた彼女の兄の部屋に忍び込んで音楽を聴いていたと振り返っているが、音楽への愛はその後も継続され、Susanaをバルセロナのエレクトロニック・ミュージックシーン注目のアーティストのひとりへと押し上げた。ピアノの正式教育を受けた経験を持つSusanaは、スペイン南部で開催されていたレイヴでブレイクビーツとエレクトロをプレイするDJとして台頭すると、それから約20年後の2017年にSónar Festivalへの出演を果たした。DJやDublabで月1回放送されている自分の番組『La Guarida』( “嘘つき” の意味)をホストしていない時は、バルセロナ市内の2つの音楽学校で教壇に立っている彼女は音楽制作にも取り組んでおり、Ylia名義でダンスフロア寄りのトラックを、Terence名義でアフターアワー的コズミックバイブを備えたアンビエントトラックを生み出している。音楽を諦めようとしていた頃に全ての歯車が噛み合い始めた彼女のキャリアは、美しいラブストーリーとして永遠に語り継がれるだろう。

 

 

Part.1はこちら>>