六月 27

Josh Bonatiが語るヴァイナルマスタリング&カッティング

Coilをはじめとする名盤のリマスターやMac DeMarcoなどの新鋭アーティストの作品を手掛けるブルックリンの万能トップエンジニアがヴァイナルのマスタリングとカッティングの魅力やノウハウを語った

By Vivian Host

 

ブルックリンに拠点を置くマスタリングエンジニアJosh Bonatiは、幅広いジャンルのトップアーティストたちをクライアントに抱えており、Zola Jesus、Mac DeMarco、The Men、The Soft Moon、Pharmakon、Omar-S、HEALTH、Amen Dunesなどの作品を手掛けてきた実績を持つ。今回はこのマスタリングエキスパートに、キャロル・ガーデンズに位置する専用スタジオ内の設備や、デジタル時代のヴァイナルのマスタリングとカッティングについて話してもらった。

 

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マスタリングにはジャンルをまたぐ総合的な方法論が存在すると想像しているのですが、そうではなく、ダンスミュージックのマスタリングは、ロックとは異なる独自の方法論を学ぶ必要があるのでしょうか? ロックでは使わない機材を使うのでしょうか?

 

使用機材は同じだよ。でも、カッティングはロックとは少し異なるね。なぜなら、音量を大きくする必要があるからさ。ダンスミュージックのDJはラウドなヴァイナルを求めている。彼らが求めているようなグッドサウンドを得るためには、機材に少し無理させる必要がある。

 

ダンスミュージック界隈で人気があるカッティングエンジニアがいるのはこれが理由なんだ。というのも、ベテランのカッティングエンジニアの中にはダンスミュージックのカッティングをやりたがらない人がいる。機材に無理させたくないのさ。でも、僕は彼らに比べればまだまだ若僧だし、そのリスクを負うことを気にしない。

 

でも、時々悩むことがある。カッティングをラウドにしすぎてしまえば、カッティングレース(Cutting Lathe / カッティングマシン)にダメージを与えてしまう可能性がある。でも、できる限りラウドにする必要がある。LPなどのカッティングは音量が小さいから安全だ。でも、僕はリスクを負うのが好きだ。尺が短いダンスミュージックの12インチをラウドに鳴らそうとするチャレンジが好きなんだよ。楽しいんだ。ヴァイナルのベストサウンドが得られるのは、そういう尺が短い12インチが多いね。

 

 

ダンスミュージックのカッティングでは、ジャマイカのダブプレートカッティングを意識する必要があるのではないでしょうか。ジャマイカのダブプレートは限界まで低域をプッシュしているのに、素晴らしいサウンドですよね。

 

その通りさ。もはや無謀とも思えるやり方で低域をプッシュしなければならない。でも、奇妙な話だけど、リスクを負いつつ、同時に細部まで注意する必要があるんだ。

 

カッティングレースには小さな三角形のような部分がある。カッターヘッドという名前で、ここが実際にレコードをカットしていく。再生用スタイラス(レコード針)の代わりに、カッティングスタイラスを使うんだ。カッティングレースはターンテーブルのようなものなのさ。カッターヘッドの内部には小さなコイルが巻き付けられていて、ラウドすぎるカッティングをしてしまえば、このコイルが燃えてしまう。電球のフィラメントのようなものだ。ラウドすぎるカッティングをして、カッティングヘッドから煙を出してしまえば、大金を払って修理しなければならない。そして、修理できる人はほんのひと握りしかいないんだ。

 

現在、ヴァイナルのカッティングをしている人の数は少ないから、その人たちが使っている機材を修理する人の数はもっと少ないのさ。1990年代なら、カッティングヘッドを壊してしまっても簡単に修理できた。でも今はそんな状況だから少し怖いんだ。何も壊したくないのさ。

 

 

 

“盤面のどこにどのトラックを配置するのか、そして片面の分数がどれだけになるのかをしっかり意識しておけば、他のアーティストに大きな差をつけることができる”

 

 

 

「マスタリングって何なの?」と思っている人たちに、マスタリングとは何かを説明してもらえますか?

