九月 24

外から見たJ-Pop

長年J-Popの奇妙な世界についての記事を執筆し、アニメ関連サイトJapanatorなどへ寄稿してきた音楽評論家Zac BentzがJ-Popアーティスト11組について紹介した2012年の記事を紹介する。

By Zac Bentz

 

日本のポップミュージックについて考える際に、鮮やかな髪の色、踊るぬいぐるみや巨大な瞳、ビデオゲームから飛び出てきたかのような洋服をまとい脱色した髪の毛と人形のような笑顔の男性グループ、またはハイエナジーなダンスビートに合わせて民謡を歌うロボットの姿を思い浮かべる人がいるだろうが、どのイメージも正しい。何故ならJ-Popはそれをすべて含み、それ以上の要素も内包する音楽だからだ。

 

現代のJ-Popは「流行歌」と「演歌」にルーツを持ち、そこにその時々に登場したUKやUSのロックバンドのサウンドを取り入れて発展してきた。松任谷由実のようなシンガーは1970年代のフォークロックを形にし、その後登場したピンク・レディーはディスコとロックステップのコリオグラフィーと力強いスタイルを用いて80年代初頭まで活動した(USでも一時的に活動している)。そして80年代に入るとエレクトロ・ポップとニューウェーブが台頭し、坂本龍一やYellow Magic Orchestraへの時代へと移った。

 

その後、J-Popはやや異常とも言える時代に突入していく。日本を世界の舞台へ押し上げたノンストップのテクノロジーの進化はJ-Pop、そして当然のことながら、アニメや漫画にも影響を与えた。ある意味J-Popは電子パルスの音楽と言えるのだ。アニメ少女と巨大なロボットへの強い憧れを融合させた日本が人工的な歌声の世界をリードしているのは当然の結果だろう。学校の総生徒数に匹敵する数の女性が所属するアイドルグループから、ネット上を糖衣したウイルスのように席巻する人工アイドルに至るまで、稀有な「才能」とは言えないが、意志の力によって「創りだされた」ポップスが日本のTop40を埋め尽くしている。

 

現実世界に自分を引き止めてくれるガイド抜きに、この狂乱の世界を探るのは難しい。よって、今回は筆者がJ-Popを代表するアーティストたちを簡単に紹介する。 クリエイティブなアイディア、ジャンルのマッシュアップ、そしてモラルを問うような存在がエンドレスに生み出されているように思えるこの国の音楽を掘り始めれば、戻れなくなるだろう。

 

AKB48

まずは一番クレイジーな存在を紹介しよう。それがAKB48だ。「AKB」というイニシャルは彼女たちの生まれた場所、東京の電脳タウンAKIHABARA(秋葉原)から取られたものだ。48という数字は元々のメンバー数で、かつては14歳から20歳までの女性が48人所属していたが、現在その数は研究生を合わせて100人近くに膨れ上がっている。この増加に伴い、正規メンバーはチームA、チームK、チームB、チーム4、チーム8のサブグループに細分化されている。この巨大な「タレント」の集合体は、チャートにシングルとアルバムを送り込み続けており、売上面と人数の両方で日本最大のグループとなっている。当然のことながら、非常に幼い女性のビキニ姿でのダンスや下着をチラつかせる性的なファンタジーの演出などについては議論も生まれているが、これはポップミュージックであり、それ以上を期待してはいけない。尚、SKE48、SDN48、NMB48、HKT48などが存在することを知れば、このグループの力の大きさが理解できるだろう。

 

モーニング娘。

モーニング娘。はAKB48と同じく、多数の女性が所属し、サブグループに分かれた活動を展開しているグループ「ハロープロジェクト」の一部だ。現在10人が所属しているが、他のアイドルグループ同様、ある程度の年齢に達すると「卒業」するため、過去に所属していたメンバーの数は多い。モーニング娘。の音楽はシンプルで親しみやすく、あからさまな性的な要素も少ないが、とは言え、ベタなカラオケマシンから飛び出てきたようなサウンドだ。

 

Perfume

Perfumeは中田ヤスタカによってプロデュースされた女性3人組のアーティストだ。中田ヤスタカは自身のユニットCapsuleを始め、様々なアーティストのプロデュースやリミックスに関っている。Perfumeのサウンドは中田ヤスタカの音楽性が色濃く反映されており、他のポップグループに比べるとエッジの効いたハードなサウンドに仕上がっているが、コマーシャル性が失われている訳ではなく、むしろその逆で、製品とタイアップしたTVCMなどで頻繁に聴ける。

 

浜崎あゆみ

J-Pop界のディーバ。最近は売り上げが伸び悩んでいるが、チャートに食い込むその力は否定出来ない。柔らかく揺れる彼女の歌声は一聴すれば分かる特徴的なものだが、そのルックスもまた特徴的で、若さを維持しながらMadonnaの系譜上に位置し続けている。

