一月 26

Down in the Dumps: Inside Japanese Collector Culture

たったひとつのアイテムへの拘りが自宅を埋め尽くす、日本人コレクターたちの世界

By Matthew Bennet and Ayu Okakita

 

趣味に没頭しすぎてしまう経験は誰にでもある。しかし、日本人の大量蒐集癖は他の国では見られない異質なものだ。今回は音楽関係のアイテムを蒐集している日本人コレクターたちを取り上げ、何故日本人は貯金を崩してまで、自宅を埋め尽くすまで、ひとつのアイテムを集め続けるのかという謎に光を当てていく。

 

今回の取材で明らかになったのは、コレクターたちに共通する細部への拘りだった。彼らの多くは蒐集という行為を通じて安心感を得ており、そのアイテムを自分の家族と呼ぶ時もある。また、過去や自分たちの青春時代へ親しみを感じている人が多くを占める中、蒐集によってこの世界がより深く理解できていると感じている人や、ゴミ処理場へ向かう運命にあるアイテムを救出できないという不安を解消するために定職を投げ捨てる人もいた。彼らは知られざる存在なのだ。

 

 

神谷 洵平

蒐集アイテム:ドラム

蒐集アイテムの数:90

場所:横浜

最も古いアイテム:1920年のスネア

最もレアなアイテム:C&Cというアメリカのドラムメーカーのエンドースを受けていて、自分使用に注文したスネア

 

 

 

自分ではコレクターだと思ったことがなかったです。ドラマーなので、音楽で使うものが増えちゃったといった感じです。今は、ドラムセットが10、スネアが30、シンバルが40から50枚ほどくらいあります。あと、パーカッションなどもあるので、小物とかがトランク2つ分くらいあります。今は楽器部屋がひとつあって、そこに全部詰め込んでいます。

 

多分、所有したいという気持があるんじゃないですか。僕の場合は、楽器に囲まれているということに安心感があるんです。何かを受け取れるきっかけになっていて、近くにいると刺激をもらえるような気がするんです。家族みたいというか。

 

最近、すこし変わった物を手に入れました。1940年のもので、鼓笛隊で使うようなスネアなんです。普通のスネアのサイズは大きくても14×7とかなんですが、それは15×12で、とっても大きいんです。あと、苦労して手に入れた物は、Ludwigの初心者用の黒と黄色のドラムセットです。色がとても良くて、あと虎が好きなんです。ただフルキットではなかなか出てなくて、半年ほど前にeBayでフルセットを見つけたんです。初心者用キットにしてはちょっと高かったんですけど、落札できるまで手が震えてました。20万円くらいでした。今までで費やしたお金は、わからないですけど、600万円くらいということにしておきましょうか。

 

もし火事で一つだけ救えるとしたら?それ、考えたことあります。親父にもらったLudwig LM411 Super Sensitiveのスネアですかね。親父もプロのドラマーだったことがあって、このスネアは音に存在感があるんです。これですごく思い入れのある曲が録れて、いい人生の転機になったので、おそらくこれを持っていくと思います。

 

 

松本 一哉

蒐集アイテム:波紋音

蒐集アイテムの数:100以上

場所:東京

最も苦労して手に入れたアイテム:たぶん初めて買った波紋音でしょう。どこで買えるのか、いくらするのか、全然わからなかったですから。

最もレアなアイテム:鉄の作家さんである金沢健一さんの’’音のかけら’’ - 所有している人は少ないと思います。

 

 

 

 

音階の定まっていない、打楽器や音具などを集めています。特に斎藤鉄平さんという作家さんの創作楽器である、鉄で作られた波紋音はたくさん持っています。

 

子供の頃に、ただの木の板に工事とかで使うような鉄のジャンク品を打ち付けて鳴らしていたことがあります。アキラという日本のアニメがあるんですけど、芸能山城組がガムランと声を使ってやっている曲がそのオープニングに使われているんです。その響きが昔から好きだったんです。それがガムランだったと知ったのが20歳すぎのときでした。そして2005年頃、20代半ばのときに、初の波紋音を手に入れました。

 

音階がはっきりしていない楽器というのは、どういう音が鳴るかは鳴らしてみないとわからない部分というのがあるんです。それを鳴らして、鳴らしてという繰り返しが、どんどん操作されるというか、自分が導かれる感覚が好きです。あと、演奏の仕方にもこだわっていて、違った種類のバチを持っています。六角形の木を先につけて自分で作ったものもあります。また、スーパーボールでこすったりする演奏法もあります。鳴り方が全然変わってきます。だから飽きないですし、響き自体が面白いので、こういう楽器たちに魅了されるんだと思います。

 

変な例えですけど、いつまでも新鮮でいられる彼女、ずっと恋してられる彼女みたいなものなんです。多分、死ぬまで飽きないです。

 

 