 

マスタリングは基本的には “仕上げ” だよ。レコーディングとミキシングを家の建築にたとえるなら、マスタリングは家が建ったあとの掃除、内装や外装、つまり、家を売り出せる状態に仕上げる作業と言える。塗装などの最終的な作業がマスタリングなんだ。これがいわゆるオーディオマスタリングだよ。僕は、ヴァイナルに限らずあらゆるフォーマットのオーディオマスタリングをしている。

 

ヴァイナルマスタリングについては、これは具体的にはカッティングを意味している。僕のスタジオには巨大な機械がある。冷蔵庫を横倒しにして、その上に巨大なターンテーブルを載せたような姿をしている。これがカッティングレースで、多くがこういうデザインになっている。カッティングレースのプラッターは一般的なターンテーブルのそれよりもかなり大きくて重い。カッティングレースの総重量は700ポンド(317.5kg)くらいだ。僕たちはこれを使ってマスターディスクをカッティングするんだ。この作業がヴァイナルマスタリングだ。

 

 

ヴァイナルマスタリングには、デジタルマスタリングでは必ずしも用いられないテクニックなどがあるのでしょうか?

 

その質問は2つに分けて回答するよ。少し時間がかかるけど、この場を借りて、ヴァイナルマスタリングの2つの重要なポイントについて、みんなのために説明しよう。いつもこの質問をされるからね。

 

ヴァイナルマスタリングは、デジタルマスタリングよりも筋道を立てて考える必要があるんだ。2つの重要なポイントについて話すと、ひとつは片面に収録する分数で、もうひとつは片面の最後に入れるトラックだ。

 

まず分数については、基本的にヴァイナルに収録する音楽の尺は短い方が良い。音量の大きさは片面に収録する分数に影響を受けるんだ。片面に長い分数、たとえば、24分の音楽を片面に収録するなら、その長さのレコードの溝(グルーヴ)を物理的に片面に収めるために音量を下げる必要が出てくる。全ての溝を盤面に刻みつけるためには、溝の間隔を狭める必要がある。そして、その唯一の解決策が音量を下げることなんだ。細くて浅い溝にすることで、全ての溝を片面に刻みつけて、その分数を片面に詰め込む。

 

ラウドな12インチの尺が短いのには理由があるのさ。ラウドな12インチの長さは、6分から8分、10分ってところだ。なぜなら、ラウドにするには、太くて深い溝を刻む必要があるからさ。スペースが必要なんだ。だから、長尺でラウドなレコードっていうのは実現不可能なんだよ。

 

次に2つ目のポイント、片面の最後に入れるトラックについてだけど、これはカッティングのたびに頭を悩ませるところだ。実は、ヴァイナルで一番厄介なのは、片面の端から端までのサウンドクオリティが均一ではないってことなんだ。外側の方がサウンドクオリティは高い。片面の出だしの部分だね。そのあとは、内側に進むにつれてどんどん劣化していくんだよ。実際、内側の最後の2cmほどは… 申し訳ないんだけど、サウンドクオリティが本当に酷いんだ。

 

だから、可能なら、この部分には音楽を入れない方が良いね。なぜなら、この部分に差し掛かると、サウンドが歪む確率が一気に高まるからなんだ。この部分のサウンドがギスギスしているレコードの例はいくらでも出せるよ。この点に注意すれば、ヴァイナル全体のサウンドは格段に良くなる。盤面のどこにどのトラックを配置するのか、そして片面全体の分数がどれだけになるのかをしっかり意識しておけば、他のアーティストに大きな差をつけることができる。

 

 

ヴァイナルのカッティングが曲順を決める可能性があるというのは、今日初めて知りました。

 

1980年代と1970年代のポップレコードをチェックしてみると、バラード的な楽曲が片面の最後に収録されていることに気が付くと思う。これは、当時の人たちがヴァイナルの内側に技術的な制限があることを知っていたからなんだ。次善策として静かな楽曲をそこに配置していたのさ。多くの人たちは、この曲順を芸術的な判断によるものだと考えている。確かにそういう判断もあったかもしれないけれど、ラウドな楽曲を内側に配置すればサウンドが歪むことを当時の人たちが知っていたというのも理由のひとつだった。

