六月 23

バック・トゥ・ザ・フューチャー・インストゥルメント

過去に製作された未来の楽器を紹介

By Sophie Weiner

 

ピアノ、ギター、Roland 808ほどの人気と知名度を獲得した楽器は少ない。今回は様々な理由からそこまでの人気を獲得できなかった未来的な楽器を紹介する。

 

Intonarumori(1910年) 

 

 「最も不快で奇妙で耳障りなサウンド」を生み出す「騒音芸術」を掲げていたイタリアのフルート奏者Luigi Russoloは、世界初のノイズアーティストだったのかも知れない。そのRussoloが開発した音響ドローン楽器Intonarumori(イントナルモーリ)は内部で発生するサウンドを増幅する数々のホーンが備わっているボックス型の楽器だが、1917年のIntonarumoriのオーケストラによる演奏は暴動が起きる騒ぎとなった。Russoloの未来的思考に音楽ファンはついていけなかったのだろう。

 

Ondes Martenot(1928年)

 フランス人の電気技師・発明家だったMaurice MartenotによってデザインされたOndes Martenot(オンド・マルトノ)は歴史に埋もれて見過ごされることが多い最初期の電子楽器のひとつだ。テルミンのように周波数を使用するが、Ondes Martenotの方が先進的で演奏も簡単だという意見もある。その不気味な音色はRadioheadのギタリスト、Jonny Greenwoodの現代音楽作品の中で聴くことができる。

 

Rhythmicon(1931年)

  

世界初のドラムマシンとして知られるRhthmiconは米国人の音楽理論家・実験音楽作曲家のHenry Cowellがテルミンの生みの親Léon Thereminと共同開発した楽器だ。Rhythmiconは16種類のリズムを組むことが可能で、鍵盤でパターンをトリガーするという仕組みになっていた。後発のドラムマシンとは異なりRhythmiconは音階の数学的比率に基づいて異なったトーンのループを演奏する。これまでに3台しか製作されておらず、現存するのは2台だけとなっている。

 

Cristal Baschet(1952年)

Cristal Baschetはサウンド(ノイズ)を生み出す数々の芸術作品を生み出してきたフランス人アーティストFrançois BaschetとBernard Baschetの兄弟が製作した楽器で、長さ、重さ、位置が異なる金属とガラス製のロッドが備わっており、水で濡らした指でガラス製のロッドの上をなぞることでサウンドが生み出される。また、奇妙だが美しい巨大なグラスファイバー製のコーンによってそのサウンドが増幅される。ミュージック・コンクレートがフランスで台頭した時代に製作された「アヴァンギャルド」な1台だ。

 

EKO ComputeRhythm(1972年) 

誰もがRoland TR-808は知っていると思うが、それよりも高額で取り引きされているヴィンテージドラムマシンEKO ComputeRhythmを知っている人は少ないだろう。このクラシックなアナログドラムマシンは大量のボタンが配置されていたことが先進的だと評価されたが、実際はパンチカードを使ってビートをプログラムする。販売台数は20台にも達しなかったが、CoputeRhythmのサウンドはJean-MIchel JarreはManuel Göttschingのアルバムに使用されており、エレクトロニック・ミュージックファンの間では伝説の機材のひとつとして知られている。

 

Laser Harp(1981年) 

 

美しいLaser Harpは細かいレーザーを扇状に投射し、そのレーザーを手で遮ったり、止めたりすることで演奏する。この基礎を応用したLaser Harpのプログラミングは無数に存在する。Laser Harp奏者としてはJean-Michel Jarreが最も有名だが、他にも数多くのアーティストたちが独自のプログラミングを通じて実験を行っている。メインストリームではブレイクしなかったが、近年はBurning Manなどのフェスティバルでインタラクティブ・インスタレーションとして展示されることが多く、それなりの知名度を獲得している。

 

Casio DG-20(1987年)

1980年代後半にギターとシンセサイザーのテクノロジーを統合しようというCasioのアイディアによって生み出されたのがこの奇妙なハイブリッド・ギターだ。MIDIデータを送信するため、MIDIコントローラとしてシンセサイザーのプログラムも行える。しかし、プログラミング能力が低く、プリセットサウンドの質も悪かったため、ユーザーからの評価は「何の役にも立たない」という芳しくないものだった。最近もCasioのウェブサイト上であるユーザーが「これまで出会った中で最も馬鹿げている楽器のひとつ」と酷評した。言うまでもなく、DG-20は多くの人たちに忘れられている。

 

Zeusaphone(2007年)

 

サウンドを奏でるテスラコイルとしては仰々しい名前(ゼウス)が付けられているZeusaphoneのコイルは、通常のテスラコイルとは異なり放電と同時にエレクトロニックサウンドを発生させる。テスラコイル自体は19世紀末から存在するが、Zeusaphoneはディストピア的な未来からやってきた楽器のように見え、演奏と同時に派手な放電が行われる。Scott Coppersmithが開発したバージョンにはMIDIが組み込まれており、シンセサイザーと同様にプログラミングが可能だ。

 

オタマトーン(2009年)

音符の別称「おたまじゃくし」から名前が取られているオタマトーンは、シッポスイッチと呼ばれる柄の部分を上下に指でなぞったり、つまんだりすることでテルミンのようなサウンドが生まれる。お口と呼ばれる部分を開閉させればワウペダルのようなニュアンスも得られる他、背面のスイッチでオクターブも変更できる。未来を作り出した楽器とは言えないが、YouTubeなどに様々な映像が投稿されることになった。


 

イラスト:Loren Purcell