七月 04

RBMA 2016 Montreal:Participants Part 3

Red Bull Music Academy 2016 Montrealの参加者を紹介(Part 3/4)

By Red Bull Music Academy

 

2016年9月24日から10月28日まで開催されるRed Bull Music Academy Montrealには世界各国から選ばれた70人のアーティストが参加する。アーティストたちはPhi Centreで音楽業界の様々な分野の第一人者たちと共にワークショップやレクチャー、スタジオセッションを消化しながら、モントリオールが誇るトップヴェニューでパフォーマンスを披露する。

 

今回の参加者発表に合わせて、Brad Beatsonが各アーティストのイラストとバイオグラフィーを用意したので、才能ある彼らの横顔を知る参考にしてもらいたい。各アーティストの詳細は追って紹介していく予定だ。

 

Red Bull Music Academy 2016 Montrealには2015 ParisのTerm Twoに参加する予定だった30人のアーティストが含まれている。今年はその30人にモントリオールのために選ばれた40人のアーティストを加えたため、例年の60人よりも10人多い70人が参加することになる。今回はPart 3としてその中の17人を紹介する(順不同)。

 

37:White Sample

https://soundcloud.com/white-sample

 

White SampleがAphex TwinとAutechreの大ファンだというのはサウンドを聴けばすぐに分かる。グリッチーでアブストラクトな彼の作品は常に何かが変化しており、そこに差し込まれてくるビートはボトムヘヴィなヒップホップのブレイクを想起させることが多い(そっくりではないが)。White Sampleの無限に続くかのように揺れながら続くロングコードへの傾倒は彼の音楽の中心には人間がいるのだということを示している。そしてそれは1998年からエレクトロニック・ミュージックの制作にクリエイティブな情熱を注いできたサウンドデザインファンで、最も大きな影響を受けたものについて「人生、未来、家族、永遠」と答えるチリ出身の彼にとっては至って当たり前のことだ。

 

38:Dani Shivers

https://soundcloud.com/danishivers

 

Dani Shiversのレコードコレクションの中には「魔女」コーナーがある。メキシコ・ティワナ出身のシンガー/プロデューサーの彼女は、ホラー映画や犯罪学などの「ダークサイド」が好みだが、彼女の音楽は天使のような輝きを放っている。彼女のサウンドを喩えるとするならば初期Nite JewelとGrimesに近く、純粋な作曲能力がファズ、リバーブ、シンセが分厚く重ねられた音像を突き抜けるように光を放っている。Daniは幼少時から作曲を行ってきたが、それは彼女の作品に明確に現れており、その叙情的なフックとアレンジには、幽霊や魔法と彼女の関係と同じように時間をかけて育まれてきた強さが感じられる。

 

39:Cao

https://soundcloud.com/cao-6

 

Caoが2015年に記した論文「The Ruin and the Sonic Sacred」(荒廃と神聖な音)は、ノイズミュージックの哲学的な構文解析と再定義がテーマとなっている。そして、このプロジェクトの一環としてリリースされた音楽も神聖だが荒廃している印象で、広漠なノイズの文脈の中に落とし込めるものだ。ペルー出身の彼女が自分の研究へのクリエイティブな回答として提示するその作品群は、悲愴な不協和音と細やかで脆いサウンドレイヤーを組み合わせながら、牧歌的なサウンドを不気味なムードと組み合わせている。この矛盾とも言える “組み合わせ” は、楽曲というよりは「楽曲的な時間軸を持った探索」に近いものにまとめられてリリースされており、Opal Tapesから2016年にリリースされた『Marginal Virgin』などでそのサウンドが確認できる。Caoの出身国であるチリの民族音楽や、現在彼女が住むUKのノイジーでグリッチーなエレクトロニカなどの影響を持ち込んでいる彼女の音楽は、レフトフィールドとインテリジェンスの美しい融合と言える。

 

40:Buen Clima

https://soundcloud.com/buen-clima

 

