九月 29

インタビュー:『Minecraft』コンポーザーC418

大ヒットゲーム『Minecraft』のサウンドトラックを制作したドイツ人アーティストを紹介

By Todd L. Burns

 

『Minecraft』の開発者Markus “Notch” Perssonと同様、C418もこの大ヒットは予想していなかった。このゲームのサウンドトラックは、C418がこのゲームのサウンドエンジンの制限を巧みに扱いながら制作したものだが、本人はいくつかのサウンドがもう差し替えられないことを悲しんでいる。それらのサウンドはこのゲームの象徴になりすぎてしまっているからだ。しかし、当然これは悪いことではない。そして結局のところ、本人もこの点については納得している。今回は、Ghostly Internationalから『Minecraft Volume Alpha』をリリースしたばかりの彼に、活動拠点ベルリンでインタビューを試みた。

 

 

 

ベルリンの生活はどうですか?

 

実は最近引っ越してきたんだ。それまでは国内の他の小さな町に住んでいたんだよ。引っ越した理由は、ドイツの国税庁が、僕がオフショアで脱税しているんじゃないかって疑ったからなんだ。もちろん、そんなことはしていないし、ちゃんと証明できたけど、彼らから「この町に住んでいるミュージシャンは君だけだよ」と言われた時に、できるだけ早く引っ越さないとって思ったんだ。

 

ベルリンはビデオゲームシーンにとって面白い街になりつつあるけど、そのスピードは遅いよ。一番の問題は財的支援が少ないという点で、ベルリンのビデオゲームデベロッパーは無料ゲームやクリックするだけの簡単なゲームだけを開発しているんだ。要するに収益が確実に見込めるゲームだけだね。財的支援があれば、エクスペリメンタルなゲームを開発する人たちが増えると思うし、実際その手のゲームの開発は増えつつある。でも、実情を言えば、ドイツよりスケールが小さいオランダの方がインディーゲーム企業の数は多いんだよ。

 

音楽制作はいつスタートさせましたか? お兄さんの影響という話ですが?

 

そうなんだ。兄はクリエイティブだったけど、優秀ではなかったね。僕は15歳の時にソフトを手に入れると、「酷い音楽を作ろう!」と言って、実際に酷い音楽を制作したんだ。でも、音楽制作が面白くて、そのまま続けていくうちに色々学んでいって、最後には酷い音楽じゃなくなったんだ。それから2年位経って、周りからマスタリングという作業があるってことと、ヘッドフォンによって聴こえるサウンドが違うってことを教えてもらった。あれはショッキングだったね。

 

 

 

“チップチューンにはまったく興味がなかった”

 

 

 

自分の音楽がそこまで酷くないと自覚したのはいつですか?

 

2007年、2008年頃だったと思う。この頃にインディーゲームのコミュニティTIGSourceを知ったんだ。このコミュニティは、Markus Perssonのようなモダンなインディーゲーム開発者を育てる場所ってところだったね。当時の僕はネット上でこの周辺に出入りしていたんだ。僕は無料ゲームが好きだったし、お金もなかったからね。僕は音楽とゲームが好きで、このふたつは共生関係にあった。というのも、僕の手元には誰も興味を示さない音楽があったから、「僕の音楽欲しい?」ってこのシーンで触れ回っていたんだ。それできっかけでMarkusと出会ったんだよ。

 

最初は自分がプレイしていたインディーゲームのような音楽を作っていたのでしょうか?

 

全然違うよ。当時のインディーゲームはチップチューンのような音楽で、僕はまったく興味がなかった。僕は12歳の頃、兄からAphex TwinのCDをもらって、のめり込んだ。だから、Aphex Twinのアンビエントトラックを真似ようとしていたんだよ。

 

 

他に影響を受けた音楽はありますか? 以前、Clarkのアルバムを挙げていましたね。

 

ああ、Chris Clarkね! 『Body Riddle』は僕のお気に入りのアルバムの1枚だった。あのアルバムに収録されている「Herzog」は基本的にリズム的要素がないけど、要するにあの曲はリズムを必要としていなくて、それが僕には衝撃的だった。大抵の場合、僕はアーティストの特定の1曲が好きになる。Machinedrumもアルバムごとに好きな曲が1曲あるね。彼の音楽を聴くと「音楽でこんなことができるんだ!」って思うんだ。そういう楽曲が好きなんだよ。

 

『Minecraft』の音楽の方向性を決めるのにはしばらく時間がかかりましたか?

 

そこまでかからなかったね。というのも、このゲームは最初から凄くロンリーなゲームだからね。それが僕は気に入っているんだけどさ。当初は美しい影や幾何学図形もなかった。なんていうか、不細工なゲームだったんだ。『Minecraft』の音楽を手がけ始めた頃、僕は同じく不細工な『Dwarf Fortress』ってゲームをプレイしていた。その開発者のひとりがフラメンコ奏者だったから、このゲームにはフラメンコが取り入れていた。だから、このゲームのプレイヤーは、不細工なDOS画面とフラメンコの奇妙なコンビネーションを体験することになったんだ。それで僕は『Minecraft』でも同じような体験をしてもらいたいと思ったんだよ。この狙いは凄く上手くいったと思う。プレイヤーたちに「このゲームはもっと奥が深いのかも知れない。もう少しプレイしてみよう」って思わせたんだ。

 

サウンドエンジンの制限もありましたね。

 

そうなんだ。数年前はソングファイルが2個存在すると、クラッシュしてしまった。他にも奇妙なグリッチ(バグ)が沢山あったんだけど、みんなゲーム自体の開発に忙しすぎてサウンドエンジンに取り組む時間なんてなかったから、そのほとんどは修正されなかった。

 

 

 

そのような制作時の制限を逆に上手く利用しようとは考えませんでしたか?

