十月 30

Hockey Music in Canada

RBMAモントリオール特集:カナダのNHLチームと音楽のユニークな関係

By Cam Lindsay

 

はじめに:北米のプロアイスホッケーリーグNHLを観戦した経験がある人は、プレーが止まればポップソングのフレーズやオルガンが鳴らされ、ゴールが決まればゴールホーンとゴールソングが流れる様子を知っているだろう。氷上の格闘技と呼ばれるこのスポーツのカルチャーには音楽が深く結びついている。

 

NHLゴールホーン&ゴールソング

 

今回はRBMAモントリオール関連記事として、アイスホッケーが国技に指定されているカナダ各都市のNHLチームと音楽との関わりを、各チームのゴールソングと共に紹介する。尚、チーム名および選手名は便宜上カタカナ表記となっている。(RBMA Japan編集部)

 

 

『The Hockey Theme』

アイスホッケーというスポーツのカルチャーに貢献してきた楽曲群の中で、「The Hockey Theme」ほどファンの間で高い認知度を誇るものは存在しない。カナダ国内で公共放送局CBC(カナダ放送協会)が毎週放映しているアイスホッケー番組『Hockey Night in Canada』のテーマソングとして用意したこの楽曲は、Dolores Clamanが作曲、Jerry Tothが編曲した作品で、カナダ人の多くが「第2の国歌」として考えているほど、カナダ人の日々の生活に深く染みこんでいる。

 

しかし、この楽曲の浸透度は「第2の国歌として考えられている」というレベルよりも深い。Clamanは、「The Hockey Theme」はカナダ国内の葬式や結婚式でも演奏され、着メロも大人気を誇り、カナダ国内では常に複数の携帯電話からこのテーマソングが流れていたとしている。しかし、オリジナルのファンには残念なことだが、その48年の歴史の中で、このテーマソングは複雑な歴史を歩んできた。まず、この楽曲には、RushのNeil PeartやBarenaked Ladiesなどのカナダのトップアーティストによる最新バージョンだという偽の触れ込みと共に売られた低質な再録バージョンが数多く存在する。また、2008年にはClamanとパブリッシャーがこの楽曲の使用権を40年近く保有していたCBCからCTV(カナダ最大の民放)へと譲渡し、ほぼ永遠の関係にあったかと思われた『Hockey Night in Canada』との関係を終わらせたことで大きな物議を醸し出した。しかし、この楽曲はカナダ人の国技への愛を示す存在としてファンの中で永遠に生き続けるだろう。

 

 

トロント・メイプルリーフス 

トロント・メイプルリーフスはチームの歴史同様、試合中に使用される音楽の歴史も豊かだ。現在、メイプルリーフスには28年のキャリアを誇るベテランオルガン奏者Jimmy Holmstromが所属しており、すべてのホームゲームでオルガン、サンプラー、そしてゴールホーンの統括を担当している。また、彼の情熱的な取り組みにより、最悪の試合を戦っている時でさえもホームに集まったファンたちによる執拗な「ゴー! リーフス ゴー!」のチャントがチームにパワーを与えることがある。メイプルリーフスは試合中に様々なポップミュージックを流すが、このチームはトロントが生んだ才能を起用することを好んでおり、試合前のウォームアップ時には地元への愛をラップするKardinal Offishall「The Anthem」が流れ、ピリオドが終わればRushの「Tom Sawyer」が観客を盛り上げ、ゴールが決まればTragically Hipの「Courage」が流れる。

 

言うまでもなく、Tragically Hipはトロント市民のハートをがっちりと掴んでいるバンドだが、彼らの楽曲の中でメイプルリーフスと最も深い部分で繋がっている楽曲を挙げるとすれば、それはメイプルリーフスのDFとして活躍した名プレイヤーBill Barilkoの死を悼んだ「Fifty Mission Cap」になるだろう。

 

ゴールソング:数年前、メイプルリーフスはトロントの南に位置するハミルトン出身のパンクレジェンドTeenage Headによる、ゴールソングにおあつらえ向きの「Let’s Shake」をゴールソングに採用したが、昨年はSheepdogsの「Feeling Good」に切り替えた。しかし、今年に入ってからはTeenage Headと同じくハミルトン出身のMonster Truckのアリーナロックアンセム「The Enforcer」を採用している。

 

 

モントリオール・カナディアンズ

モントリオールにはカナディアンズのためのラブソングを制作するという長い伝統が存在するため、その気になればiTunesでコンピレーションアルバムを購入することさえ可能だ。そして、カナディアンズも試合中にその中の数曲を流すことで、彼らの愛に応えている。ホームスタジアムには25年のキャリアを誇るオルガン奏者Diane Bibaudが詰めており、彼女が演奏する「Olé, Olé, Olé」や「Na Na Hey Hey Kiss Him Goodbye」は、対戦チームが尻尾を巻いて逃げ出すほどパワフルだ。カナディアンズの試合中にはU2、Van Halen、AC/DC、Rage Against The Machineなどの豪快なヒットソングが流されるが、同時にSteel Dragon「Stand Up And Shout」(Mark Wahlbergの映画『ロック・スター』のサウンドトラック)や、ベルギー出身のニューウェーブバンドPlastic Bertrandの「Ca Plane Pur Moi」など、カナディアンズならではのユニークな楽曲も流される。

