二月 15

Pierre Henry’s Home

取り壊しの危機に瀕している故フランス人現代作曲家の活動拠点を写真で紹介する

By Olivier Lamm & Sarah Bastin

 

フランス・パリ12区、地下鉄8番線のDaumesnil(ドメニル)駅とMichel Bizor(ミシェル・ビゾ)駅の中間に位置する静かな通りの中ほどに、Pierre Henryの自宅兼ワークショップ兼スタジオがあるが、大きなつたに覆われているため、その姿は外からはほとんど見えない。2017年7月にこの世を去ったフランスを代表する現代作曲家Pierre Henryはこの敷地で46年間に渡り、生活、作曲、スカルプ、コピー、ペースト、集積、分解、果てはコンサートまでの全てを行ってきた。

 

そのスタジオはかつて最先端を誇っていたが、Pierre Henryは1982年以降、一度もアップデートしなかった。彼は最後の最後まで、自分で集めたサウンドバンク、Telefunken製テープマシン群、コンソール、フィルター、エフェクターだけを使い、スカルプ、作曲、演奏などを行っていた。EMS VCS3が威厳と共に壁の一部を占領しているが、どう見ても、間違いなくただの飾りとして置かれている。1960年代からの長いキャリアを通じて、Pierre Henryは自身が生み出したテクニックだけを使い続けた。

 

この家には今も人が出入りしており、そこここと動き回っているその姿は忙しそうに見えた。そこには1967年からHenryのアシスタント兼パートナーとして寄り添ってきたIsabelle Warnierが、彼の元右腕で “生き字引” として知られるBernadette Manginと一緒にいた。2人は忙しなく動きながら、どうなるのかはまだ分からないが、とにかく次のステップへ進もうと準備を進めていた。その "次のステップ" には、Philharmonie de Parisで開催されたメモリアルコンサートや、週末を通じてMaison de la Radioで放送されたトリビュート番組が含まれており、これらではHenryのキャリア最後期の作品群が演奏された。その作品群はある種の切迫感と共に生み出されたものだった。彼はすでに視力を失いつつあったからだ(彼の最後の作品のタイトル “Fondu au noir” は “Fade to Black / フェードアウト” という意味)。

 

しかし、何よりもまず、彼女たちはこの建物を守り、書類を保管しなければならない。どの団体や施設もその役を買って出ていないからだ。土地はPierre Henryのものではなく、家は老朽化が進んでいる。リノベーションを施し、ミュージアムにするには多大な資金が必要になる。フランス文化通信庁は何十年も前から彼の元にそのための特使を送っており、その中でこのアイディアに最も大きな興味を示していたのが、2009年から2012年までフィヨン内閣の文化相を務めたフレデリック・ミッテランだった。しかし、彼はいくつかの動きを見せたあと、いなくなってしまった。

 

ここには、この世にひとつしかない非常に興味深い資料や書類が残っている。Pierre Henryは70年のキャリアを通じて、作品やそのインスピレーションの源、映画監督や脚本家との共同プロジェクトなど、全ての活動を細かく記録していた。Isabelle Warnierは懐かしむような声で次のように語る。「現状を踏まえると、当然ながらこの家は保存されません。書類や資料を正しく保管するためのソリューションを見つける必要があります。前向きに取り組み、Pierreの音楽の命の火を守らなければいけません。INA(L’Institut national de l’audiovisuel / フランス国立視聴研究所)、IMEC(Institut Mémoires de l'édition contemporaine / フランス現代出版資料研究所)、フランス国立図書館など、そのソリューションを提供できる可能性がある大きな組織の人たちと会って話をしましたが、遅々として進みません。このサイズの組織では良くあることですが」

 

膨大な作業量と時間との戦い − 死後1年以内に敷地内から完全退去しなければならない − によって苦しい状況に追い込まれている彼女たちの取り組みを助けるべく、現在Pierre Henryを慕うファンや音楽家が家の取り壊しの中止を求める署名運動を行っている。

 

署名方法:ページ右側にメールアドレスを入力後、名前(Nom)・郵便番号(Code Postal)・都市名(Ville)を入力して “SIGNER” をクリックする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

All Photos (inc. Header Photo):© Sarah Bastin