五月 25

Photo Mixtape:Grime

グライムシーンに関わる3人のフォトグラファーの作品を本人たちのコメントと共に紹介する。

By Son Raw

 

グライムの成功は、最高のビート、至高のラップ、そして熱狂的なクラウドの3拍子が揃うかどうかにかかっている。2000年代初頭にガラージから派生したこのジャンルに所属するMCとラッパーたちは、自分たちがロンドンをルーツに持つことを叫びながら、未来に向けて前衛的な音楽を生み出しており、彼らは第1世代から、マルチカルチャーなバックグラウンドを前面に打ち出し、音楽シーンに巨大なクレーターのようなインパクトを与えるべく苦しみながらも挑戦を続けてきた。そして、近年の爆発的な人気再燃から考えるに、その挑戦は実を結んだと言えるだろう。

 

サウスロンドン出身のフォトグラファー、Ashley Verseにとって、グライムは常に自分の一部であり続けてきた。Verseは「俺の周りにはいつもグライムがあったし、学校でも聴いていたよ。携帯のBluetooth経由でトラックを仲間うちでシェアして聴きながら、外でラップをしていたね」と振り返る。そして、この “携帯セッション” の数々は、日本人フォトグラファーのJun Yokoyamaなど、外部の人間も惹きつけるようになっていった。そのYokoyamaは、グライムとの最初の出会いはロンドンのナイトバスだったと振り返る。「2005年にベクスリーヒース行きのN21(編注:ナイトバスの路線番号)の2階に乗っていた時に、音楽に合わせてラップをしているキッズを見かけたんです。それで興味が沸いて、現場に出向くようになりました」

 

一方、同じくフォトグラファーとして活動するVicky Groutがこの新種のビートとMCに出会ったのは、姿を変えながら日々進化するロンドンのクラブシーン、具体的に言えばレイブを通じてだった。「元々はハウスやガラージのパーティに出向いていたんだけど、Butterzのレコードを聴いて、グライムを知ったのよ。それ以来、レイブに出向いて撮影するようになったの」

 

今回はVerse、Yokoyama、Groutの3人が撮影したグライムシーンの写真を本人たちのコメントと共に紹介する。

 

Ashley Verse

 

Ashley Verseはユニークなカルチャーを誇るサウスロンドン・ミッチャム出身のフォトグラファーだ。「サウスロンドンな独自のスタイルを持っているんだ。Solid Crew(グライムの前身を生み出したグループ)はサウスロンドン出身だったし、このサウンドは俺たちの周りに常にあったんだ」と説明するVerseは、学生時代からこのサウンドに親しんでいたが、やがて地元のスターStormzyを含む様々なアーティストたちと共に、「低予算のローカル映像」と本人が呼ぶミュージックビデオの撮影など、多種多様なプロジェクトを進めるようになっていった。

 

Verseの作品には自分のルーツとグライムへのファンとしての愛が織り込まれており、それらの特徴がパワフルな魅力を放っている。「撮影を始めた頃は観客のひとりだったし、プレス用の撮影エリアへ入れなかった。だから、俺の作品はファンの視点になっていた。スタジオでの撮影では、アーティストたちがどうやって作品を作って、どうやってそれをまとめていくのかを捉えようとしたんだ」

 

これはEskimo Danceのハロウィンパーティで撮影した1枚だね。Wileyがパフォーマンスを終えて闇の中へ消えようとしている瞬間を捉えたんだけど、彼の目にはまだ光が当たっている。俺はこの1枚が撮りたくて仕方がなかったんだ。Wileyはあまり表に出てこないっていう噂があるアーティストだったから、かなり集中してシャッターチャンスを狙ったんだ。©Ashley Verse

 

「Way Too Much」のミュージックビデオの撮影中のFekkyとSkeptaだね。1日中この撮影を追い続けたんだけど、こういうポートレートも撮影できた。この写真からは彼らの友情が伝わってくるよね。ビデオ撮影の合間を縫って撮影したんだ。©Ashley Verse

 