チリ・サンティアゴに住むマルチインストゥルメンタリスト/プロデューサーのBuen Climaはチリ大学で作曲を学ぶ学生で、彼の音楽には本人の学究心が表現されている。彼の音楽はソロワークからバンドワークまでと幅広いが、そのすべてには彼の個性が感じられる。その中で最大の特徴と言えるのが、ノート間の空間への拘りで、フリーフォームジャズであろうと、より一般的な作品であろうと、音楽が鳴っている時間と同様に隙間や停止にも大きなウェイトが置かれている。

 

41:AAAA

https://soundcloud.com/gabobarranco

 

Gabo Barrancoはディストーションに対して貪欲な拘りを持っている。エレクトロニック・ミュージックファンであり、クリエイターでもある彼の音楽はクラシックなアシッドハウスから粒の細かいアンビエント、そしてVenatian Snaresのような攻撃的なグリッチベースまで幅広く、AAAAは本人も認めるシャイな性格を強烈なパワーが注ぎ込まれた多種多様なアイディアの中に落とし込んでいる。やや居丈高にも感じられるアーティスト名は、やもすると彼の音楽が繰り出す全力のノイズを擬音化したもの(アアアア!)なのかも知れないが、2014年にリリースされた落ち着きのない狂気の「Shiva Watts」や2016年にリリースされた808を前面に打ち出した「True Peak」EPなどは、テクノをルーツとする伝統とその超越を目指す姿勢に対する深い情熱が現れている。

 

42:Joona Samuel

https://soundcloud.com/joona-jaakkola

 

オーディオデザイナー/サウンドエディター/録音技師として活動するJoona Jaakkolaは、特に映画音楽を中心に様々な音楽のミックスを手がけてきた。また、作曲家としても、BGMとしてではなくより幅広い目的の元、様々な作品を生み出してきたが、彼の作品は基本的には映像と組み合わせるために作り出されており、モノクロのフィルムノワールのようなジャズ、流れゆく風景を想起させるようなアンビエントドローン、そして未来的な機械類のモンタージュと上手く組み合うようなミニマルな4/4ビートなどは、特定のジャンルを想起させるというよりは、演出効果という言葉でまとめられるものだ。

 

43:Auður

https://soundcloud.com/auduraudur

 

Audunn Lutherssonはアイスランドを代表するヒップホップアーティストのプロデュースを手がけてきた経験を持つが、自身の音楽はまるでエゴを嫌がっているかのようにヒップホップを忌避しており、失恋を歌うポップソングのようなスタイルが取られている。Lutherssonは、アイスランドの音楽学校Tónlistarskóli FÍHで上級レベルのジャズギターを学んだ経験を持つが、Auðurという名義は、Sónar Reykjavikに参加してエレクトロニック・ミュージックを知ったことで、そのジャズから離れるためにスタートさせたものだ。最近はFKA TwigsとEsperanza Spaldingを好んでいるとするLutherssonだが、Auður名義で生み出される音楽はモダンなスカンジナビアンR&Bの系譜上に位置するダークだがメロディックで美しい音楽だ(現在はアルバム制作中)。「悲しい思い出のコレクター」と自らを表現する彼、すべてのコンサートを記憶に残る体験にしたいとしているだけのことはあり、絶妙のタイミングでテンションが変わる秀逸な楽曲群を生み続けている。

 

44:Dreamcycles

https://soundcloud.com/dystopiandream_cycles

 

サウンドを通じて空間における感情の動きを探っていく作品を制作しているダブリンを拠点にする22歳のヴィジュアルアーティストDreamcyclesは、大量の実習を通じてインスピレーションを得ており、それらを使ったロングミックスを生み出していくという彼女の手法は、本人にとっては研究であると同時にある種のセラピーでもある。彼女は成長を続けながらサウンドの探求の一環としてフィールドレコーディングや声を使った実習に取り組んでおり、クラブ的な文脈から外れた音楽やサウンドと出会うチャンスを与えるような、クラブとアートギャラリーの中間に位置するようなコミュニティの誕生を夢見ている。彼女は「わたしにとってサウンドは、この物質世界から自分を切り離して、そこを超越した世界へ行くための手段なの」と語るが、嬉しいことにDreamcyclesのミックスは我々をまさにその世界へと連れ出してくれる。

 

45:ModVo

https://soundcloud.com/modvo

 

