九月 17

Paul Woolfordが語るSpecial Request、Shut Up and Dance、パイレーツラジオ

エレクトロニック・ミュージックは常にノスタルジアとフューチャリズムの間で揺れているが、Paul WoolfordのプロジェクトSpecial Requestはその2つの理想を結びつけた例だ。Special Requestの音楽は一聴しただけでは古くて馴染み深いものに聴こえるが、「保存」と「再発明」が同時に実現されている。

By Aaron Gonsher

 

Woolfordの別名義であるSpecial RequestはUKジャングルの黄金期からインスピレーションを得た作品だが、Four Tetが『Beautiful Rewind』でパイレーツラジオを引き合いに出し、Ben UFOがスペシャルジャングルセットをfabricで披露するなど、その時代の引用が特に目立った年に一気に注目を集めた。メディアもジャングルの再来を告げている今、Special Requestは突出した存在感を放っており、Houdstoothからリリースされたデビューアルバム『Soul Music』は、説教臭さを一切感じさせることなくこの時代をリスナーに教えながら、模倣・オマージュ・そして本質的で現代的なその音楽に対する解釈がひとつにまとめている。

 

Special Requestは、Woolfordのキャリアのプロ化と共に感じているようになっていた本人の苛立ちと、音楽の再活性化への欲求に対するリアクションとして生まれた。リーズ出身のWoolfordは2005年のBobby Peru名義の「Erotic Discourse」や、元々昨年にHotflushからリリースされ、今年ヒットとしたピアノハウス「Untitled」などで成功を収めていたアーティストだが、Special Requestは「Untitled」の陽気なムードに比べると内省的で、本人はSpecial Requestについて「純粋に好き勝手にやった結果」と説明している。今回行ったメールインタビューで、Woolfordは若い頃に受けた音楽的衝撃、そしてそれがSpecial Requestに及ぼした影響などについて語った。

 

 

「Special Request」の1枚目は2012年3月にリリースされていますが、ジャングルやパイレーツラジオのハイブリッドサウンドを作ろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

 

色々な要素が組み合わさった結果だ。制作でワクワクした気持ちをもう一度得たいと思っていたのさ。この業界の今の状況に対して、立ち向かおうとした。いざ制作をスタートさせると凄くフレッシュな気持ちになれたね。音楽以上の何かを解き放てるような感覚を得られた。トラックは自然に生まれたもので、自分が意識的に行ったのは曲全体の流れのキープだけだった。凄くスムースに制作を進められた。色々と犠牲もあったが、今までもそうだった。

 

音楽以上の何かを解き放てる感覚と言いましたが、それはクリエイティブな感覚を再び得られたという意味なのでしょうか? それとも何か具体的な考えやインスピレーションが得られたのでしょうか?

 

ハードコアミュージックが流行りの音楽ではないという事実が 自分を更に興奮させた。

これはずっと自分の中にあった感覚で、要するに常に自分のやりたいことに集中することが一番大事だってことさ。このプロジェクトをスタートさせる前もある程度は理解していたし、ある程度は表現できていた。だが、Special Requestで完全に解き放つことができた。ハードコアミュージックの本質、そして流行りの音楽ではないという事実が自分を更に興奮させた。だが、それ以上に今まで感じたことがなかった信念と確信をこの音楽には感じることができた。アーティストの多くは自分の作品が与えるインパクトがプレゼンテーションのやり方やタイミングなどに左右されてしまうことに嫌な思いをする時があると思うが、このプロジェクトに関してはそういう部分はどうでも良かった。「人に理解してもらえるか」という部分は全く気にならなかった。他人のことなんてどうでも良かった。

 

個人の意志を超えた部分が求められ、またその部分が大きな意味を持つようになったエレクトロニック・ミュージックの現状が影響した部分はあるのでしょうか?

 

このプロジェクトは制作を始める何年も前からゆっくりと蒸留されていったものだ。俺は音楽の再構築のためにはハードコア/ジャングルの持つエナジーやコントラストは非常に大切な要素だと常々感じていた。また自分が置かれていた環境に対して距離を感じていた時期を経て、もう一度初心に帰ろうと感じてもいた。そう感じた時点でエージェントを変えて、マネージメント会社を離れて、PRアシスタントも外して、ひとりでこのプロジェクトに集中することにした。その直後に感じた喜びは凄く大きなものだったし、ここ数年なかったようなインスピレーションやパワーを感じることができた。シーン全体も、そこまで表立った動きではなかったにせよ、以前よりもっと過激なサウンドに対してオープンなタイミングが訪れていたのは明確だった。だが、Special Requestはシーンで繰り返される流行を上手く利用するというよりも、純粋に好き勝手にやった結果だ。

 

 

私はアメリカ人ですので、ジャングルが生まれた頃のシーンを体験していません。当時、あなたがこの新しいジャンルをどう感じていたのか教えてもらえますか?

