二月 17

EVENT REPORT : RED BULL MUSIC ACADEMY WORKSHOP SESSION @ KYOTO METRO

by 久保 憲司

 

フリースタイル・テクノ・ジャムバンド「Cobblestone Jazz」の一員でもあり、ヴィンテージのアナログシンセサイザーを駆使したミニマル/テクノのパイオニア、マシュー・ジョンソンが、日本のテクノの先駆者サワサキヨシヒロとモジュラーシンセサイザー奏者であり、京都精華大学で音楽も教える西田彩氏と共に京都、メトロでシンセサイザーのレクチャーをしてくれた。

 

 

東京よりも参加者に女性が多いなと感じたのは、日本のシンセの聖地関西だからだろうか、それとも本当にシンセサイザー・ブームが来ているのだろうか!?

 

「シンセを触っているとどんな音でも出せるような気がする」とサワサキさんが語っていたが、シンセサイザーとはそんな気持ちにさせてくれる夢の楽器だ。でも買ってみると、使い方がよく分からず部屋の片隅で埋もれてしまっている。

 

 

「アナログのシンセサイザーを使い出したころは2、3年間どうしていいか分からなかった」とマシュー・ジョンソンは言った。天才マシューでも、そうなんだから、ぼくもホコリをかぶっているシンセサイザーを引っ張りだそうと思っていると、ローランドの新しいリズムマシーンTR-8とローランドの古いシンセサイザーSH-101を使って、普段どうやって楽曲を作っているか実演してくれた。5音打ち込んだだけで、すごいファンキーなフレーズが鳴り出した。

 

「リムズマシーンのトリガーを利用して、SH-101についているシンプルなシーケンサーで記憶した音を鳴らしているんだ」とのことだが、僕にも出来そうなシンプルなテクニックだ。

 

「僕のスタジオには何十台ものヴィンテージのシンセサイザーがあるから、Cobblestone Jazzのメンバーとそれらを使って録音すれば、すごい音楽が出来るだろうと思ったんだけど、普段のステージ以上の音楽は作れなかった。機材がたくさんあるからいいと言うわけではないんだ」そんなに機材を持っていないであろう参加者たちを喜ばせてくれることを言う。

 

 

 

マシューはSH-101のノブを色々と触りまくる。フレーズがどんどんと変化していく、これがマシューのセンスなのだろう。あんなにシンセのノブを触る人は見たことない。この辺のアナログシンセの音作りというか、テクニックに関するマシューの考え方もレクチャーして欲しかったが、今回はマシュー・ジョンソンの曲作りの第一歩を見せてもらえたということだろう。

 

 

「あなたの音楽は永遠と打ち寄せる波のようなだ」と参加者の一人が言っていた。今回のレクチャーで、そんな彼の音楽の秘密のレシピまではわからなかったが、彼の音楽がなぜ自然のように自由なのかは分かった気がする。彼はシンセサイザーと言うクラシック奏者から見たら「そんなの楽器じゃないよ」と言われがちな機材を、バイオリンやフルートと同じような楽器として愛している。きっとそれがマシュー・ジョンソンの音楽の一番の秘密じゃないだろうか。

 

 

ぼくが彼のようにシンセサイザーを愛せるかどうか分からないが、今回マシュー・ジョンソンのレクチャーを体験して、もっとシンセサイザーを触りまくろうと思った。「シンセの音作りに時間をかけるより、プリセット音でどんどんと曲作りをしたい」と質問を投げかける人もいた。確かに今のソフト・シンセには使いきれないほどの音色がプリセットされている。シンセを触るより、これらの音を組み合わせ自分の世界を作ることは一番の早道かもしれない。でも、マシューが言っていた「何年間か何をやっているのか全く分からなかった」と言う時間が、きっと役に立つ日がくると思う。ぼくはマシュー・ジョンソンに人生にとって何が一番大事かも教えてもらったような気もする。

 

『Red Bull Music Academy Workshop Session feat. メトロ大學/講師:MATHEW JONSON』
日時: 2016年2月13日(土)
会場: 京都METRO 

講師: MATHEW JONSON
Guest Speaker: サワサキヨシヒロ
Guest interviewer: 西田彩(音楽家・モジュラーシンセサイザー奏者・京都精華大学 非常勤講師)

 

 

久保 憲司 1981年に単身渡英し、フォトグラファーとしてのキャリアをスタート。ロッキング・オンなど、国内外の音楽誌を中心にロック・フォトグラファー、ロック・ジャーナリストとして精力的に活動中。また、海外から有名DJを数多く招聘するなど、日本のクラブ・ミュージック・シーンの基礎を築くことにも貢献した。著書久保憲司写真集『loaded(ローデッド)』『ダンス・ドラッグ・ロックンロール 〜誰も知らなかった音楽史〜』『ダンス・ドラッグ・ロックンロール 2 ~"写真で見る"もうひとつの音楽史』、『ザ・ストーン・ローゼズ ロックを変えた1枚のアルバム』など。 メルマガ 久保憲司のロック・エンサイクロペディア http://www.targma.jp/rock