四月 11

ヒップホップに愛されたスポーツチーム10

ヒップホップシーンに愛されたスポーツチームを10紹介する。

アトランタ出身のラッパーYoung ThugとBloody Jayは、『Black Portland』と名付けられたミックステープをリリースしたことで、「ラッパーはスポーツ好き」というトピックに再びライトを当てた。Kurtis Blowとヒット曲「Basketball」、スラムダンクコンテストのDrake、Eazy-EとRaiders、またはRichard ShermanのNFCチャンピオンシップ後のバトルラップ宣言に至るまで、ラップとスポーツの関係は長く、そして深い。ヒップホップがサブカルチャーからメインストリームへと変わると同時に、スポーツにおける影響もまた大きくなっていった。そのため、ラッパーたちは事あるごとに贔屓のチームを賞賛している。以下にかなり主観的ではあるが、ヒップホップシーンで最も愛されてきた10のチームを紹介する。



Los Angeles Raiders
1982年にOakland RaidersがLos Angelesに本拠地を移し、Los Angeles Raidersへ生まれ変わったことは、全員に歓迎された訳ではなかったにせよ、「ワル」という価値観においては「最高」の事件となり、Raidersは移転から数年後、スーパーボウルを制すなどの活躍を見せ、そのギャング的なイメージと共にLAを代表する存在になった。スター選手Marcus Allen率いる荒々しい攻撃と強固なディフェンス、そしてNFL史上最高に「ワルい」チームロゴを擁したRaidersは、ギャングスタラップに数多く組み込まれることになり、1987年頃にN.W.A.がシーンに台頭すると、彼らが身に着けていたRaidersの白と黒を基調にしたキャップは、ユニークなサウンドと共に彼らのトレードマークとなった。尚、Ice CubeはESPNのドキュメンタリーシリーズ『ESPN 30 for 30』の中で、「俺たちはRaidersがアメフトチーム以上の存在になる手助けをしたんだ」と振り返っている。

代表的なリリック
“If you’re talking shit about the n****s in black / Bow down to the Kings and Raiders hat” -N.W.A. 「Real N****z



Michigan Wolverines
Chris Webber、Jalen Rose、Juwan Howard、Ray Jackson、Jimmy Kingの5人が1991年にミシガン大学のバスケットボール部に全米期待の新人として入部した際、確かなことが2つあった。ひとつは彼らが優れたバスケットボール選手だということ、そしてもうひとつは彼らがオールドスクールなタイトなユニフォームを着ることはないということだった。ヒップホップが一大ブームとなっていた当時、この5人(通称Fab Five)は古い慣習に縛られず、ストリート感覚あふれる自分たちのスタイルをデューク大学が支配していたカレッジバスケットボールの世界に持ち込んだ。Fab Fiveは自分たちがコートに向かうまでの間にヘッドフォンで聴いていたヒップホップ同様、1年目から恐れ知らずの堂々としたプレーを披露した。ヒップホップが若者のカルチャーとしてメインストリームに台頭したのと同様、彼らは世代交代を起こしたのだ。Fab Fiveという愛称は当時のMTVの人気番組『Yo! MTV Raps』のホスト、Fab Five Freddyにルーツがあるのかも知れないが、5人のバスケットボール選手としてのFab Fiveという名前はヒップホップシーンに大きなインパクトを与え、Boot Camp ClikのHeltah SkeltahやO.G.C.などによる数々のラップに彼らの名前が使用された。尚、Chris Webberに至っては、のちにNasの「Blunt Ashes」のプロデュースを担当。Nasの代表曲を創出に貢献した。

代表的なリリック
“All of my n****s fresh men like the Fab Five” - Rockie Fresh 「Never Never



Portland Trail Blazers
アトランタ出身のYoung ThugとBloody Jayは、若さとハングリーなプレーから近年「Black Portland」という愛称で親しまれているNBAウェスタン・カンファレンスのPortland Trail Blazersに捧げる共作のミックステープをリリースしている。アトランタ出身の彼らが何故ポートランドを選んだのかという点について、Bloody Jayは『The Fader』誌のインタビューで「同じ場所にずっといると退屈してしまう子供のような自分の気持ち、それがBlack Portlandなんだ。自分の部屋の窓に差し込んできた光が彼らなのさ」と説明している。曖昧な表現ではあるが、ThugとJayにとってBlack Portlandは、ユニークなラップスタイルで爆発的な人気を得た彼らと同じ「新しい風」なのだ。そしてJayはこうも言っている。「みんなの心の中にもBlack Portlandがいるのさ」