 

B’z

「ポップ」を「人気」で判断したいのであれば、B’zよりも人気があるグループを見つけるのは難しい。20年以上のキャリアで実に8000万枚を売り上げており、日本最高の売り上げを誇るバンドとして知られている。50歳の2人にとっては悪くない結果だ。彼らのサウンドは意図的にダンスミュージックよりもロックやブルーズにシフトしたものだが、だからと言ってダンス的なニュアンスがない訳ではない。

 

Gackt

Gacktは1990年代中盤から活動しているソロアーティストだ。ヴィジュアル系/ゴシック系のバンドMalice Mizerのヴォーカルとして注目を集め、後にJ-Popシーンへ活動の場を移した。J-Popに活動の場を移してもMalice Mizer時代のダークでエッジの効いたイメージを保っているが、基本的にはただのダンス好きの美男子のようで、近年はYellow Fried Chickenzを結成し、「草食系男子を肉食系男子に変える」というコンセプトを掲げたポップパンク的なサウンドを展開した。そのライブを見る限り、バンドは女性ファンよりも自分たち自身に興味があるようだ。

 

初音ミク

所謂「ポップバンド」がメンバーだけで作り出せるものなのかという点については、色々と議論があるだろうが、初音ミクに関しては「他人によって生み出された」という解釈で間違いない。何故なら彼女は「箱の中から生まれた」存在であり、ソフトウェア「Vocaloid」のラインアップのひとつだからだ。映像、音楽を問わず、ウェブ上のインディープロデューサーに寵愛されている彼女は、過去最多の作品数を誇るシンガーのひとりとしてセンセーションを巻き起こした。彼女の登場作品数は10万曲を超えるとも言われている。またアニメ『マクロスプラス』に登場するシンガー、シャロン・アップルの登場以来、この世界の定番であるホログラムによるライブも展開している(Tupacよりもかなり前に)。

 

きゃりーぱみゅぱみゅ

ブロガー/ポップシンガー中川翔子の系譜上に位置するきゃりーぱみゅぱみゅ(竹村桐子)はブロガー/モデルとしてキャリアをスタートさせ、独特のファッションセンスで人気を獲得した後、中田ヤスタカのプロデュースでJ-Popへと進出した。その音楽は純粋なポップだ。ハイパービジュアルな原宿的な彼女のファッションは奇抜な色や目眩を起こすようなパターンに彩られているが、彼女の音楽は、たとえ耳から離れないような狂気に繋がるとしても、抗えない楽しさが含まれている。

 

Omodaka

Omodakaは謎めいたプロジェクトだが、意図的に生み出されたものだ。Omodakaに関しては、本名が寺田創一であること、そして彼がゲームミュージックを手がけていること以外は殆ど知られていない。Omodakaは巫女の姿をして、白い無表情なマスクを着けているため、性別も感じさせない。彼の音楽はゲームボーイのチップチューンやエレクトロサウンドに伝統的な民謡と演歌を混ぜ合わせたもので、ライブでは時として民謡歌手金沢明子が起用される(コンピューターの画面上で歌う)。このファンキーなエレクトロフォークという非常にユニークなそのスタイルは、日本固有の音楽性を組み込むことで新しいサウンドを提供している。尚、自身が運営するFar East Recordingでは、奇天烈な映像も発表されている。

 

World Order

World OrderはYouTube世代にはパーファクトな存在と言える。つまり、音楽的にはOKレベルだが、映像はお見事という訳だ。ステレオタイプなサラリーマンの姿をしたWorld Orderは、パフォーマンスアートと精密なコリオグラフィーを組み合わせている。彼らの動きは非常に細かく複雑で、目の錯覚に挑戦している。もし、彼らの真横で笑ったり、困惑したような表情を浮かべたりしている一般人の姿が無かったら、合成ではないかと疑う人もいるだろう。また、元格闘家(須藤元気)によって率いられているという事実が、World Orderという存在を更に奇妙なものにしている。

 

Polysics

Polysicsは、メタルからポップに至るすべてのジャンルに対する深い造詣を、1系統の高解像度アウトプットから放出しているニューウェーブ/ロック/パンクバンドだ。彼らのルックスはDevoと日本のP-Modelを参考にしたものだが、その音楽は激しいギターとシンセポップの集中砲火と言えるものだ。日本語と英語にフロントマン・ハヤシの独自の言語を組み合わせたPolysicsは、しなやかにエレクトロニック・ミュージックを操るパワフルなポストモダンロックバンドだ。カヨの脱退はファンには大きなショックだったが、残された3人はバンドの勢いを維持し、素晴らしい音楽のリリースを積極的に続けている。