 

ジャングルは俺が10代の頃に聴いていた音楽のひとつだった。リーズで開催されていたレイヴのフライヤーを集めたり、パイレーツラジオやテープを聴いたりしていた。リーズには長年に渡りパイレーツラジオシーンに関わっていたDJ Shockという人物がいて、 その頃の俺はPCRDream FM、People’s FM、Energy Radioなどのパイレーツラジオを通じて彼の番組を聴いていた。ひたすらそういう番組を録音していたんだ。

 

そして週末になると、クラブやレイヴのミックステープを買っていた。ハードコアなサウンドに備わっていたパワー、低音、スピードはハウスやテクノにはなかったものだった。そして俺が持っていたレコードのサンプルが沢山使われていた。初めてShut Up And Danceの曲をちゃんと聴いたのはDream FMの土曜日の番組で、特に印象に残ったのが「Hooligan 69」だった。このトラックで使われているサンプルが『Techno 2: Compilation』に収録されていたArea 10が元ネタだってことはすぐ分かったが、あのブレイクビーツにかぶせられたベースラインは凄くワイルドに思えた。この曲が自分にとってターニングポイントになった。10代の自分があのトラックを聴いた時に得た高揚感は言葉では説明できない。

 

記憶の輝きは失われてない。人間味のある音楽だ。最悪の時代の作品でもそれを感じられる。

当時の音楽はテクノロジーの進化と共に急速に変化していった。サンプリングできる時間が長くなると共に、作品のクオリティが高まっていった。Amigaを使って制作されたUrban Shakedownの「Some Justice」から、AKAIのS900を使ったトラック、そして更に進化したE-Muのサンプラーを使ったトラックまであっという間に進化していった。Reinforcedのようなレーベルが、この音楽が無数の方向に進化できることを示していた。低解像度のサンプルを使用したトラックは完全に姿を消さなかったものの徐々に消えていき、ハイテクでフューチャリスティックなトラックが増えていった。中でもMetalheadzからリリースされたGoldieの「This Is a Baad (Razor’s Edge)」のSource DirectのリミックスやDillinjaの「The Angels Fell」は説明出来ないほど大きなインパクトを俺に与えた。『スターウォーズ』や『ブレードランナー』などのSF映画にのめり込んでいた子供にとって、その世界観をすべて音楽で現したようなレコードは凄くワイルドだった。

 

当時の俺は、『i-D』、『The Face』、『The Wire』、『DJ Mag』、『Mixmag』の中から、ハードコアからジャングルに変化していく時期について書かれていた記事を切り抜いては、バインダーにまとめていた。数年前、親父が俺の家に来た時に、偶然それを置いていったんだ。今読み返してみると、自分の昔のミックステープを聴くのと同じ衝撃を感じる。記憶の輝きは失われてない。人間味のある音楽だ。最悪の時代の作品でもそれを感じられる。これはソウルミュージックなんだ。

 

あなたの音楽体験は同時期を過ごしていた他の人たちと比べると独特だったのでしょうか?

 

俺はラジオを通じてダンスミュージックに出会った。その後、レコードを買ったり、The Gallery、Ark、The Orbit、Back To Basicsなどリーズのクラブでレコーディングされたテープを買ったりするようになった。実際にクラブへ出掛けるようになったのはその後だ。当時はミックステープを聴いてクラブでみんなが何を聴いているのかを理解していた。

 

Shut Up And Danceが登場してすべての音楽をひとつにまとめた時、俺にはそれが完全に理解できた。

ラジオ番組の方が音楽の幅が広かった。パイレーツラジオでのプレイはクラブよりも勇気が感じられた。例えばクラブでNu Grooveのようなレーベルのトラックがプレイされる時は殆どなかった。当時は分かっていなかったが、今はこういう音楽の聴き方が俺の選曲に影響を与えてきたことを理解している。自分が他人とは違うなと思ったのは、学校で他の奴らとテープを交換し始めた時だ。奴らが持っていたのはリーズのクラブRicky’sのテープで、そういうテープはどのDJも同じようなレコードをプレイしていた。

 

一方、俺が自分で作ったテープはFrankie Bones & Lenny Deeの「LoonyTunes」EPや「Bones Breaks」EPシリーズ、Morenaの「Hazme Sonar」(『Droppin Science Volume 1』など数々のジャングル作品でサンプリングされている)のようなイタリアのトラック、それに『Urban Acid』や『House Hallucinates』のようなアシッドハウスや「Feel Surreal」のようなデトロイトもミックスしていた。テープを渡した奴らからの反応で、お互い少し違う場所に立っているのが分かった。それで、Shut Up And Danceが登場してすべての音楽をひとつにまとめた時、色々な意味でカオスな音楽だったが、俺にはそれが完全に理解できた。

 

 

Shut Up And Danceは異なる音楽を聴いていたグループ同士を結びつけるのに大きな役割を果たしましたが、彼らが他とは違ったのはどの点だったと思いますか?