代表的なリリック
Damian Lillard



Georgetown Hoyas
カレッジバスケットボールのGeorgetown Hoyasは、Big Boiに「Bulldoggin’ Hoes」と呼ばれるよりも遥か昔の1980年初頭から中盤にかけて、その力強いプレーから「Beast of the East」と呼ばれていた。選手全員が黒人という稀有なチームだったHoyasは、黒人男性のマッチョなイメージのステレオタイプとして扱われていたが、彼らはそのイメージを意図的に利用し、メディアや対戦相手を困らせていた。Todd Boydは著作『Young, Black, Rich & Famous』の中で、Patrick Ewingを中心とし、アグレッシヴで力強く堂々としたプレーが売りだった当時のGeorgetown Hoyasを「アメリカ最悪の悪夢」と表現している。彼らが生み出した「Hoyas Paranoia」と呼ばれた現象は、ある意味Public Enemyがこの数年後に掲げたテーマ/アルバム『Fear of a black planet』の先駆けだったと言えるだろう。またジョージタウン大学はJay-Zを講師に迎えた「都市神義論」の授業が設けられている大学でもあり、近い将来NBAだけでなく、ヒップホップのMVPも輩出する可能性がある。

代表的なリリック
“ATL, Georgia, what do we do for ya / Bulldoggin’ hoes like them Georgetown Hoyas” - Big Boi / Outkast「Rosa Parks」



Philadelphia Iversons
既存の流れを変えたNBA選手は誰かと言われれば、それは180cmそこそこしかないストリートバスケの選手たちにNBA入りの夢を与え、たったひとりで76ersを強豪チームへと育て上げたAllan Iversonになるだろう。バギーパンツ、タトゥー(Mobb Deepの掲げたダーウィンの進化論からの言葉『Only the strong survive』などが彫り込まれている)、コーンロウ、ドゥーラグ、貴金属などを身に着けていたIversonは、そのライフスタイルと共に90年代中盤にヒップホップがアメリカのメインストリームから世界のメインストリームへと変わっていった第2次ヒップホップブームのアイコンとして扱われた。Iversonはそのルックスと言動からヒップホップとは対極に位置する価値観を持つNBAコミッショナーDavid Sternから人種差別的な扱いを受けることもあったが、貧乏な生活からMVPまで上り詰めたキャリア、反権威主義的で挑戦的な態度、そして闘争心むき出しの姿勢は、既にヒップホップが生活に根付いており、ヒップホップを「悪」と考えない層からは究極のロールモデルとして崇められた。尚、IversonはJewelz名義でラッパーとしても活躍したが、彼のリリックを「下品で攻撃的で、非社会的だ」と非難したSternによってアルバムリリースは差し止められている。

代表的なリリック
“This n**** Ike with the Iverson jersey, light-skinned with herpes” – Nas「What Goes Around」より



New York Giants
結局のところKnicksは無視されたということなのだろうか? Knicksはニューヨークシティを代表するスポーツチームであり、「We Fly High」は彼らのアンセムとして扱われるべきトラックだった。しかし、Isiah Thomasがチームプレジデントを務めていた2006年のKnicksはバスケットボールだけに集中しているのを尻目に、Giantsではディフェンシブラインがジャンプショットの真似るパフォーマンスなどでサックを喜ぶなど、派手なシーズンを送っていたため、Jim JonesのリミックスはGiantsに捧げられた。ちなみに、もしパラレルワールドが存在するのであれば、このリミックスはAllan Houstonへ捧げられていたかもしれない。年俸2000万ドルをもらいながら1試合も出場しなかった彼は、別の意味でNBAを体現していたからだ。尚、Giantsはニューヨークのヒップホップシーンにおける覇権争いにおいて最初からアドバンテージを持っていると言える。なぜなら、Big PunやM.O.PがKnickerbockersやYankees、Jets、Rangersなどのオールドスクールなチーム名を冠したトラックを制作するとは到底思えないからだ。