Skeptaのシルエットを2枚重ねた作品だ。照明が青に変わった時に、「Nasty」のミュージックビデオを思い出したんだ。それで、影になっているSkeptaの最高の瞬間を捉えようとしたのさ。©Ashley Verse

 

これはクロアチアのFresh Island Festivalで撮影した1枚だね。ロンドン以外の都市のビッグフェスティバルの撮影は、小さなパーティとは違うダイナミズムがあるけど、この日はUKの連中が沢山いたから、気楽に撮影できた。Skeptaが出演できなくなってしまって、彼の弟でクルーメンバーのJMEがパフォーマンスをしたんだ。JMEは自分のパフォーマンスに対して厳しいタイプだし、この1時間のライブは最高だったね。クラウドにエナジーを与えていたよ。©Ashley Verse

 

Chase & StatusとNovelistのコラボレーション「London Bars」のレコーディング風景だ。彼のキャラクターを上手く捉えようとしたんだ。ロンドンは自分らしくいられるかどうかが大事な都市だから、人物を撮影する時は、その人となりを捉えようとしている。©Ashley Verse

 

「Hear Dis」のミュージックビデオの撮影をしていた時のStormzyとChipだね。これはビデオ撮影を丁度終えたところで、日も暮れていたけど、なんとか照明を確保して、後ろのスケートパークも含めた撮影ができた。彼らのエナジーと背景のコントラストを捉えようとしたんだ。©Ashley Verse

 

 

Jun Yokoyama

 

日本人フォトグラファーのJun Yokoyamaはグライムの中心地であるロンドンへ移住した際、このシーンに一般的な形では関われないことを知りながらも、なんとかして貢献したいという気持ちに駆られた。「僕の場合は、シーンに参加する方法が限られていたんです。ラップもできないし、トラックも作れないし、記事を書けるわけでもなかったので。グライムシーンは、日本にいた頃にSimon Wheatleyの写真集『Don’t Call me Urban』を見て以来、気になっていたんです。この写真集は2000年代初頭のグライムシーンを見事に捉えているマスターピースだと思います」

 

パイレーツラジオやインターネットラジオからキャリアをスタートさせた彼にとって、このような場所はやがてグライムの未来のスターたちと出会える場所として大きな意味を持つようになった。「元々、彼らは撮影対象だったんですけど、普段も彼らと一緒に過ごしていました」と振り返るYokoyamaにとって、グライムは「ただの音楽ジャンルではなく、ロンドンでの生活そのもの」になっていった。

 

これはヴォクソールのFireというクラブで開催されていたOi OiというパーティでパフォーマンスをしていたD Double Eですね。グライムの撮影をスタートさせた時に初めて本格的に撮影した1枚です。D Double Eは僕のお気に入りのMCですね。非常にユニークなフローを持っていますし、グライムの歴史において非常に重要な存在だと思います。その彼の才能とクオリティを表現するために、彼の周囲を暗くして、モノクロで撮影しました。©Jun Yokoyama

 

Rader RadioでのKwamです。彼は新世代のグライムシーンの他のMCよりも少し世代が上で、スムースで緻密なライム、そして意識の高いリリックが特徴です。シーンの中でスペシャルな存在と言えますね。他の多くのMCも同様のバイブスを打ち出しますが、Kwanのラップは穏やかさと狂気を行き来するユニークなものです。©Jun Yokoyama

 

DJ Championも僕のお気に入りのひとりです。彼のパフォーマンスはUKファンキーのバイブスがあるので、いつもクラウドはかなり盛り上がりますね。これはその彼の手元を撮影した1枚です。リワインドはグライムの非常にユニークなエレメントのひとつですが、レゲエやダンスホールに影響を受けて派生したあらゆるジャンルで見受けられますね。©Jun Yokoyama

 

ブリクストンのSimulacraで開催された「Novelist presents SOUND」でのNovelistとJay Amoです。Novelistは昨年の7月末に3日間に渡ったこのパーティを開催したのですが、数多くのMCとDJが出演しました。小箱ですが、新世代のグライムのエナジーに溢れていましたね。©Jun Yokoyama

