七月 04

DJs’ BPM Part 2

2010年代以降、DJセットのBPMの幅がさらなる広がりを見せている。BPM120台の外側を模索するDJたちのBPM論を2回に分けて紹介する

By Gabriel Szatan

 

BPM128はマジックナンバーと言われている。なぜか? 平常時の人間の心拍数の約2倍のこのスピードで刻まれるキックはほぼすべてのダンサーのニーズに応えてくれる。多くの人たちにとっての「適温」なのだ。

 

また、慣習を打破することへの忌避感もこのマジックナンバーを生み出している要因のひとつだ。ハウスとテクノが誕生して以来、ダンスフロアはこのBPMを中心にしたピッチスライダーの範囲内に惹かれ続けてきた。

 

では、このマジックナンバーからBPMを30・40・50・60ほど上下させたらどうなるのだろうか?

 

BPM120台の外側に位置するDJたちのBPM論を紹介する全2回シリーズの後半は、Miss Djax、Mark Barrott、Hixxy、Alicia Carrera、 Limewax、Yoji Biomehanika、Shawn O’Sullivan、Don’t DJを取り上げる。

 

Part 1はこちら>>

 

 

 

Miss Djax

 

BPM:145+

SoundCloud 

 

わたしは未だに2台のTechnics SLとヴァイナルでDJをしているから、デジタルDJのようなツールを使っていない。BPMを高めていけばピークタイムが作れるっていうシンプルな話じゃない。オーディエンスのムードを掴み、それをDJプレイに反映させるためには第六感のようなものが必要になる。

 

わたしは2つのアシッドラインをゆっくりミックスしたり、ロングブレイクからキックを戻したりするようなプレイが好きだけど、モニターが粗悪な時や、ターンテーブルのセットアップが不安定な時、次にプレイするDJがラップトップやコントローラーの準備をしていてブースの中が落ち着かない時は、ショートミックスをするようにしているわ。

 

1990年代のレイブのBPMはとても速かった。170以上あったと思う。その中でわたしはBPM150~155くらいでプレイしていたんだけど、当時プレイしていたレコードの大半は、ピッチを+8にしてもそのBPMに届かなかった。だから、ターンテーブルをスクリュードライバーで開けて、自分のセットの前にピッチを+16まで変えられるようにピッチコントローラーを改造した。33RPMのヴァイナルを45RPMでプレイする時もあった。

 

1996年にThomas Gottschalkがホストしていたドイツの有名なテレビ番組のオープニングDJをすることになって、1曲目にPlastikman「Spastik」をプレイしたんだけど、45RPMに変えてピッチコントローラーを-8でプレイした。Plus 8のヴァイナルを-8でプレイしたのは笑えたわね。

 

テクノのBPMが遅くなり、サウンドがよりミニマルになっていっても、わたしはハードアシッドをプレイし続けた。2008年からハードテクノシーンでまた受け容れてもらえるようになった。今は多くのテクノDJがまたハードなプレイをするようになっている。わたしはトレンドを追わない。自分らしいレアでスペシャルなヴァイナルを正しいタイミングと順番でプレイしていくことをわたしは最重要視している。

 

 

Mark Barrott

 

BPM:70 - 105

SoundCloud

 

僕はひとつのヴェニューでギグの大半をこなしている。イビサのLa Torreのサンセットの時間帯が僕のレジデントスロットだ。このスロットには6つの時間帯に分けることができる。

 

スロットが長い時は ― そうじゃない時もあるけれど ― 遅いBPMからスタートする。なるべく静かさを楽しむようにしている。インドの伝統音楽を入れたり、鳥の鳴き声を入れたり、トラック間に空白を設けたりして、静かに進めていく。

 

2つ目の時間帯は当然BPMを速めていくわけだけど、僕のプレイスタイルではBPMと強度はイコールじゃない。BPMはあくまで数字だ。シンコペーションをはじめとする他の音楽的要素がトラックをBPMよりもゆっくり聴かせたり、速く聴かせたりする。フロアのエナジーレベルのビルドアップもここを意識する必要がある。

 