 

もちろん、内側にラウドな楽曲が配置されているヴァイナルもあるし、最初から最後までラウドな楽曲しか収録されていないレコードもあるよね。たとえば、デスメタルのようなメタルのヴァイナルは、最初から最後までラウドだ。注意して聴けば、後半にいくとかなりぼやけたサウンドになっているのが分かるはずだよ。残念だよね。そして、ここに一度気付いてしまえば、無視できなくなる。これがヴァイナルの厄介なところなんだ。

 

 

ヴァイナルコレクターは、サウンドクオリティが素晴らしくてラウドなヴァイナルがある一方で、サウンドクオリティがお粗末なヴァイナルがあることを知っています。そういうお粗末なヴァイナルを作ってしまったら、500枚や1,000枚のリプレスに繋がることはまずあり得ないですよね。

 

あり得ないね。重要なのは… ヴァイナルがプレスに回るとプレス工場からテストプレスが届くんだけど、その時に、プレスミスがないかどうかをチェックすることだ。でも、そこにはカッティングミスの可能性もある。曲がっていないテストプレスをプレイした時に針飛びしたら、それはカッティングミスだ。プレス工場の問題じゃない。彼らはただプレスするだけだからね。だから、僕は自分がカッティングを担当しているヴァイナルのクオリティチェックに多くの時間を割いている。これも仕事の一部なのさ。

 

 

テストプレスでよく見られる問題、またはエキスパートでなければ見過ごしてしまうような部分、注意すべき部分はありますか?

 

多くの人が僕のところにテストプレスを持ってくる。なぜなら、問題があるかどうか自分では判断できないからさ。テストプレスを受け取って、ノイズやポップノイズが聴こえると「これってどうなんだ? 自分では判断できないな。ヴァイナルらしいといえばらしいサウンドだけど、ちょっとノイズが大きすぎないか?」と思い、僕のところへ持ってくる。それで「問題があるかどうか自分では判断できないから、チェックしてもらえないか? 判断してくれよ」と頼んでくるのさ。それで問題がなければ、「別に問題ないよ」と答える。

 

でも、たまに「テストプレスにクリックが入っている」と言ってくる人がいる。「クリックは1回だけ?」と尋ねて、「そうだよ」と返してきた時は、「ワオ、最高のレコードをプレスしたってことじゃないか。クリックが1回入っている世界一のレコードをね」と返しているよ。ヴァイナルには独特のノイズがあるのさ。でも、許容範囲に収められている必要があるね。また、何回も同じノイズが繰り返されるケースもある。定期的にブツブツというノイズが繰り返される時は、ヴァイナルに傷がついている可能性がある。

 

カッティングレースでの作業中は拡大鏡を使ってマスターディスクを確認しているけれど、その拡大鏡はどのレコードでも使えるんだ。だから、テストプレスでも、何か変なサウンドが聴こえたら、拡大鏡を使って盤面を見て、傷がついていないか調べることができる。傷がついているのはその1枚だけかもしれないし、テストプレス全てについているかもしれない。後者の場合は、プレス工場に連絡を入れて、「テストプレスを作り直してくれ」と頼めばいい。でも、これはかなりのグレーゾーンなんだ。プレス工場に連絡を入れるだけで簡単に解決できる時もあれば、カッティングからやり直さなければならない時もある。厄介だよ。

 

 

 

“インターネットに転がっているヴァイナル関係の誤情報の多さはクレイジーだ"

 

 

 

ヴァイナルのマスタリングエンジニアと仕事をする際に気をつけるべきポイントは? 音楽はどのような形で手渡すべきなのでしょうか? やるべきこと、やってはいけないことを教えてください。人選はどうすれば良いのでしょうか?