松崎 順一

蒐集アイテム:ラジカセ

蒐集アイテムの数:3000

場所:東京

最もお気に入りのアイテム: 一番最初に出会った、当時42,800円するソニーのラジカセです。欲しくてたまらなくて、広告を何度も何度も見返しましたが、その時は手が届きませんでした。今では50個ほど持っていますが、これが一番思い入れのあるラジカセですね。

 

 

 

 

家電蒐集家です。特にラジカセには思い入れがあります。ラジカセには、デザイン、楽しさ、ほかの機種にない魅力が詰まっています。特に70年代80年代の物が好きです。その頃は自由な発想で物作りができたので、ユニークな物が多いんです。

 

10年ほど前に集め始めました。それまではインテリアデザイナーでした。たくさんの魅力的な家電が捨てられているということは知っていたのですが、それを何とかして食い止めなければという思いがありました。それで会社を辞めて、真剣に集め始めました。僕はよく埼玉県のゴミ処理場に行って、その中から自分の好きな物を探しているんです。

 

それから、自分のアトリエに戻ってきて、持ってかえってきた物を点検して、リストをつけて、修理するんです。そういうことを毎日していて、今は3000台くらいのラジカセを所有しています。僕にとっては音も魅力なので、修理をして音を聞くわけなんです。1台1台、出る音が違うんです。なので、まずはデザインを愛でる。そして修理をして今度は、音を愛でるんです。

 

1日でなおる物もあれば、数ヶ月かかる物もあります。何年越しという物もあります。修理の仕方は独学なんです。もう作られていない部品などは自分で作ったりします。これを絶対なおしたいという気持ちがあればできるんです。
 

1回命を失った家電に命を吹き込む、そういう作業が僕は好きなんです。そうやって、1台1台修理をして音を聞きながら味わっているんです。修理をして、スウィッチを押して音を聞いたときに、自分の苦労が吹き飛びますね。まだ出会いたいラジカセはたくさんあります。

 

 

林田 涼太

蒐集アイテム:アナログシンセサイザー

今まで所有したアイテムの数:14

場所:東京

最もレアなアイテム:世界で700台しか作られていないPPG WAVE 2.3

 

 

 

 

今は8台持っています。もう少し持っていたのですが5, 6台手放してしまいました。シンセサイザーのコレクターには2タイプいると思うんです。シンセそのものが大好きなタイプとシンセから出る音が大好きなタイプと。そして、僕は後者の方だと思います。もし音に魅力を感じなければ、興味も湧かないです。

 

もともと10歳くらいのときには、さだまさしのような日本のフォークを聞いていたのですが、12歳くらいのころにすべてが変わりました。友達がカセットを持って僕の家にきて、それを聞くように言ったんです。そのカセットがクラフトワークのMan Machineでした。1979年のことです。

 

シンセサイザーに興味を持ち始めて、高校一年生のときに、KORG Mono/Polyを手に入れました。15万円ほどでした。それが初シンセだったのですが、完璧に使うことができました。いつもシンセのマニュアルやらカタログを読んでは、使い方や音の感じなどを頭でイメージしていたから。完璧でした。

 

その当時、シンセサイザーは僕の世代にはそんなに知られていなかったのですが、友人2人と打ち込みバンドを作りました。Depeche Modeのカバーをしていました。Thomas DolbyやTangerine Dreamなんかも聞いてました。日本では、YMOやHikashuなんかがシンセを使った音楽をしていましたね。

 

僕はそれ以来、音に関わる仕事をしています。エンジニアです。シンセサイザーの存在そのものに人生を変えられました。

 

 

中塚 武

蒐集アイテム:電子ゲーム

蒐集アイテムの数:120以上

場所:東京

最も古いアイテム:1978年のサイモンゲーム

最もレアなアイテム: トミーのスリムボーイ ウォッチマン ボーリング - 普通のウォッチマンシリーズは腕時計になっていますが、これは置き時計なんです。あまり売れなかったので、見つけるのが大変なんです。もともと時計屋などで売られていて、おもちゃ屋では売られていなかったので、見つけるのが大変というのもあります。まだ全種類持っていませんが、これを見つけると必ず買います。

 

 

 

 

1980年頃、5歳くらいだった頃にゲームウォッチが流行っていたんです。みんな、ゲームが好きでした。その頃は当然1つか2つしか持っていなかったのですが、僕が高校生の頃、ゲームウォッチブームは終わったんです。みんなファミコンやゲームボーイに移行していて、それは僕にとって絶好のチャンスでした。なぜなら、ゲームウォッチなど古い電子ゲームの価格が暴落したからです。

 

それでたくさん買い始めました。1台5000円から6000円くらいだった物が、今は価値が上がって箱付きだと1万円以上はしますね。大体120くらい持っているので、100万円くらいは使ったでしょうかね。

 

