八月 22

Gene Page:Motownが誇る天才アレンジャー

Gene Pageの名前は数多のクラシックなソウルレコードの輝きに穏やかな光を加えている。多作で知られたLA出身のこのアレンジャー(編曲家)はBarbra Streisand、Whitney Houston、Lionel Ritchieなどポップシーンの重鎮たちと仕事を重ねてきたが、ソウルミュージックの神殿にその名を永遠に刻むことになったのは、1960年代から1970年代にかけてBarry Whiteとコンビを組んでMotownからリリースした作品群だ。

By Zaid Mudhaffer

ストリングスを多用する彼のアレンジはMotownの魅力的なサウンドを定義付けたため、Dobie Greyがブレイクするきっかけになった「The In Crowd」など、当時Pageが手がけた作品すべてが、Berry Gordyが立ち上げたデトロイトが誇るヒット曲大量生産レーベルMotownの作品だと誤解される程だった。

1963年、PageはBob & Earlの「Harlem Shuffle」のレコーディングセッションでMarc Recordsを訪れた際に、テキサス州出身のシンガー/プロデューサーBarry Whiteに出会い、その後PageはWhiteとLove Unlimited Orchestraの数々のゴールド/プラチナアルバムに素晴らしいアレンジを提供することになった。Pierre Perroneは『The Independent』紙のPageへの追悼記事の中で、「Gene Pageは私の家族を養ってくれていた。家賃、ガソリン代、食事代を肩代わりしてくれたが、私がその分を彼に返金することはなかった。何度も返そうとしたが、彼は頑なに受け取らなかったのだ。私が大金を稼いだからと言って、別の人物を起用することはない。Barry WhiteとLove Unlimited Orchestraの名前には、彼の名前もついてくる」というBarry Whiteの言葉を引用している。

Pageは1972年、ソロアーティストとして映画『Blacula』のサウンドトラックを提供すると、その後1970年代中盤から後半にかけてAtlanticとAristaから一連のアルバムをリリースし、優秀なソロキャリアを築いたが、人々に記憶されているのは、アレンジャーとしてのPageである。今回は彼がアレンジを手がけた代表作を紹介する。


The Brothers & Sisters - The Times They Are A Changing

プロデューサー/作曲家のLou Adlerが、Merry ClaytonやEdna Wright などを集めて女性中心のゴスペルグループを結成し、Bob Dylanのゴスペルバージョンに取り組んだのがこの作品だ。ワンオフの企画だったこのアルバムはAdlerのOde Recordsから1969年に少数リリースされただけだったが、2014年にLight In The Atticから再発された。Adlerはこのアルバムを企画した理由について、「歌詞や精神性、フィールイングなどの部分でゴスペルらしさを見出したからだ」とコメントしている。

編曲と指揮を担当したPageは、 力強くDylanのメッセージを歌うゴスペルシンガーたちのハーモーニーに壮大でダイナミックな教会風の編成を組み合わせ、Adlerのコメントにあった要素を前面に押し出した。オープニングを飾るオルガンバージョンの「The Times They Are A Changing」の開放感がこのアルバムの持つパワーを如実に表している。


Smoke - Oh Love

Barry White作曲、Gene Page編曲のクロスオーバーソウルを1970年代初期に活躍したミステリアスなデュオが歌った1曲。1973年にLove Unlimitedが、そして1974年にはWhite自身もこの曲をリリースしているが、Smokeのバージョンは出色の出来となっている。アレンジャーとして各方面から常にオファーを受けていたPageだったが、裏方としての仕事だけに満足していた訳ではなく、1976年にライターDavid Nathanに次のように語っている。「アーティストとしての自分のキャリアに集中したい。自分を知ってもらいたいという意味では、ある意味エゴなのかもしれない。アレンジャーは認知されていない時がかなりあるからね」


Marvin Gaye - Main Theme from Trouble Man

Motownのアレンジャーとして安定した立場を築いていたPageは、Marvin Gayeの作品にも参加するようになり、アルバム『Let’s Get It On』収録の「Comet Get To This」ではDavid Van DePitteと共同でアレンジを担当している(尚、Pageは1974年にリリースされたライブアルバム『Marvin Gaye Live!』に収録されたオークランドでのライブの大半も担当している)。しかし、Gayeとの仕事の中で最も注目すべきは、Gayeが手がけたサウンドトラック『Trouble Man』で、Dale Oehlerがアレンジしたタイトなリズムとホーンと共にうねる、彼のストリングスは素晴らしいクオリティを誇っている。尚、1973年にはProphecyからリリースされたJackson Sistersのクラシック「I Believe in Miracles」の編曲を担当し、慣れ親しんだフィールドに戻ることになった。


Love Unlimited Orchestra - Strange Games and Things

1970年代中盤に入ると、WhiteとPageはスタジオワークを中心に活動し、Gloria Scott、Tom Brock、Danny Pearsonなどに素晴らしい楽曲を提供した。その中でこの「Strange Games and Things」はこのコンビのハイライトといえるもので、強烈なベース、魅力的で気の利いたストリングス、サウンドトラック的なフィーリング、スムースさとクールさ、そして力強いドラムと、最高級のインスト曲となっている。

1990年にはEPMDがこれを効果的にサンプリングし、「Manslaughter」をヒットさせた他、ロンドンで1980年代末から1990年代初期に放送された『Capital Rap Show』では、ホストTim Westwoodがヒップホップをプレイする間奏にこの楽曲を使用し、番組のトレードマークとなっていた。尚、この番組では当初Jay Deeが1974年にリリースしたアルバム『Come On in Love』の収録曲「Strange Funky Games and Things」のバージョンが使われていた。これもWhite/Pageコンビファンにはマストアイテムと言えるだろう。



仕事に対する熱心な姿勢を崩さなかったGene Pageは、1980年代に入ると、Jermaine Jacksonのスウィートなレアグルーヴシングル「You Like Me Don’t You」やLeon Wareのアルバム『Rockin’ You Eternally』などのストリングスアレンジを手開けた。1982年に彼が手がけた作品の中で傑出している作品が、レーベルStaxのレジェンドで、キャリアを通じてR&Bからディスコに至るまで数多くの作品を残したJohnnie Taylerの「What About My Love」だ。Taylorのキャリアでは衰退期に当たるが、ここではストリングスとホーンが感情豊かに訴えかけるスタイリッシュなミッドテンポモダンソウルに恵まれている。この楽曲は後にUKのハウスデュオShapeshiftersに再評価され、2004年の大ヒット「Lola’s Theme」でサンプルが使用された。