 

僕の仕事の進め方は2通りある。ひとつは、僕が全てを担当する進め方だ。クライアントがスタジオにやってきて、僕がトラックのオーディオマスタリングをして、クライアントからOKが出たら、マスターディスクのカッティングに進む。僕はこの進め方を好んでいるんだ。コントロールフリークになれるし、あらゆるフォーマットのオーディオマスタリングが担当できるからね。

 

あとはもちろん、カッティングエンジニアとして関わるだけの進め方がある。こちらは、すでに誰かがマスタリングしたトラックをヴァイナルにカッティングするだけだ。どちらを選ぶのかはクライアントの好みだよ。でも、僕に頼むにせよ、誰かに頼むにせよ、最初にオーディオマスタリングは済ませておく必要がある。カッティングはそのあとだ。

 

カッティングができる人にオーディオマスタリングも任せるのはグッドアイディアだと思う。カッティングをしないマスタリングエンジニアが担当したオーディオファイルを受け取って、僕のコンピュータに取り込んで聴いてみると、「カッティングできる状態じゃないぞ。ちょっと怪しい部分がある」と思う時があるんだ。というのも、ヴァイナルのカッティングは、超高域と超低域を細かく調整する必要があるからなんだ。これは、実際にカッティングをしてこの問題に直面した経験がある人じゃないと分からない部分なんだ。だから、両方できる人の方が良いのさ。

 

誰にカッティングを頼むのか、カッティングエンジニアの人選については、マスタリングスタジオやレコーディングスタジオを選ぶのと大差はないね。その人がどんなヴァイナルを手掛けてきたのかを調べたあと連絡を入れて、やってもらえるかどうかを確認すれば良いよ。有り難いことに僕のスタジオはいつも忙しいけれど、通常なら、連絡をもらってから1~2週間で仕上げることができる。

 

トラックを持ち込む際に絶対にやってはいけないのが、MP3での持ち込みだ。MP3は、WAVやAIFFよりサウンドクオリティが劣っている。WAVやAIFFは非圧縮のデジタルフォーマットだからサウンドクオリティはMP3より優れている。だから、少なくともこのどちらかのフォーマットで持ち込むべきだね。

 

 

ひとつ前の質問は非常に重要だと思っています。というのも、クラブミュージックやダンスミュージックは特にそうですが、最近はデジタルだけではなくヴァイナルもリリースする人たちが増加傾向にあるからです。ですが、最近はもうひとつの問題があります。これは、ロックやメタルではあまり見られないと思うのですが、クラブミュージックやダンスミュージックのトラックに関しては、多くの人がマスタリングソフトやプラグインだけでマスタリングを済ませています。大量のプリセットやプラグインを使っているだけのマスタリングエンジニアもいます。そのようなマスタリングをされたトラックをヴァイナルにしても、良いサウンドは得られないと思うのですが。

 

それは大きな問題になりかねない部分だね。最近のクリアでグリッチーでアグレッシブなテクノの場合は特にそうだね。というのも、ヴァイナルに詰め込める高域には限りがあるんだ。ある帯域から上は歪んでしまう可能性があるのさ。

 

クリアなサウンドクオリティのトラックをヴァイナルにカッティングするのは可能だけど、実際にプレイしてみるとサウンドが歪んでいる可能性がある。だから、他人がマスタリングした最近のダンスミュージックは大きな問題になることがある。素晴らしくクリアなサウンドに仕上げて、デジタルでは問題なくても、ヴァイナルにする時は高域をかなり削らなければならないんだ。

 

そういう時に、誰かから「クリアなサウンドをダークにしたくない」と言われるわけさ。でも、僕は、そこから先の作業をカッティングのタイムレスな魅力として捉えている。ヴァイナルのサウンドを良くするために、EQやコンプレッションなど様々な処理を施しながらクリーンなサウンドを得ようとするわけだけど、そういう一連の作業は、トラック自体を良くすることが多いんだ。

 

高く評価されているベテランマスタリングエンジニアの多くが、ヴァイナルのカッティングにルーツを持っているのはこれが理由さ。彼らは、素晴らしいサウンドのヴァイナルを手に入れるために、あらゆる機材の使い方を憶える必要があったのさ。僕にとってカッティングは素晴らしい経験になっている。なぜなら、自分がスタジオでやるあらゆるマスタリング作業についても学べるからさ。