スウェーデン人プロデューサーのLudvig Wardはまだ10代だが、既に非常に良く練られたダンスミュージックを生み出すことに成功している。フットワークとIDMのスピードとサンプルを使用しながら、パワフルなビートと温かいシンセ、そしてカラフルなハーモニーを加えることで個性を生み出している。ゲイであることを公言しているModVoは自分の位置づけについて「部分的には男性」と評価している。ヨーテボリの高等学校で音楽を学んだ彼は、ライブをこなしながらコンピュータ、シンセ、サンプラーのスキルを磨いており、これまでにも短編映画やストリートショーのための作曲を手がけている。また、「Aloe Larva」や「Gel Vera」などが、2015年にHyperboloid Recordsのサブレーベル#internetghettoからリリースされている。

 

46:Johan Caroe

https://soundcloud.com/johancaroe

 

映画音楽の作曲で修士課程を修めたJohan Carøeの音楽にシネマティックな要素が感じられるには当然の話だ。2015年にデンマークの長編映画『Gold Coast』で著名な映画音楽家Angelo Badalamentiと共作した経験を持つ彼は、同年のカンヌ映画祭のセレクションとして上映された『TSUNAMI』など、数々の短編映画の音楽も手がけている。基本的にはムードや空間の演出に注力している彼だが、ギタリストとしても優秀で、音楽学を学んだ地元コペンハーゲンではアフロビートのインストバンドのメンバーとしても活躍している。自分の音楽はひとつのジャンルに当てはまらないとしているCarøeだが、ムードや空間と同じくらいビートも重要だとしており、自分の音楽はあえて言うならば「アンビエントテクノ」の枠に入ると説明している。

 

47:Invisible Church

https://soundcloud.com/invisible-church

 

Oleksandr ZhukがInvisible Church名義で生み出す音楽には隅から隅まで不穏な空気が充満している。ベルリンを拠点に置くプロデューサーの彼は、長年に渡り独学でスキルを磨き続け、その中で虚無な空間にさえもノイズと同様の張り詰めた緊張感を感じさせる不穏な音楽を生み出す達人となった。幼少時にスティーブン・キングの小説を愛読し、Burialのメランコリックで影のあるサウンドに惹かれた彼には相応しいサウンドと言えるだろう。2016年2月に自身の作品を初めてまとめた『Invisible Church』EPをリリースしており、そこに収録されているトラック群は、Haxan CloakやKoenraad Eckerを想起させる、リスナーを包囲しながら頭の中に忍び込んでくるヘヴィな音楽となっている。

 

48:ArtSaves

https://soundcloud.com/artsvs

 

ナイトクラブが法律で禁止されているため、夜中を過ぎればストリートが静寂に包まれることも多いテヘランに拠点を置くイラン人プロデューサーのArtSavesのキャリアは、テヘラン市内のハウスパーティDJという非常にプライベートなものからスタートした。Barry Whiteのサンプルループをスムースなコード展開の中に持ち込んだり、アシッドなグリッチノイズにサチュレートされているがしなやかなラインのベースを組み合わせたりと、非常に洗練されている彼の音楽は生活に疲れた足や心をゆっくりと解きほぐしてくれるような、早い時間帯にふさわしい響きを持っている。

 

49:MIIIN

https://soundcloud.com/xeno_miiin

 

「異質なダークミュージック」と本人が説明するMIIINの音楽は、実際の距離感を表現できないというインターネットの欠点が、逆に自分たちを慣れ親しんだ地元から飛び出させるきっかけになり得ることを示唆している。『攻殻機動隊』の川井憲次の音楽を含めたフットワークのDJセットでも、ミニマリスト的なアプローチで生み出されるベースミュージックでも、彼女のエクスペリメンタルなスタイルはエレクトロニック・ミュージックの中で以前から親しまれてきた実験性と、その更に外縁に位置する部分に共通する「奇妙さ」に光を当てている。そして、自ら結成した女性を中心にしたDJクルーでの活動と、本名Seoul Simin名義で制作されるDJミックスのアーカイブによって地元韓国と外の世界を繋げる彼女は、音楽を使えば急速に可視化が進む世界の虚構に独自の視点から繋がりを持てるということをしっかりと理解している。

