二月 03

Interview: D’Angelo 

神出鬼没の天才D’Angelo - 突如としてリリースされたニューアルバム『Black Messiah』の背景に迫った

By Chairman Mao

 

D’Angeloはソウルミュージックに革命を起こした数少ない人物のひとりだ。Soulquarianのメンバーとして、そしてQuestlove、Lauryn Hill、Raphael Saadiqの友人/共同作業者として、D’AngeloはMarving GayeやPrinceが残した足跡を辿りつつも、そこにJ Dillaのような独特のビート感覚を組み合わせることに成功した。ファーストアルバム『Brown Sugar』は、現代のR&Bとスロージャムの礎を築いた。重心が低く、気だるさと煙たさが入り混じる彼のラブソングの数々は、Curtis MayfieldやAl Green、Sam Cooke、Jimi Hendrix、Sly Stone、James Brownなどに敬意を示しつつも、D’Angelo独特の艶っぽいゴスペルの官能が盛り込まれていた。

 

しかし、彼のアーティストとしての評価を確実にしたのは、セカンドアルバム 『Voodoo』だった。このアルバムはグラミー賞2冠を含む数々の賞を受賞し、数百万枚を売り上げた。またD’AngeloはCommon、Slum Village、Q-Tip、BB King、Roy Hargrove、The Roots、Method Manなどによるクラシックアルバムにも参加。その才能を遺憾なく発揮した。

 

誰よりもアレンジとソングライティングに拘りを見せるアーティストとして評価を得ているD’Angeloは、最高の音楽のために自分の人生を費やしてきた。彼のニューアルバム『Black Messiah』を聴けば、それはすぐに理解できるだろう。2014年12月15日にリリースされたこのアルバムは、実に『Voodoo』から約15年ぶりのフルアルバムだ。今回紹介するインタビューは、2014年初頭に行われたものからの抜粋だが、このニューアルバムの背景となっているD’Angelo本人が受けた音楽的影響やインスピレーションなどが語られている。

 

 

以前ゴスペルのカルテットについて話をしてくれました。

 

俺にとってPilgrim Jubileesは必聴のカルテットだね。「Old Ship of Zion」のカバーを歌っているんだけど、本当に心が揺さぶられるよ。クレイジーさ。Mighty Clouds of JoyやSam Cookeが共演したSoul Stirrers、優れたゴスペルグループは沢山いるよ。あとはGospel Key Notes と共演したWillie Neal Johnsonだね。Gospel Key NotesはWillieのことをThe Country Boyと呼んでいる。でも一番ディープなグループは、Pilgrim JubileesとViolinairesだ。両方ともシカゴ出身さ。俺が一番好きなカルテットシンガーはRobert Blairで、彼はViolinairesのリードシンガーなんだ。ゴスペル界のJames Brownさ。

 

あなたはGuyのAaron Hallを尊敬しています。

 

Aaron HallはThe Gap Bandに続く形で、Charlie Wilsonの伝統を示した人物だったからさ。ファンクシンガーの系譜において、彼らはSquallers(わめく人)と呼ばれている。彼らは全員Sly Stoneの真似をしていたんだ。あのコブシを効かせたシャウトさ。Ohio PlayersのSugarfootやLeroy Bonnerのタイプだね。Maurice Whiteもよくやっているし、The Commodoresでさえも試そうとしていた。でも要するにみんなSly Stoneの真似をしようとしていたのさ。まぁ、Sly StoneはRay Charlesを真似ていたんだけどね。

 

Stevie Wonderも同じカテゴリだよ。初期の彼はSly Stoneの真似をしようとしていた。ただ、彼は他の奴らが歌えないような形であの叫び声に様々なテクニックを盛り込んだからユニークなんだ。Stevie Wonder以外でそれができたのは、The Gap BandのCharlie Wilsonだけだった。Aaron Hallはそのあとの世代ってわけさ。彼はCharlie Wilsonの後継者だったんだ。

 

 

初めてMarley Marlの作品を聴いた時を憶えていますか? どんな印象を持ったのでしょう?

 

初めて聴いたMarley Marlの楽曲は「The Symphony」だった。あの曲を聴いてから彼を意識するようになった。彼はOtis Reddingをサンプリングしていたし、サンプリングという手法を教えてくれた存在でもあった。彼はサンプリング系ヒップホップのゴッドファーザーだよ。

 

Marley Marlにのめり込んでいた頃、俺はBaby Froって奴と一緒にI.D.U. Productionsというグループに所属していた。彼の父親、Papa FlowersはDJだったから、彼の家に行くたびに、新しいレコードを聴いてブレイクを探したよ。その時に初めて『Band of Gypsys』を聴いたんだ。

 

あのアルバムを初めて聴いた時は、凄く新しいと感じたよ。Buddy MilesのグルーヴはMarley Marlのサウンドみたいだった。Jimiのサウンドのような、でも違うような、そんな印象だった。誰かがJimiをサンプリングしたんじゃないかと思った。昔の音楽を新しい形で聴き直しているのかってね。The Metersを聴いた時もそうだった。その時初めて納得がいったんだ。この手の音楽はすべて60年代に生まれたものだったのさ。でも凄く新鮮に感じた。昔に作られていた音楽だなんて知らなかったよ。本当に驚いたね。

 

Princeを初めて聴いたのはいつですか?