 

高域やヴォーカルのシビランス(歯擦音)の処理が酷いトラックを「マスタリングは済んでるよ」と言って手渡されるのはしょっちゅうだよ。まるで耳をアイスピックで刺されたようなサウンドさ。低域が暴れていたり、位相がずれていたりするトラックもある。パンニングが左右に振られ過ぎているんだ。こういうトラックはヴァイナルのカッティングには向いていない。

 

カッティングが上手くいかないばかりか、クラブでもちゃんと鳴らない。高域がフロアにいる人たちの耳を痛めつけるだけだ。クラブは大音量で鳴るから、そのために正しくマスタリングされている必要がある。これは非常に重要なポイントだ。多くの人は家で音楽を聴いているけれど、ダンスミュージックはクラブと家の両方で聴かれることを目的に作られている。ダンスミュージックのヴァイナルを自宅で聴いている人もいるけれど、クラブでも機能しなければならない。しかも、ラウドに鳴らなければならない。だから、丁寧に調整する必要があるんだ。

 

 

ヴァイナル用のマスタリングを考えている人は、オンラインで情報を集める前に、まずマスタリングエンジニアに相談する方がベターのように思えます。

 

本当にそう思うね。インターネットに転がっているヴァイナル関係の誤情報の多さはクレイジーだよ。今日話したような基本的な内容を自分のウェブサイトに掲載しておくべきなのかもしれないな。分数と音量の関係や内側のトラック、ファイルの準備方法など、ヴァイナルのカッティングに必要な基本的な部分を公共情報として載せておくべきかもね。さっきも話したけれど、「準備は万端だ」と言ってトラックを渡してきても、実際は全然準備ができていないんだからさ。カッティングをしない人がカッティングの準備ができているかどうかを判断できるわけがない。

 

僕がひとつ確信しているのは、カッティングをしたことがないなら、ファイルの準備の仕方も分からないってことだ。僕に全てを任せて欲しいね。お願いだよ。

 

 

あなたはCoilの元メンバーDrew McDowallとCoilのアルバムのリマスターを手掛けています。DrewやDais Recordsとマスタリングやカッティングについてどのような話をしているのでしょうか? すでに世に出たアルバムをあらためてマスタリングするわけですから、普段とは違うのではないでしょうか?

 

確かに一度世に出たアルバム群だし、サウンドクオリティも良かった。僕は様々なリイシューやリマスターを手掛けているけれど、個人的にはかなり楽しんでいるし、光栄に感じている。基本的には、自分の哲学を信じて作業を進めていくんだ。

 

今回については、Coilのファンはクレイジーで保守的だから、彼らを傷つけるような仕事をしないように心がけた。最初は、オリジナルと同じサウンドを目指しつつ、可能ならオリジナルを上回るサウンドにしようと考えた。でも、オリジナルのアルバムから得られるフィーリングを少し変えてみようとした時に、自分がやろうとしていることは失礼に値すると思ったんだ。だから、Coilのリマスターに関しては、オリジナルの良かった部分をそのまま残して、最高のカッティングをすることだけを意識した。

 

オリジナルのカッティングは少し音量が小さかった。でも、実はUKの有名なカッティングスタジオ、Porky’s Prime Cutsでカッティングされたんだ。George Peckhamの仕事だよ(YouTubeには彼がドラムンベースのマスタリングとカッティングについて語っている映像が残っている)。このスタジオはラウドなカッティングをすることで有名で、数多くのダンスミュージックを手掛けていた。でも、Coilの作品は長尺だから、音量が小さかったんだ。

 

Coilの音楽はドローン的だし、丁寧にカッティングする必要があった。ひとつもノイズを乗せないために、プレスもパーフェクトに進める必要があった。この仕事の労力の大半は、最高のカッティングをすることに注いだんだ。2017年にリリースした『Time Machines』では、テストプレスを数回やり直したよ。あの時はちょっと怖かったね。「この仕事をしくったら、スタジオの前にピッチフォークを持ったCoilファンが押しかけるぞ」って思っていたよ。

 

Header Photo:© Heba Kadry