次は変化の時間帯だ。日没の20~30分前はエナジーをピークに高めていく必要がある。この時間帯はドラマ性を意識してプレイしている。プレイ中に太陽が目の前にあるなら、目の前の風景のサウンドトラックを提供しているのと同じだ。オーディエンスの多くにその “映像” を楽しんでもらえるように持って行く必要があるわけだけど、そのためのトリックがいくつかある。

 

僕は音楽を止めて、雷鳴を轟かせることがあるんだ。するとオーディエンスは夢から目覚め始める。「大きな青空が広がっているのに、なんだって雷の音を鳴らしているんだ?」と思うんだよ。でも、こう思わせることができれば、こちらに意識を向けさせることができる。

 

第4の時間帯は日没だ。太陽が海に沈むまでの数分に向けてクライマックスを作っていく。この時間帯は尺が短いトラックを組み合わせることを強く意識している。ドラマと至福の瞬間を味わってもらうためにちょっとした交響曲を作っていくんだ。サンセットは1日ずつ異なる。そういうユニークなタイミングを迎えているオーディエンスのエモーションにマッチすることを強く意識していく必要がある。大抵は上手く演出できるけれど、さらにマジカルな瞬間を演出できる時がある。涙が出てきてしまうような瞬間をね。

 

第5の時間帯はそれまでのテンションを解放する時間帯で、そして最後、第6の時間帯はトワイライト — 黄昏 — と呼んでいる。様々なトラックをプレイして大きくビルドアップしたあとだから、ここでは各トラックにフォーカスしたプレイをする。また、夜に向かっていくわけだから、論理的なプレイよりも感覚的なプレイをするようにしている。これが僕の「サンセットDJ」だ。

 

 

 

"DJっていうのはコミュニケーションとエモーションを扱う仕事だ。その場のフードやドリンク、景色や人と音楽を組み合わせて、オーディエンスの体験を拡張していく"

 

 

 

僕はDJとはこういう要素をすべて組み合わせたものだと思っている。だから、変化球を織り交ぜるつもりなら、セット全体の中で機能させることを考えるべきだと思う。

 

1950年代からラジオ番組が使い続けているひとつの心理的トリックを紹介すると、あるトラックをヒットさせたい時、彼らはその前後にいたって普通のトラックをプレイするんだ。「平均的なレコード」の中で、ひとつの焦点として用意されるトラックがヒットするのさ。

 

僕のプレイもこういう感じなんだ。自分がどういう方向でプレイしたいのかが把握できていれば、トラック単位ではなくてプレイ全体を俯瞰できるから、そのような変化球も加えられる。そして、オーディエンスがその場にいるなら、彼らとゆっくりとエナジーをやりとりしていくことになる。

 

僕はダンスDJになれるほどの自信や忍耐力がない。僕が言うダンスDJっていうのは、BPM115以上のダンサブルなビートをプレイするDJのことさ。DJ HarveyのようなDJはオーディエンスを絶頂に導き、その状態をひたすら維持したあと一気に解放できる。

 

ファッション関係のパーティで何回かプレイした経験があるけれど、30分でピークに持って行ってくれと頼まれた。そういうプレイを僕はとてもクリシェに感じたよ。

 

アップテンポなトラックをプレイしていて、フロアからオーディエンスがいなくなっている時にやれることは沢山ある。でも、僕にできることは少ない。Grace JonesのBサイドか、Trevor Hornのトラックか、オーディエンスが良く知っているトラックのロングイントロくらいだ。そして点滅するCDJのディスプレイを時限爆弾のように感じてしまう。「どうしよう! 次に何をプレイしたら良いんだ?」とね。

 

でも、スローペースでプレイしている時の僕は、次に何をプレイしたら良いのかが直感で分かる。疑念やストレス、プレッシャーは一切感じない。

 

DJっていうのはコミュニケーションとエモーションを扱う仕事だ。また、僕のようなスタイルに限って言えば、エンターテイナー的催眠術師でもある。その場のフードやドリンク、景色や人と音楽を組み合わせて、オーディエンスの体験を拡張していく。そうやって僕たちが作り上げたサウンドトラックを聴いたオーディエンスは、スペシャルな思い出と共に家に帰れるんだ。

 

 

Hixxy 

 

BPM:165 - 200

SoundCloud 

 

長年、自分がなぜ特定のトラックを好んでいるのかを具体的に説明することができなかった。だから、自分の感覚をより強く信用するようになっていったんだ。

 