 

ゴールソング:現在はケベック出身のヒップホップグループLoco Locassがカナディアンズのために書き下ろした「Le But (Allez Montreal)」が2013年からゴールソングに使用されている。それ以前はノルウェー出身のデスパンクバンドTurbonegroによる「The Age of Pamparius」が使用されていた。

 

 

エドモントン・オイラーズ

オイラーズは非常にクールな音楽の歴史を誇っている。現在ホームゲームのオルガン奏者を担当しているGordon Graschukは、1973年のオイラーズのプロリーグデビュー戦や1979年のウェイン・グレツキー(編注:NHLを代表する名選手)のデビュー戦を観戦した経験を持つ筋金入りのオイラーズファンで、オルガン奏者のオーディションに初参加してから実に27年後の2011年に遂にその座を射止めた。また、1979年には、無名のカナダ人作曲家Claude ScottがRCAから7インチシングル「The Edmonton Oilers Theme Song」をリリースしており、このシングルのアートワークにはScott本人がトランペットを吹く姿がフィーチャーされている。そして、1980年代のオイラーズは、ゴールソングに米国人プロデューサーMecoによるディスコアレンジ版「The Empire Strikes Back Theme」を採用していた。さらに言えば、2015-16シーズンには先住民で構成されるローカルグループ、Logan Alexis Singersがオイラーズのために伝統楽曲の作曲と演奏を行っている。彼らはホームスタジアム内での演奏が許可されなかったことから、オイラーズのキャプテンを務める人気選手コナー・マクデイヴィッドが怪我から復帰した試合の晩に、スタジアムの外でパフォーマンスを披露した。

 

ゴールソング:2016-17シーズンはThee Attacks「Stab」が採用されている。ここ数年オイラーズはシーズンごとにゴールソングを変えており、「Stab」の前はMetric「Stadium Love」、その前はPitbull「Don’t Stop The Party」、Black Keys「Lonely Boy」が採用されていた。

 

 

カルガリー・フレームス

フレームスはNHLの他のチームとは少し違う。彼らはオリジナルソングを制作した経験を持っているのだ。1986-87シーズン、フレームスはオリジナルシングル「Red Hot」をリリースしたが、このミュージックビデオには当時チームに所属していたラニー・マクドナルド、マイク・ヴァーノン、ブレット・ハル、アル・マシニス、ジョエル・オットーなどが出演して歌っていた。この楽曲は、映像の内容やクオリティの高さもあり、今でもファンの間で人気が高い。ホームスタジアムのオルガン奏者は、フレームスがスタンレー・カップ(NHLの優勝トロフィー)を唯一獲得した1988-89シーズンからWilly Joosenが長年担当している。Joosenは試合中に『ゼルダの伝説』のテーマソングを演奏することで多くのファンを獲得しているオルガン奏者で、ローカルミュージシャンDavid “The Flamin’ Fiddler” GlawaskyとCalgary Flames Duoを結成した経験も持つ。

 

フレームスはカルガリー市民から深く愛されており、2015年にはカルガリー交響楽団がCarl Orff「O Fortuna」の歌詞をチームメンバー名やファンを鼓舞する言葉に置き換えたバージョンを披露した。ホームスタジアムのScotiabank Saddledomeの試合中には主にリフ重視のクラシック/パワーロックが流されるが、パワープレイ時にはSwedish House Mafia「Greyhound」や、Dannic vs Tom & Jame「Clap」などのEDMアンセムが流される。

 

ゴールソング:現在はハミルトン出身のバンドMonster Truckによる「Righteous Smoke」が採用されているが、以前はフレームスの名前にかけたAC/DC「Shot Down In Flames」やDuck Sauce「Barbra Streisand」が採用されていた。

 

 

バンクーバー・カナックス

 

カナックスのオルガン奏者はMike Kenneyが2000年から担当しているが、2011年にカナックスがプレーオフで快進撃をしたことで、Kenneyはアイスホッケーの試合で長年に渡り愛されてきたElvis Costello & The Attractions「Pump It Up」をCostello本人と演奏するという人生最高のチャンスに恵まれた。また、カナックスは、音楽史では完全に忘れ去られてしまっているDon Cookによる名曲「Canucks (We’re With You)」をリリースしたことでも知られている。カナックスのパワープレイ時には、Wolfmother「The Joker & The Thief」が流される。

 