 

考えたよ。僕たち開発側がどうしても理解できないことは、プレイヤーがどういうプレイをするかなんだ。プレイヤーが洞窟にいるのか、それとも自分で建てた家の中にいるのか、こちらからは分からない。だから逆に何も想起させない音楽を作ることにしたんだ。戦闘や夜など、特定のシーンを想起させない当たり障りのないもので、でもどこかユニークで他とは違う音楽にしようってね。それで15分から20分、音楽をランダムにプレイすると、何も音楽が鳴らなくなるというような形にした。何か大きなイベントがゲーム内で起きていると、プレイヤーはその時にプレイされている音楽を記憶する。でも、音楽がプレイされていても、ゲーム内で何も起きていなければ、プレイヤーはただその状況を受け容れるだけだ。元々、僕は「プレイヤーは多分聴いていて苛立つと思うから、なるべく音楽が鳴る回数は減らした方が良い」と思っていたんだけど、中断が入ることが上手く機能しているんだ。

 

『Minecraft』のサウンドは奇妙で形で感情に訴えるものだと思うのですが、ゲーム内のサウンドについてもう少し詳しく話してもらえますか?

 

最初は、フォーリー(効果音)についてそこまで詳しくなかったんだ。今はかなり理解するようになったけど、学ぶのがちょっと遅かったね。でも、今サウンドを入れ替えようとすれば、世間から嫌われてしまう。何故ならゲームの象徴になっているからさ。フォーリーは試行錯誤を繰り返すという意味で凄く特殊だね。色々試していって、突然「これだ! マイクで録ろう!」ってなる。制作方法が確立されていないんだ。

 

 

 

"Markusは、全員が死んでいる宇宙船にたったひとりで取り残されるという設定の非常に複雑なゲームを作ったんだ。気が滅入る内容だったよ"

 

 

 

フォーリーが非常に面白いのは、そのサウンドとまったく関係ないアクションが逆にそのサウンドをより的確に表現する時が多いという点です。

 

そうだね。例えば芝生の上を歩く音は、実際に足で芝生の上を歩いても生まれないよね。VHSテープを手でくしゃくしゃに丸める方が良いんだ。本当に芝生の上を歩いているようなサウンドになるよ。

 

あなたは以前からAbleton Liveが制作において非常に重要なツールだと発言していますが、愛用しているシンセもあるらしいですね?

 

Moog Voyagerだね。2011年に買ったんだ。これまでの人生で一番高価な買い物だった。リードシンセとして使用する人が多いけど、僕はベースシンセとして使用している。あのフィルターはまるでセラピーみたいだよ。でも以前ほど使わなくなったね。今は高性能のMacBookに切り替えていて、その中に必要なすべてを詰め込んで、どこでも制作ができるようにしているんだ。それで、ある人からMoog VoyagerのVSTをもらったんだけど、個人的には全然本物に似ているとは思えない。というのは、Moogはダメなところが最高なんだけど、そういうダメなところはVSTには移植されないからさ。例えばMoog Voyagerは電源を入れてからピッチが安定するまで5分はかかるんだ。

 

 

『0x10c』について教えてください。

 

Markusは『0x10c』を『Minecraft』に匹敵する作品にしたいと思っていたんだと思う。もちろん、もう実現する可能性はないけどね(訳注:開発中止をMarkus本人が発表したため)。Markusは、全員が死んでいる宇宙船にたったひとりで取り残されるという設定の非常に複雑なゲームを作ったんだ。気が滅入る内容だったよ。しかも、奇妙なコンセプトが用意されていて、プレイヤーは古いCPUを組まなければならないんだ。そのCPUで宇宙船を再起動させるってわけさ。僕は今にも壊れそうな旧式の宇宙船なんだろうなって想像しながら、サウンドエフェクトをいくつか仕上げたよ。

 

結局このゲームは実現しなかった。テーマソングも作ったんだけどね。でも、疑似コンプレッションなんかが上手く表現できたし、個人的には気に入っていたよ。プレイヤーがゲーム内で解読するための暗号放送も作ったんだ。

 

『Minecraft』では実際にゲームに収録されている数よりも多くの音楽を制作したのでしょうか?

 

そうだね。でも酷い内容だって思った楽曲は、自主的に破棄した。テーマソングを仕上げるまではかなり時間をかけたよ。人を惹きつけるようなテーマが感じられる必要があるって思ったからね。そのサウンドを導き出すまで数週間かかったよ。

 

現在進行中のプロジェクトは?

 

また『Minecraft』に取りかかっているんだ。あとはハウスっぽいアルバムも完成させた。これは今すぐリリースしてもいいんだけど、どうしようか迷ってるんだ。というのも、こういう作風のアルバムのリリースはもう昔みたいに楽しく感じないんだ。あと、今はビデオゲームじゃないんだけど、音楽体験のようなゲームを作ろうとしている。Steam(訳注:ゲームのダウンロード販売サイト)でそれを購入すれば、アルバムとゲームが手に入るって寸法なんだ。色々試しているんだけど、実現まではしばらくかかるだろうね。