 

50:The Venopian Solitude

https://thevenopiansolitude.bandcamp.com/

 

マレーシア出身のThe Venetian Solideはシンセ、弦楽器、そして手に入れられるあらゆるものを使ってエレクトロポップを紡ぎ出すアーティストだ。英語とマレー語で歌われるそのパワフルな彼女の歌声は、奇妙さと悲しさを上手く捉えている。また、2015年にリリースされた「Kereta Merah」EPはマレーシアの童謡を使って気の触れた父親と精神を病んだ子供というコンセプトを表現しており、そこには彼女のコンセプチュアルな才能とエモーショナルな才能の奥行きが感じられる。アムステルダム、ベルリン、シンガポール、日本などでフェスティバルやワークショップに出演してきた彼女は、ヒジャーブを身にまとっていたにも関わらず、厳しい目を持つことで知られるドアマンの許可を得てBerghainの中に入ったという珍しい経験もしている。

 

51:Lontalius

https://soundcloud.com/lontalius

 

パーティからひとりで家路に向かう時間や、(気になっている相手が自分を誘わずにパーティへ出掛けている間に)ひとりでベッドに座っている時間などには独特のトーンとテクスチャがあるが、ニュージーランドの若手アーティストEddie Johnstonの音楽はその感覚をパーフェクトに捉えている。Lontalius名義で活動する彼は、失恋や大人になる痛みをテーマに据え、繊細なヴォーカル、揺れるリズム、練られたメロディと共にその気持ちをいたわっていく。また、Race Banyon名義では、エレクトロニック・ミュージックの制作とライブセットを展開している。Lontaliusは2015年に自主制作のEP群をリリースし、Ryan Hemsworthのアルバム『Alone for the First Time』LPにゲスト出演したあと、ニューヨークのレーベルPartisan Recordsと契約し、デビューアルバム『I’ll Forget 17』をリリースした。その後はロサンゼルスに拠点を移し、Death Cab For Cutie、Jamie XX、Kaytranadaなどと共演を果たしている。若さ、そして未熟な恋は時として苦しいものだが、アーティストとしてのJohnsonはそこに振り回されることなく自分の道を歩んでいる。

 

52:Fazerdaze

https://soundcloud.com/fazerdaze

 

Amelia Murrayはポラロイド写真のようなノスタルジックなムードを持つ、まどろむようなベッドルームポップを生み出すアーティストだ。14歳からエレキギターを弾いている彼女は、高校時代を通じてバンドでプレイを続け、その後宅録を学ぶとFazerdaze名義での制作活動を開始した。内向的と自己評価する彼女の音楽は、Elliott Smithのようなメランコリーを感じさせる時が多いが、そこにはエッジが効いており、河底で鳴っているようなギターリフは、Mazzy Star、Sonic Youth、Breedersなど、女性メンバーがフロントに立つバンドからの影響が感じられる。ライブでのMurrayは、エフェクター、マイク、ラップトップ、ギターをプログラミングしたドラムとオーバーダブしたヴォーカルと共に演奏する。アーティスト名を冠したデビューEPが2014年にリリースされており、2016年末にはアルバムがリリースされる予定だ。

 

53:Merk

https://soundcloud.com/merkscoolsongs

 

Mark Perkinsはオルタネイティブポップを生み出すMerkとして飛躍する機会を窺いながら、ニュージーランド・オークランドの風俗街で箱詰めの仕事をしていた経験を持つが、The Beach Boys、Pavement、George Martinといった自分がこれまで受けてきたすべての影響をひとつの音楽に詰め込むテクニックもおそらくその経験を通じて身に付けたのだろう。Merkの作曲の才能は、カラフルで奇妙なポップな音像を通じてPerkinsのギターとシンセサイザー奏者としての類い希なるセンスを引きだしており、浮遊感のある柔らかなヴォーカルとファズが効いたギターリフを誇り、「フレッシュだがタイムレス」という絶妙なバランスが取られた作品群に繋がっている。Merkとしてのソロワークにも、ニュージーランド国内の他のアーティストとの共作の中にも、ぼんやりとした音像の中に印象的なメロディを落とし込む彼の才能が感じられる。