代表的なリリック
“Ballin’!” - Jim Jones「We Fly High」



Houston Astros
ヒューストンで00年台中盤にラップがリバイバルヒットしたタイミングで、地元のベースボールチームHouston Astrosが球団創設以来初となる大活躍をしたというのはラッキーな偶然だったのかも知れない。地元出身のChamilionaireとPaul Wallは、そのAstrosの活躍に影響され、自分たちのリミックス(「Turn It Up」と「They Don’t Know」)をAstrosに捧げたが、Astrosはその後また低迷し、噂ではLil Flipも100敗以上を喫したシーズンで愛用のレトロユニフォームを着るのを止めたと言われている。何故ヒューストンのヒップホップシーンがAstrosではなくHouston Rocketsをサポートしないのか、そして80年代のAstrosの奪三振王J.R. Richardの名前を持ち出さないのかは明らかになっていない。

代表的なリリック
“So I creep, the Astros got beat / The next week, St. Louis got sweeped” - Lil’ Flip「Remember Me



St. Louis Cardinals
Nellyが率いるSt. Lunaticsはあまりにも雑すぎて逆に良いとさえ思える。安っぽいセックスのメタファーを小学生レベルでベースボールに結びつけたこの曲は評価に値する。Mark McGwireの最後のシーズンであったにも関わらず、彼らはこのトラック「Batter Up」に自分たちの生活を盛り込まず抽象的なリリックに終始した。一方、McGwireの後継者(ステロイド率は低い)Albert Pujolsは、その苗字のインパクトと、ずば抜けた打率で全米のラッパーに好まれて使用されることになった。

代表的なリリック
“All of us would be angels for Pujols’ bread” - Joe Budden / Slaughterhouse 「Hammer Dance



Brooklyn Dodgers
Jay ZがBrooklyn Dodgersの伝説のヒーローJackie Robinsonについて書いたリリックは、3重の意味が含まれているという意味でヒップホップシーン唯一無比のクオリティを誇る。特に「I JACK, I rob, I sin / Amen I’m JACKie Robinson /  Except when I run base, I DODGE the pen」というリリックの最後のパートは、「ドラッグ売買をしながら刑務所行きを逃れた」やり手のサグと、「リリックを文字として書き起こさない」天性の即興能力を持つラッパーという、Jay Zの二面性を表すのと同時に、俊足を誇ったJackieも表している。Jackieに関しては、野球関係者の方が正確に表現できたかもしれないが、Jay Zは彼を題材に見事なリリックを披露した。またDodgersはChubb Rockの「The Return of the Crooklyn Dodgers」や、Masta Aceの「Crooklyn Dodgers」にも用いられており、Dodgersはヒップホップシーンに残る偉大な2曲にインスピレーションを与えたと言えるだろう。

代表的なリリック
“I jack, I rob, I sin / Amen, I’m Jackie Robinson / Except when I run base, I dodge the pen” - Jay Z「Brooklyn (Go Hard)」



Pittsburgh Steelers
ピッツバーグ出身のラッパーの数が少ないのは残念な話だ。もしその数が多かったらWiz KhalifaにSteelersファンの代表を任せなくても済んだだろう。Jerome “The Bus” Bettis、Kordell “Slash” Stewart、Troy Plamaluのような偉大な選手たちの代表にはマリファナ漬けの彼よりも立派な人物がふさわしい。とは言え、Khalifaの「Black & Yellow」のクオリティは素晴らしく高く、スポーツチームを応援するラッパーたちによって大量にリメイクされることになった。

代表的なリリック
“Reppin’ in my town, when you see me you know everything / Black and yellow, black and yellow” - Wiz Khalifa「Black & Yellow



殿堂入り

Los Angeles Lakers
Los Angeles Lakersはプロスポーツ界で最悪のラッパーを輩出したチームだ。Kobe Bryant、Shaquille O’Neal、Ron Artest、Nick Young、そして彼らを忘れてはならないだろう。しかし、Lakersは懲りておらず、何回もラップ界に登場している。これはSnoop Doggに責任があると言ってしまって構わないだろう。

代表的なリリック
“Everybody in the world fuckin’ hates the Lakers” - Chance The Rapper「Juice

The New York Yankees Cap
ヒップホップにおいて、Yankeesの人気はキャップに依るところが大きい。NYのロゴは笑える程数多くのラッパーの額に輝いてきたが、チーム自体への愛はキャップに対するそれを上回らない場合が多い。Yankeesは約20年に渡りDerek Jeterなどを広告塔に使い続けているため、ラッパーたちがチームに対して愛情が持てなくなっても仕方ないだろう。

代表的なリリック
“I made the Yankee hat more famous than a Yankee can” - Jay Z 「Empire State of Mind