俺は長い間、BPM180以上のトラックをプレイしたことがなかった。だが、SefaやLil Texasのトラックを知って、もう少しBPMを高めてみようという気持ちになった。だから今はもう何でもありさ。もちろん、BPMが速すぎると自分の好みとは違う感じになる時もあるが、BPM190~200のメロディックな俺好みのトラックはこの世の中に数多く存在する。

 

最近のトラックの中には、グッドだがアレンジがいまいちなものがある。トラックの中にブレイクが多すぎるんだよ。キックが鳴っている時間よりブレイクの時間の方が長いんじゃないかと思うくらいな。

 

ブレイクが派手なトラックをプレイして、16小節のブレイク後にクラッシュを鳴らせばフロアを大きく盛り上げることができるから、DJセットに組み込むのは当然と言える。だが、オーディエンスがグルーヴに乗ってダンスするよりもそういうビッグブレイクを求めている状況で、30秒ごとにブレイクが入るようなトラックをプレイすればすべてが台無しになっちまう。

 

俺はオーディエンスが楽しんでいるトラックのフロウやリズムを壊しちまうような過剰に切り刻まれたプレイは好きじゃない。ブレイクでフロウが寸断されてしまえば、オーディエンスはあっという間に集中力を失う。年齢や好みが異なるオーディエンスが集まっているフロアで最大限の効果を生み出すためにはバランスがカギになる。

 

BPMに関する議論に終わりはないが、BPMがすべてを決めるとは思わない。悲しいかな、ハードコアシーンには常に批判がつきまとっているが、誕生から28年経った今も楽しめるマジックなトラックがある。ヒットした理由が完全に理解できる優れたトラックがあるのさ。ハードコアとハッピーハードコアのプロデューサーたちが作り出した素晴らしい珠玉の芸術作品が存在する。

 

そういうトラックの音楽性とヴォーカルの素晴らしさは、ハウスやガラージ、トランスのクラシックトラックに匹敵する。言っちまえば、それらとはBPMが違うだけなのさ。

 

 

Alicia Carrera

 

BPM:80 - 115

SoundCloud

 

わたしはバーやリスニングスペースでDJをスタートさせたから、レコードを良く理解している必要があった。状況を把握したり、直前にプレイしたレコードとの関係性を見つけたりすることが重要だった。

 

ビートマッチに慣れるのにはしばらく時間がかかった。なぜなら、わたしはリズムよりもメロディを聴いていたから。クラブでプレイするようになって、BPMで音楽を管理していくことの重要性が高まっていった。

 

ほとんどのクラブでエレクトロニック・ミュージックは画一化されている。オーディエンスはスローなリズムに慣れていないの。また、具体的な音楽を求めてクラブに来たわけではないオーディエンスが相手の時は、コミュニケーションを取れるようになるまで少し時間がかかる。

 

わたしはムード重視の重厚なプロダクションのトラックをプレイするのが好きなんだけど、ローファイなサウンドのトラックをプレイするのも楽しい。ビートレスなイントロやハイハットだけで次のトラックに上手く繋げる時がある。また、特定のサウンドやメロディ、ヴォーカル、美しいムードなど、具体的なテーマで繋がっているトラック同士を繊細にミックスしていけば、フロアにスムーズな変化を生み出せる。儀式的なパーカッショントラックはオーディエンスを日常とは異なる精神状態へ連れ出すことができる。どのような観点からミックスするにせよ、観点がぶれなければ、オーディエンスを催眠状態へ持ち込むことができるはずよ。

 

リズムは速い遅いを問わず、人間の身体と深く繋がっている。だから、催眠状態へ持ち込むまでの時間の長さを決めるのは、コンテキストやオーディエンスの感受性次第だと思う。オープンマインドで音楽が楽しめるようなリラックスした環境は、DJとオーディエンスの両方を満足させることが多い。そういう環境では、すべてが自発的かつユニークになっていくわ。

 

 

 

 

Limewax

 

BPM:175 - 185

SoundCloud

 

ハードなドラムンベースのオーディエンスは高速なプレイに慣れている。俺はそういうプレイに慣れていないが、最近は過剰で、速ければ何でも構わないレイブが開催されるようになっている。

 