ゴールソング:2015-16シーズンのカナックスは、アレックス・バローズにはLMFAO「Yes」、アレックス・エドラーにはThe Hives「Tick Tick Boom」、そして、ヘンリク・セディンにはGreen Day「Holiday」など、選手別にゴールソングを用意していた。しかし、2016-17シーズンのプレシーズンマッチでは、DJ Snake & Lil Jon「Turn Down For What?」を採用しており、それ以前のゴールソングにはU2「The Miracle (of Joey Ramone)」や、ヘヴィファンクメタルバンドClutchの「Electric Worry」などが採用されていた。

 

 

オタワ・セネターズ

セネターズはオタワを拠点にするミュージシャンたちを採用してオリジナルの入場テーマ曲を用意させていた。そして、2008年にチームがその曲をハードロックバンドRev Theoryの「Hell Yeah」と入れ替えると、ファンがすぐにこの決定に抗議。まもなくしてセネターズはファンの抗議を受け入れ、オリジナルのテーマ曲に戻した。セネターズのオルガン奏者Greg Droverは、セネターズ対カナディアンズ戦で両チームが第1ピリオドを終えて控え室に下がる際にタイミング良く『ザ・シンプソンズ』のテーマ曲を演奏したことでよく知られている。

 

NHLに加入した1992年、セネターズはカナダで有名なクラシックソング、Stompin’ Tom Connors「The Hockey Song」を初めて流したチームとなった。この曲がそれより19年も前にリリースされていたことを踏まえると、これは驚くべき事実だ。

 

ゴールソング:セネターズは2016-17シーズンの開幕戦で、このシーズンのゴールソングにBlur「Song 2」を採用することを発表した(セネターズは2011-12シーズンのプレーオフでもこの楽曲を採用していた)。尚、2016-17シーズンのプレシーズンマッチではAvicii「Wake Me Up」が採用され、2015-16シーズンではCFO$「Break Away」が採用された(この楽曲はWWEのスター選手アダム・ローズの入場曲としてよく知られている)。尚、セネターズは試合中に流された楽曲のプレイリストをオフィシャルサイト上で公開している数少ないチームのひとつとしても知られている。

 

 

ウィニペグ・ジェッツ

ウィニペグ・ジェッツは、アトランタ・スラッシャーズとして12シーズンを送ったあと、2011-12シーズンからNHLに復帰した。ウィニペグ市民はチームの帰還を喜び、当時のYouTube上には数多くのオリジナル楽曲パロディ楽曲が投稿された。2016-17シーズンからはTrevor Olfertが新しいオルガン奏者として参加しており、同時にジェッツのホームゲームが開催されているMTS Centre内のオルガンも新調された。

 

ジェッツが勝利した試合では、Rockin’ 1000がカバーしたFoo Fighters「Learn To Fly」と共にファンが余韻にひたっている。また、ジェッツはElton Johnのヒット曲「Benny & The Jets」を好んでおり、この楽曲をアトランタ移転前の最後のホームゲームで流した他、チームのオリジナルマスコットの名前をBennyと名付けている。尚、ジェッツはNHLで最も奇妙な音楽史を持つチームで、1978年にスウェーデンのプログレッシブロックバンドBlommanが、ジェッツに捧げたアルバム『Om Jag Lira Munspel I Winnipeg Jets』をリリースしている。

 

ゴールソング:かつてジェッツは入場曲にVan Halen「Jump」を採用しており、この曲の採用を取りやめた際には、ファンから再採用を求める嘆願書が提出される騒ぎになった。しかし、どうやらチームはファンの声に耳を傾けていたようで、現在「Jump」は新ゴールソングに採用されている。以前は、Isley Brothers「Shout」、そしてそのさらに前にはRev Theory「Hell Yeah」が採用されていた。

 

 

ケベック・ノルディクス

 

ノルディクスのNHL復帰に関しては、様々な議論が重ねられ、数多くの嘆願書が出されてきたが、現時点では、1995年にケベックから移転して名前を変えたコロラド・アバランチが故郷に戻る予定はない。しかし、ケベック・ノルディクスには豊かな音楽史が残っている。1972年にリリースされたRichard Adamsのシングル「Les Nordiques (C'est Notre Équipe À Nous)」、1985年にリリースされた、試合中のサウンドがサンプリングされているMario Chénard & France Duvalのシンセポップチューン「Nordiques jusqu'au bout!」、そして1987年にLe Zooがリリースしたアンセム「Let’s Go Nordiques」など、チームへのトリビュートソングが数多くリリースされている。


 

ゴールソング:ノルディクスのゴールソングとして最も有名なのはGary Glitterのクラシック「Rock and Roll Part 2」だが、彼らはこの楽曲の特徴的なリズムセクションにゴールホーンのサウンドを組み込んだ素晴らしいリミックスバージョンを用意していた。またそれ以前は、オリジナル楽曲「Let’s Go Nordiques」を組み込んだ、印象的だがやや過剰にも感じられるゴールホーンも用意されていた。