 

5歳の時だね。シングル「I Wanna Be Your Lover」がリリースされた頃だ。あの曲は大ヒットになった。その後アルバムがリリースされて、本当に大騒ぎになったよ。誰もが噂する存在だった。みんなは「こいつは誰だ? 男なのか? 女なのか?」と不思議に思っていた。誰も彼の正体を知らなかった。俺の家にもアルバムがあって、兄たちが夢中になって聴いていた。「彼は何でも演奏するし、曲も書くし、歌も歌うんだよ!」って騒いでいたよ。それで俺も興味を持ったんだ。あのアルバムの全曲を弾けるように練習したよ。5歳の時の話だ。

 

数あるPrinceの楽曲の中から、「She’s Always In My Hair」を取り上げた理由は?

 

自分の気持ちがあの曲とシンクロしていたからさ。勿論PrinceのB面の曲の中で1番好きな曲というのも理由のひとつだけど、気持ち的に本当にピッタリきたんだ。Ahmirと俺はPrinceジャンキーで、いつもスタジオでPrinceの楽曲をプレイしている。別にカバーするつもりもなかったんだ。自然にそうなったって話さ。

 

 

Earth, Wind and Fireの「Boogie Wonderland」はあなたの中でどの程度大きな存在なのでしょうか?

 

父が司教だったから、世俗的な音楽を家で聴くのは基本的にはよしとされていなかった。ラジオで流れていたThe Commodoresの「Brick House」やEWFは、初めてファンクを分かりやすく表現した存在だったと思う。要するにポップってことさ。彼らによって世界が開けた。George(Clinton)を掘り下げていくのはかなり後さ。

 

以前、「酔ったようなドラミング」について話していましたが、The Timeの「777-9311」について説明してもらえますか?

 

あれは革命的だった。今でも驚くよ。ジャズミュージシャンたちが「オープンルーム」と呼ぶような曲さ。あのタイミングは… ミュージシャンならあれは感じ取れないと。譜面に書き起こすものじゃない。書いても理解できないのさ。あれはその場で変化しているからね。素晴らしい楽曲だよ。ミュージシャンならばこの楽曲の仕組みを解明したいと思うけれど、それは不可能さ。ただ聴いて楽しむことしかできない。聴くだけでいいんだ。今でも1982年当時と変わらずにプログレッシブでフレッシュな楽曲だよ。信じられないね。

 

Otis Reddingを聴いたことがない人に彼をどう説明しますか?

 

まず、彼のニックネームがThe Big Oだったということを教えるね。ソウルシンガーの中で、OtisはJames Brownに次ぐ存在だけど、俺なら、Otis Reddingaはファンクの真のパイオニアだって教えるね。彼は正当な評価を受けていないんだ。ファンク黎明期の最初のスーパースターのひとりだった。 JimiがブレイクするきっかけになったMonterey Pop Festivalで、the M.G.’sと一緒に出演していたんだから。

 

 

Sly Stoneの中で、これは欠かせないという曲はありますか?

 

「Thank You (Falettinme Be Mice Elf Agin)」だね。大きな影響力を持つ人が、こんな曲を作るなんて。商業的には既に成功していた訳だから。彼がこの曲でキャリアをストップしていたら、この曲がピークになっていたと思う。あとはLarry Grahamのベースラインだね。この曲がジャンル全体を生み出したんだ。

 

Q-TipからJoni Mitchellを知った世代がいますが、あなたにとってJoni MitchellやCarly Simonたちはどのような意味を持っていますか?

 

Joni MitchellはPrinceを通じて知った。PrinceがJoni Mitchellの大ファンだということを知って、彼女の作品を聴いたのさ。俺が一番好きなアルバムは『Blue』だね。彼女の歌詞、アーティストとしての純粋さは素晴らしいよ。

 

先ほど、ゴスペルの話が出ましたが、一本の直線の片方の端にJoni Mitchellを置き、ソウルを逆側の端に置くと、その中間に位置するのがカントリーミュージックだと思います。気に入っているカントリーミュージックはありますか?

 

Johnny CashとWillie Nelsonだね。カントリーは結構好きだな。ゴスペルとブルースに近いんだ。ブルース、ゴスペル、フォークの三位一体というか。カントリーはその3つを見事に融合させたものさ。

 

あなたはギターも弾きますが、Willie NelsonのようなピッキングとJohnny Cashのような指弾きのどちらが自分に近いでしょう?

 

どうだろうな。俺はどちらのタイプでもないと思う。何故なら俺にギターを教えてくれたのはEddie HazelやPrinceといった、ファンク系ミュージシャンだからね。James BrownのバンドでBootsyと一緒にプレイしていたPhelps Collinsにも影響を受けた。彼らを聴いてギターを弾きたいと思ったんだ。あとはもちろん、Jimi Hendrixもそうだ。

 

 

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