レイブよりも規模が小さいギグではダイレクトなミックスをしているよ。ブレイクを避けて、ひたすらグルーヴをキープしようとしている。俺はトラックのプロダクションクオリティの違いを活用してDJセットの強度に変化を加えている。それでオーディエンスをコントロールしているんだ。同じマスタリングプロセスを経ていない多種多様なトラックをセットに組み込んでいるのさ。

 

昔みたいに後半へ向けて激しくビルドアップしていくプレイにはもう興味がない。昔はBPM200を超えるようなDJプレイをしたこともあったが、今ではもう考えられないね。俺は構成や形式が決まっていないプレイが好きだ。他とは違う大胆なプレイができるし、フロウを失うことなくBPMを下げることもできる。BPM140くらいでプレイを終える時もあるくらいだ。

 

1~2時間のスロットで30~70トラックはプレイしている。プレイするトラックはどれも最初から最後までプレイする価値があるものだけど、そうするかどうかは当日その場で判断している。

 

最近になってRekordboxを使うようになった。トラックメイカーはそのままプレイしてもらうことを意識して制作しているはずだけど、今はDJがトラックを自由に選んだり、飛ばしたり、無視したり、ループを組んだりできる。俺は元々DJをしない純粋なプロデューサーだったから、自分の好みに合わせてオリジナルを変えてしまうDJプレイには今も納得できていないところが多少あるね。

 

自分で納得できるDJプレイを手に入れるために試行錯誤してきた。その中で俺が特に気に入っているのが、「Flying Blind」という方法だ。トラック名や波形を覚えないようにする。つまり、トラックメイカーとその音楽的特徴をちゃんと覚えられるかどうかが、DJプレイの成功と失敗を分けるように自分を追い込むんだ。

 

DJをキャリアにしたい人にとってはリスキーな方法に思えるかもしれないけど、自分の心に忠実になって周囲の声を無視することが大事だってことを学んだよ。

 

 

Yoji Biomehanika

 

BPM:140 – 155

SoundCloud

 

プロデューサーからDJに進んだので、音楽的要素を組み合わせていくというイメージでした。ターンテーブルのピッチを変えてビートマッチやミックスできるようになるまでそこまで時間はかかりませんでしたね。各トラックのコード進行や展開を記憶する方が大変でした。僕はトラックのコードやキーを非常に重視しています。不協和音を避けているんです。キャリア30周年を迎えましたが、今も自分の中のパーフェクトを目指しているだけです。

 

僕は “ユーフォリック・ハードスタイル” と呼ばれているスタイルにのめりこんでいます。優雅なメロディとコードが特徴的なスタイルですね。ハードスタイルは急成長中で、BPM150オーバーのトラックがプレイされるフェスティバルに万単位で人が集まっています。ハードトランスのリバイバルも起きていますし、非常に興味深い時代を迎えていると思っています。

 

僕にとっては、BPMよりも音楽を通じて自分の世界観を共有したり、オーディエンスとの一体感を得たりする方が大事ですね。興奮に限界はないと思っています。僕がオーディエンスとストーリーを共有していけば、その場が大きく盛り上がっていく。どこでどう終わるのかは分かりません。とてもリアルでスリリングな体験です。高速の音楽はニュアンスが欠けていると思っている人は、多分最初に良い体験をしなかったんだろうと思います。

 

 

Shawn O’Sullivan

 

BPM:160 - 220

SoundCloud 

 

僕の好きなハードコア系サブジャンルではBPM160・180・200・220が大きな基準になっている。遅い方がドゥームコア、アシッドコア、フリーテクノで、速い方がブレイクコアやインダストリアルハードコア、スピードコアだね。

 

BPM250以上になるとちょっと馬鹿げた感じになってくるけれど、この問題を難なくクリアしているアーティストは多い。

 

大体、ハードコアを求めているオーディエンスが相手なら、フロアコントロールに関してはさほど心配する必要はない。彼らは激しいBPMに痛めつけられる準備ができているからね。

 

ハードコアは最近のテクノオフシュート系サウンドよりも、クイックなカットインやテンポチェンジ、急激な変化を加えやすい。僕はDJスキルに秀でているわけではないけれど、それでもハードなトラックをプレイしている時はベーシックなカッティングやバックスピン、ちょっとしたトリックなどを加えるのを楽しんでいる。ブレイクビーツ系をプレイしている時は特にね。

