十一月 24

日本の初期&レアビデオゲーム・サウンドトラック ベスト5

『ディギン・イン・ザ・カーツ』のプロデューサーが隠れた名曲を紹介

By Nick Dwyer

 

RBMA Radioでスタートさせたラジオ版『ディギン・イン・ザ・カーツ(Diggin’ in the Carts)』の準備を進めている間に、僕はあらゆるプラットフォームのあらゆるゲームのあらゆるトラックを聴き直し、ビデオゲームミュージックの歴史を最初から遡ることにした。予想していたよりも長くかかったし、その途中でちょっとばかり気も狂いそうになったけど、20万曲以上を聴いたあとも、嬉しいことにまだ正気を保てている。今回は最近聴き直したその中から特にお気に入りの5つのサウンドトラックを紹介するよ。

 

 

『飛装騎兵カイザード』(1990年)

リリース:1990年

音楽:メサイヤサウンドチーム

 

長年に渡り様々なプラットフォームで数々のビデオゲームをリリースしてきたメサイヤが開発した1本なんだけど、PCエンジンでリリースされたこのゲームのサウンドトラックは非常にユニークだ。『飛装騎兵カイザード』は「メカが登場するターン制ストラテジーゲーム」で、特別珍しい内容ではなかったけれど、「日本限定でリリースされた、知名度は低いけれど最高のサウンドトラックが用意されているビデオゲーム」を代表する1本だ。

 

 

『ノイギーア~海と風の鼓動~』

リリース:1993年

音楽:高橋幸宏

 

日本のビデオゲーム史におけるYellow Magic Orchestraの貢献は、どれだけ誇張してもし過ぎることはないほど大きい。彼らは日本のアーケードゲーム『スペースインベーダー』や『サーカス』のサウンドエフェクトを1978年のアルバム『Yellow Magic Orchestra』に取り入れてビデオゲームのサウンドを大衆に紹介した初めてのアーティストだった。また、彼らは『サーカス』のサウンドトラックと「Firecracker」を組み合わせたシングルもリリースして、USだけで40万枚以上を売り上げると、世界がコンピュータ・サウンドへ興味を持つきっかけを作り上げた。Yellow Magic Orchestraと日本のビデオゲーム業界との関係は、PCエンジン用タイトル『天外魔境 ZIRIA』で坂本龍一が音楽プロデュースを担当したり、高橋幸宏もこのスーパーファミコン用タイトル『ノイギーア~海と風の鼓動~』など、いくつかのビデオゲームのサウンドトラックに関わったりと、その後も長きに渡って色々な形で続いていった。USでも『The Journey Home: Quest for the Throne』という名前でリリースされた『ノイギーア~海と風の鼓動~』は、必ずしもスーパーファミコン時代の最高のサウンドトラックではないけれど、日本のエレクトロニック・ミュージックの重鎮が、自分たちが大きな影響を与えたビデオゲーム業界に継続的に貢献している姿が確認できるという意味では素晴らしい作品だと思う。

 

 

『The麻雀・闘牌伝』

リリース:1993年

音楽:細井聡司

 

1本に60曲以上のトラックが収録されているようなビデオゲームに出会う機会は結構多い。スーパーファミコン時代を洗い直している時は特にそうだ。中でも無限に存在するように思えるパチンコ、将棋、麻雀系のゲームを扱うときは、ついつい自分が楽をするために飛ばしてしまいたくなる。でも、こういうサウンドトラックに出会えると、頑張って探す甲斐があるって思えるんだ。このサウンドトラックは本当に素晴らしい。Steve Reichにインスピレーションを受けたミニマリズムがスーパーファミコンのユニークなサウンドチップで演奏されているこのトラックは、僕の中では16ビット時代のビデオゲームミュージックに最高の形で貢献している作品のひとつとして位置づけされている。

 

 

『幻影都市』

リリース:1991年

音楽:新田忠弘・福田康文・瓜田幸治

 

シャープのX68000と富士通のFM TOWNSは海外で発売されることがなかったパーソナルコンピュータだったけれど、MSXはMicrosoftが開発に関わっていたこともあって、ソ連やクウェートなど意外な国も含む世界各国で発売された。そのMSX規格に賛同して、当時は数多くの日本のデベロッパーが対応タイトルをリリースしたけれど、MSX最高のタイトルと言われるものの多くはハドソンとコナミからリリースされていて、その中には小島秀夫の『メタルギア』や『スナッチャー』も含まれている。でも、他にも数多くの中小規模のデベロッパーがMSXの様々なバージョンで秀作を残していた。その中のひとつが、マイクロキャビンで、彼らが開発した秀作の1本がMSXturboR用タイトルとして1991年にリリースされた『幻影都市』だ。MSXturboRはグラフィックが大幅に向上していて、FM音源のYamaha YM2413も搭載されていた。MSXturboR対応タイトルの中で最高のサウンドトラックを擁している1本と呼べるこのゲームには素晴らしいトラックが何曲も収録されている。

 

 

『ゴーファーの野望 エピソードII』

リリース:1989年

音楽:コナミ矩形波倶楽部

 

コナミはライバル企業に才能を奪われることを危惧して、初期タイトル群で作曲者の名前を公開していなかったことで知られている。よって、当時のサウンドトラックの大半のクレジットは、コナミが誇る優秀なサウンドチームの総称「コナミ矩形波倶楽部」が使用されていた。正直に言わせてもらえば、コナミが作曲者の名前の公開を嫌がったのも無理はない。コナミのサウンドチームはビデオゲームサウンドをプッシュすることに全力を尽くしてからだ。そのこだわりは、サウンドの向上を目指すためにファミコン時代にサウンドチップVRC6とVRC VIIを独自に開発したほどだった(VRC VIIが内蔵されているファミコン唯一のFM音源対応タイトル『ラグランジュポイント』のサウンドをチェックしてもらいたい)。また、彼らはMSXでも波形メモリ音源SCC(Sound Custom Chip)を開発していて、この規格でリリースされた『グラディウス』シリーズでは、異常とも言えるハイクオリティなサウンドトラックが楽しめる。『グラディウス2』や『沙羅曼蛇』なども素晴らしいけれど、今回は全曲が注目に値するクオリティを誇る『ゴーファーの野望 エピソードII』を取り上げておくよ。

 

RBMA Radio『Diggin’ in The Carts』は日本時間で毎週金曜午前9時から放送中。詳細はこちら(英語ページ)。

 

日本のビデオゲーム・ミュージックの歴史を紐解くドキュメンタリーシリーズ『ディギン・イン・ザ・カーツ』本編はこちら