 

俺にとって、彼らはそういう多種多様な要素を初めて一緒にまとめたプロデューサーだった。UKの北部で爆発的なヒットになった「Lamborghini」でさえも、凄く奇妙なコントラストが生まれている。このトラックはThe Eurhythmicsのループで有名だが、フルートのリフにブリープが重ねられているイントロも凄く変わっている。こういうキレがある音楽はそれまでなかった。彼らがその扉を開けた。PJとSmileyは本当にリスペクトしている。もっと評価されて良いと思う。結果的にサンプル使用の問題でピーク時に活動停止になってしまったのは本当に残念だ。

 

ジャングルやパイレーツラジオカルチャーの音楽的、社会的な特徴において、今だからこそ改めて気づいた部分はありますか?

 

改めて思うのは、そのシーンが非常に小さくて脆かったという点だ。15歳でパイレーツラジオを聴いている時は、別世界の出来事のように思えたし、ひとつにまとまっているように思えた。勿論、こういう音楽を上手く回していくためにはまとめるための団体が必要だった訳だが、当時の人たちはリスクを背負って音楽を届けようとしていたという事実の方に大きな意味を見いだせる。今は、音楽を使って若い世代に食い込もうという企業の利権に囲まれていて、音楽は楽しみであると同程度にただのツールだ。だが、パイレーツラジオは元々地域社会への奉仕活動だ。そしてリスクは非常に大きく、資金も比べ物にならない位少なかった。

 

Special Requestは自分の感覚を大事にした結果だと言っていましたが、多くの人たちがSpecial Requestをジャングルとパイレーツラジオに結びつけ、ノスタルジックなプロジェクトだと考えている点は少し奇妙に思えませんか?

 

どこかのギャラリーへ入って、そこに展示されている作品をしっかりと見れば分かるが、どの作品も何かを参照している。私有化は本当に多い。俺も自分自身の作品自体を自分が使うサンプルと同じように自分の作品に使用している。例えば、俺の場合は、同じインスピレーションを源流にしながら、ブレイクビーツを一切使わないアルバムも作れた。だが、そうしていたら今ここで、こういう話をしていないだろう。アルバムのサウンドの定義付けが曖昧になり、リスナーたちとの繋がりが弱くなっていたはずだ。そういう意味で、ドラムサウンドは手っ取り早くリスナーに感覚を与えられるサウンドと言っていいだろう。

 

俺はリスナーの記憶に一生残るような瞬間を生み出したいだけだ。これは単純に感覚の話だ。

リバイバルに関して突っ込んだ話をさせてもらうと、じゃあ俺は毎回自分のトラックをFM送信機経由でサンプリングすることで、小さなリバイバルを起こそうとしているのか? という話になる。当然ながら答えはノーだ。だが、アカデミックな議論ならば、ここまで話が進んでもおかしくはないだろう。こういう議論が終ることはないのさ。俺は何かを提示しようとしている訳じゃない。俺にとってはどうでも良いことで、俺はリスナーの記憶に一生残るような瞬間を生み出したいだけだ。これは単純に感覚の話だ。分からない奴は一生理解できないだろうし、最初に聴いた時点で既に理解できなかっただろう。それはそれで構わない。理解できないとしても別に問題じゃない。例えば俺はHerbie Hancockが好きだが、彼の全作品を好きな訳じゃない。俺が好きじゃない楽曲は俺には必要ないって話だ。それはどのアーティストでも一緒だ。

 

今回のプロジェクトに興味を持ったオールドスクールなジャングリストたちとのコラボレーションを考えていますか? 第一世代からの反応はどうですか?

 

Doc Scott、Shy FX、Sean O’Keeffe(2 Bad Mice/Deep Blue)、DJ Lee、Metalheadzクルーなど第一世代からサポートされている。Metalheadzとは最近Fabricで共演した。 Ulterior MotiveやNarratives MusicのBlocks & Escherなど若手とも組んでいる。彼らは最高だ。

 

Dream FMで聴いていたようなアーティストたちから称賛されている今の自分を16歳のあなたはどう感じるでしょう?

 

素晴らしいと思うだろうね。