変わったものはいくつかありますね。ゲームウォッチのパノラマスクリーンシリーズなんですが、カラー液晶ができない時代だったので、自然光を取り入れて、鏡に反射させることによって、カラー液晶を実現させているんです。苦肉の策でカラーにしてるんですね。

 

ゲームに必要なのは、ルールと素晴らしいアイディアなんです。テトリスなんてそうですよね。ただのブロックじゃないですか。絵がきれいって訳ではないので、ただわかりやすいルール、その制約と、素晴らしいアイディアだけ、それでとてもおもしろいんですよね。ゲームウォッチはアイディアで勝負するしかなかったというのもあって、アイディアの宝庫なんです。今のゲームは絵がきれいでハイテクなんですが、付け足しすぎて、骨格が見えなくなっている感じがしますね。

 

なぜ集めるかというと、僕の場合、コンプリートできるからですね。もし無限にある物だったら魅力を感じてないです。例えばiPhoneのゲームアプリはいつでも欲しいと思ったときに手に入るので、集めようとは思わないんです。数が決まっていて、この世からなくなってしまうかもしれないものは、きっちりと自分で持っておきたいんです。

 

 

 

陶山 享

蒐集アイテム:ベース

蒐集アイテムの数:300以上

場所:横浜

最も苦労して手に入れたアイテム: Foderaは木目のきれいな楽器をつくるのですが、たまに色物をつくっていて、いくつかカラフルな物を持っていますが、その中には10年越しで買った物もあります。

最もレアなアイテム:そういうことは考えないです。人や世の中にとって、価値があるかないかは、全然興味がないです。自分がいいと思った物しか手に入れないです。

 

 

 

 

僕はコレクターではないです。集めてるつもりはなく、べースが増えちゃってるだけです。何千円の物もあれば、三桁の物もあります。手に入れるのに10年かかった物もあります。でも、全て、平等に僕にとっては大切です。

 
精神科医と音楽と両立でやってます。ファンクラ大臣トリオというバンドと大臣セントラルステーションというカバーバンドでベースを弾いて歌っています。1980年、11歳の時にベースを始めました。ヒカシューをテレビで見たのが原点なんです。巻上公一さんがベースを弾きながら歌っている姿を見て、かっこいいと思ったんですね。

 

もともと、何でも好きな物はたくさん持ってないとだめなんです。一つだと不安なんです。たくさん持ってるのはベースだけではないんです。例えば、MacBookが家に15台くらいあります。車は今は3台しかないですが、最盛期は9台ありました。恥ずかしくて、汗かいちゃいますけど。

 

数年前に再婚したんですが、その前、ひとりで荒んだ生活をしていまして、その頃は自傷行為のようにたくさんベースを買っていました。それで、ベースの数が300になったんです。今は100に減らしましたが、手放したときは、それは、泣けましたよ。ただ、尋常じゃないお金の使い方をしていたので、1000万円は使ったかもしれないですね。

 

どうして、人間は集めるのか?それは、集めるのに夢中になるのではなくて、手に入れると、手に入れたことを忘れちゃうんですよ。そこまでの思いが全部消えちゃうので、また、次に向かっちゃうんですよ。

 

僕にとって、ベースという楽器は自分の感情を一番表現しやすいんです。一番、直感そのものを表現できる楽器ですね。

 

 

細川 雄一郎

蒐集アイテム:コンパクトエフェクター

蒐集アイテムの数:250

場所:東京

最もお気に入りのアイテム:1972年のBig Muff。8つ持っていますが、そのうちの1つが奇跡のコンビネーションで音がめちゃくちゃいいんです。

 

 

 

 

楽器を弾きますが、それが本職ではないです。楽器屋の店員です。そのお陰もあり、今までに2000個くらいのエフェクターを触ってきました。メーカーの方と話す機会もあり、こんな商品を作ってほしいと話して、それが商品化したりすることもあります。

 

世界のエフェクター大図鑑というすごい本があるのですが、高校生の時にそれに載っているエフェクターを見ているのが、何よりも楽しかったんです。ずばり、エフェクターの見た目が好きです。ノブの配置であったり、種類であったり、外観の塗装であったり、もろもろ含めてトータルで見た目が好きです。エフェクターをあけて中を見るのも好きですね。

 

物というのはその時代を体現していると思うんです。エフェクターもそれぞれが作られた時代によって違うんです。エフェクターが出たのが1962年なんです。出始めなぶん、60年代のエフェクターというのは、とてもでかくてめちゃくちゃなんです。そういう時代ごとの違いが面白いですね。

 

海外どこにでもコレクターはいると思いますが、日本のコレクターの集め方は尋常じゃないですよね、自分を見てても思いますけど。細かな違いを気にする人がコレクターには多い気がします。集めること自体楽しいことだと思います。例えば探している間も楽しいですし、その次に見つかったときの喜びというのもりますし、そこに中毒性がありますが、物の魅力が一番大きいと思います。

 

 

All photos: Suguru Saito