 

Dance Tunnelで開催されたFWDに出演していたSlackkとJ-Cushです。ステージ脇に立って、クラウドのスマートフォンのライトに向きあうように撮影しました。©Jun Yokoyama

 

Rader RadioにTrendsと一緒に出演したJammzです。この日のJammzはかなり気合いが入っていて、マイクを強く握ってパフォーマンスしていたので、顔ではなく手とマイクを写そうとしました。©Jun Yokoyama

 

Skepta © Jun Yokoyama by courtsey of Boiler Room

 

Vicky Grout

 

グライムのトップアーティストの姿を捉え続けているVicky Groutのキャリアは、グライムが爆発的な復活を果たした頃と重なるSNS時代と共に開花した。ロンドンを拠点にするGroutはそのきっかけについて次のように振り返っている。「初めて撮影したイベントは、『It Ain’t Safe』がリリースされた頃にSkeptaとA$AP Bariがハックニーで共演した時だったの。Skeptaを1枚、Siobhan Bellを1枚撮影したんだけど、Skeptaがその写真をInstagramに投稿したのがきっかけになったのよ」

 

Groutは自分の作品を通じて、グライムシーンのアーティストたちの個性を捉えようとしている。「ライブはMCが動きまわっているし、色々なアクションが起きているから、それぞれの個性を捉えることが重要なの。どのMCも何かしらに秀でているのよ」と説明するGroutの作品は彼女のInstagramアカウント@Vickygroutでチェックできる。

 

これは2回目か3回目のレイブで撮影した1枚ね。Sian Andersonが主催したレイブで、OGsのJendorと後ろに映っているJammerのパフォーマンスを撮影したの。Jammerが父親みたいにJendorを見守っている姿がすごく気に入っているわ。JendorのMCをJammerが盛り上げていて、まるで家族のような雰囲気だった。©Vicky Grout

 

Skeptaのミュージックビデオ「Shutdown」の撮影現場で撮影した1枚ね。クレイジーな1日だったわ。2台のカメラの間を行き来しながら、撮影を追っていったんだけど、日差しが変わっていったから難しかった。でも、これは彼の顔が隠れていてクールだと思う。彼はスポットライトを浴びたがらないし、彼の性格を上手く表現できていると思うわ。©Vicky Grout

 

レイブで何回も顔を合わせているSpookyとは前からすごく仲が良いんだけど、彼と一緒に撮影をしたのは去年のクリスマスが初めてだったの。彼が住んでいるハックニーで待ち合わせて、この裏通りの白い壁を見つけるまで散歩したのよ。気楽なムードの撮影だったわ。©Vicky Grout

 

Village UndergroundでFootsieが開催したKing Original Eventで撮影したFootsieとChipmunkね。Village Undergroundは大箱で、ここで撮影するのは初めてだったんだけど、当時は立派なレンズを持っていなかったから、光量不足であまり良い写真が撮れなかったの。でも、これは上手く撮れた1枚ね。ライブ中に撮影したんだけど、色々な動きがあったからラッキーだった。©Vicky Grout

 

Visionsで開催されたBillionaire Boys Clubの周年記念のアフターパーティに出演したNovelistよ。この日は、ラインアップに入っていないグライムアーティストたちも沢山来ていて、この写真にも後ろにMerky Aceが写っているわ。Novelistのこのバンダナスタイルは1年半前にFabricで見ていて、当時はみんな困惑していたの。でも、似合ってるのよね。ゴーグルについては何とも言えないけど、これも似合っていると思う。©Vicky Grout

 

Boiler Roomを再訪した時の1枚ね。Logan Samaが小綺麗なギャラリーのICAで開催したの。すごく盛り上がっていたわ。これはJammzを撮影した1枚だけど、彼を見た瞬間に今日は凄いパフォーマンスになるって思ったの。なにしろ最高のフローだったから。Jammzがこの写真を自分の作品のアートワークに使ってくれたのはクールだったわ。©Vicky Grout