六月 29

ディスコ・サウンドで美しく再構築された音楽体験、それがトッド・テリエ

RBMA presents HOW GOOD IT IS! That's TODD TERJE – LIVE – @WOMBライブレポート

2014年6月27日、「Red Bull Music Academy」(RBMA)主催のイベントに、北欧はノルウェーからニューディスコ・シーンの第一人者として世界中で注目を集めるトッド・テリエが来日し、熱狂的なライブを超満員の渋谷WOMBで披露してくれた。

 

ファーストアルバム「It's Album Time」を4月にリリースしたばかりのトッドはディスコのリミックスやリエディットを数多く手がけ、現代「ディスコ」サウンドを世界的に広げてきたインフルエンサーである。北欧だけでなく世界を代表する現代クリエイターの1人であるトッドが、多様な価値観で音楽プロダクションに挑戦し続ける先進的なクリエイター達を支援するRBMAとタッグを組み、今回初ライブセットを開催。多くの人々がこのイベントを目にしようとメインフロアに集まった。

 

シンセサイザーとラップトップを同時に使いながら、アップテンポな4ビートをバックに、トッドのシグネチャーサウンドと言えるスペーシーなキーボード・サウンドの生演奏が自由に鳴り響き、熱気はどんどん高まっていく。サウンドシステムを通して鳴らされるシンセとマシンビートが融合したトッドの音楽は、ディスコやエレクトロニクスの要素を汲み取りながらも、ジャズやソウルの生演奏のアプローチに強く影響された人間的なサウンドに満ちあふれている。盛り上がりが増す中で、数学的なディスコのグルーヴ感と、生演奏という2つのコンテクストを理解するトッドらしく、強くヘヴィーなビート、リリカルなピアノのリフ、コズミックなシンセ音を自由に絡み合わせ、リアルタイムで音をデザインするパフォーマンスを惜しげも無く披露してくれた。

 

 

生演奏に対して人々がレスポンスする。それはジャズ的な要素でもある一方で、現時代の対人的なコミュニケーションが自在になったSNS的なアプローチにも似ている。SNSがリアルタイムで交流できるように、人間的な要素が含まれる音楽によってアーティストと人の間で「音楽によるコミュニケーション」が実現できることを、トッドのパフォーマンスは物語っていた。つまり、より一体感ある音楽体験を同じ空間で共有できる感覚がこの日のメインフロアに満ちていた。人が共感できる体験を伝統的なサウンドから再デザインするトッドの音楽は、現代クリエイターとしての深みを感じさせてくれた。

 

 

 

 

またこの日VIP LOUNGEでは、RBMA卒業生を含む日本人アーティストらが先進的なエレクトロニック・サウンドを披露し人々を魅了した。

  

RBMA初の日本人卒業生であるトラックメイカー、sauce81はN'gaho Ta'quia(ンガホ・タキーア)名義で登場、ヒップホップやソウル調のリズミックなビートの上に、メロディーやビートをリアルタイムで演奏するエレクトロニック・ジャズ的なライブを見せた。トライバルな仮面を付けてMPCやキーボードを自由自在に扱う独特の「世界観」溢れる演奏では、いつの間にかsauce81のグルーヴへ引きこまれてしまう人が絶えなかった。

 

 

日本を代表するクリエイティブ集団Jazzy Sport所属アーティストの1人grooveman Spotは、強烈なアフロ・キューバンなビートを織り交ぜたパーカッシヴなプレイで沸かせた。まるで生ドラムプレイが存在するかのようなプレイには、過去のルーツ・ミュージックと現代のエレクトロニカによって再構築された独自の音楽の世界が感じられた。

 

またLAビートシーンの中心的存在「Brainfeeder」や「Low End Theory」に出演したRLP、東京から世界展開するレーベル「Diskotopia」のFujimoto Tetsuroらも神秘的なメロディーと独特なうねりのビートをミックスしたプレイを披露。彼らもまたRed Bull Music Academy Bass Campに参加した実績を持つ実力派のビートメイカーである。

 

過去と現代そしてジャンル間を跨いだ独自の解釈で「耳でつながる世界観」を体現するクリエイター達のハイブリッドなサウンドがVIP LOUNGEから流れ続けた。

 

 

常に驚くべき才能あるアーティスト達を世界中で輩出してきたRed Bull Music Academyがいよいよ今秋に日本で開催される。SNSやスマホによって音楽の聴き方は大きくシフトしている今、トッド・テリエやRBMA経験アーティスト達が示したサウンドは、現代デジタル社会のリスナー達が失いかけている対人的につながる音楽体験をデザインした、音楽のイノベーションの始まりなのかもしれない。RBMAの日本開催で、彼らのような新しい才能が集まってくることが楽しみになってきた。ジャンルに縛られない先進的なクリエイターが数多く誕生するキッカケになることに期待したい。

 

 

Text by Jay Kogami
Photos by DYSK