 

 

 

"2003年以前のハードコアはDJやクラブ向きの展開やマスタリングがされていないけれど、個性があるしバイタリティに溢れている"

 

 

 

ハードコア系のDJで一般的なテクノのような2分程使ってサウンドを重ねてミックスしようとすると、酷いサウンドになる。ハードコア系はサウンドが詰まっているし、予想外のタイミングでブレイクやヴォーカルサンプル、展開が鳴るから、他のトラックと上手く混ざらないんだ。ロングミックスしない方がダイナミクスを保てるし、ダンサーも踊れるんだ。

 

僕がプレイするトラックはほぼすべて2003年以前のハードコアだ。この時代のトラックはDJやクラブ向きの展開やマスタリングがされていないけれど、個性があるしバイタリティに溢れている。

 

激しさに関しても、僕はハードコアの耳障りでエクスペリメンタルなサウンドが好きだね。ダッチガバに魅力を感じたことは一度もない。Fischkopf、Hangars Liquides、Praxisのようなレーベルが好きだった。僕はかなり若い頃にMouse & No Nameで知られるMichelson姉妹(Stella & Poka)の音楽に出会ったんだ。この出会いで僕の脳は壊れてしまったのさ。

 

ハードコア人気が復活しつつあるのはクールだと思うけれど、音楽業界が死ぬ直前の断末魔をあげているような気がしてならないんだ。音楽業界がプロ化したことで、アーティストたちは簡単に売ることができる均一な音楽をプレイするようになった。そういう音楽への飽きがハードコアを魅力的な音楽に思わせているんじゃないかな。

 

でもやはり、こういう1990年代の音楽ジャンルの復活は、アンダーグラウンドシーンの “閉店大売り出し” のように思えてしまう。クラブの閉店、メディアの終了、シーンの飽和感や強欲さなど、最近の動向の多くは、2000年代初頭の米国で起きたレイブカルチャーの死を彷彿とさせる。今の状態が続くとは思えないね。まぁ、最近の僕はパンを焼いたり乳酸発酵食を作ったりする方が面白いと思っているけどね。

 

 

Don’t DJ

 

BPM:30 - 180

SoundCloud

 

この業界では我慢が大事だ。クラブに到着したらすぐサウンドチェックの予定だったのに、大きな問題が発生してエンジニアがまだ手こずっている。そして2時間後、ディナーの時間になってようやく準備が整う…。こういう経験をしているから、ベースを抜いてオーディエンスを引っ張るのがどうも気が引けてしまうのかもしれないな。

 

初期コラボレーション作品の頃は、細部について言い争っていたし、色々とフラストレーションを抱えていたが、Don’t DJ名義でプロデュース・リリース・DJをこなすようになってからは状況が大きく変わった。解放されたような感じだったし、そのリラックスした感覚を人生のあらゆる面で大事にしてきた。

 

俺は直感でプレイしている。あらかじめ決めておいたプレイリストをただなぞるだけなら、その退屈さが必ずオーディエンスに伝わり、全員にとって最悪の結果が訪れると思っている。そうするよりもテンポ、リズム、ドラマツルギーでリスクを負っていきたい。アンビエントやノイジーなテクスチャの中にも大きな変化を加えることができる。上手く隠すことができるんだ。

 

ミニマル&スローなプレイは非常に効果的だ。その瞬間を味わえるスペースが増える。ベルやドラムサウンドは、時間経過と共にどう変化していくのかが分かればもっと楽しくなる。また、緊張感やコントラストを落とし込める選択肢が増える。ビートやハイハットが詰まっているプレイでは中々できない。

 

もちろん、スローにプレイすればトラックを構成しているひとつひとつの要素が晒されることになるから、トラックの強度が弱いなら、ピッチを上げてプレイした方がベターかもしれないが、強度のあるサウンドをスローにプレイするのは最高だ。

 

音楽は人生の鑑だ。ある程度の我慢は自分のためになるが、ずっと待ち続けるのは馬鹿らしいので止めた方がいい。間違った列に並んでいる可能性があるって話さ。

 

 

Part 1はこちら>>

 

 

Header Image:© Johannes Ammler

 

05. July. 2019