十二月 20

Core Tex Records:ベルリンの反骨精神を支えた30年

ベルリンのパンク&ハードコアシーンを支え続けてきた老舗レコードショップのオーナーが地元・音楽業界・パンクの意味を語る

By David Strempel

 

David StrempelがベルリンのレコードショップCore Tex Recordsを初めて訪れた1980年代後半、彼はまだSuicidal Tendenciesのレコードと、自分と同じようにスケートボードとパンクが好きな仲間を探しているただの若者だった。そして1996年までにこのレコードショップで膨大な時間を過ごした彼は、その共同経営者のひとりとなった。スクワットが並び立っていた頃からクロイツベルクの一角に位置してきたCore Tex Recordsは、今もパンクとハードコアを好むベルリンの若者たちのデフォルトの集合場所として機能している。しかし、かつてはその無愛想ぶりが有名だったかもしれないが、Strempelが切り盛りする今は、音楽とビールが交流という名のギアに油を差し、パンクスがルックスではなくハートで語られていく、非常に居心地が良い空間になっている。

 

反骨の2文字がDNAに刻まれているドイツの首都を長年定点観測してきたStrempelが、Core Tex Recordsとの出会い、都市と音楽市場の変化、現代におけるパンクの意味などについてフォトエッセイ形式で語ってくれた。

 

 

 

 

俺たちはパンクとハードコアを扱うレコードショップで、通販もやっている。自分たちが好きな音楽を売っているんだ。2018年、俺たちは一度も破産することなく30周年を迎えることができた。経営陣もほとんど変わっていないし、閉店の危機に直面したこともない。Core Tex Recordsは1988年にオープンした。オープン当初は今とは少し違う場所、ここから数ブロック先にあった。パンクキッズだった俺はそこに通ってレコードを買っていたんだ。そして、1996年に2人のパートナーと組み、それまで働いていたスタッフと一緒に自分たちで経営を始めた。オーナーとしての俺とCore Tex Recordsの歴史は1996年から始まったのさ。笑えたのは、当時から両親や友人を含む全員が、上手くいかないだろうと言っていたことさ。

 

今振り返ると、彼らはある意味正しかった。7人で始めたのに今は3人しか残っていないからね。自営業が嫌だという理由で去った奴がいた。安定した収入が欲しかったのさ。いわゆる、9時~5時の仕事がしたかったんだ。他にも色々な理由があったが、とにかく今は3人しかいない。この3人でずっと続けていくことになると思う。

 

 

 

 

 

 

Core Tex Recordsで初めて買ったレコードは覚えていないが、当時の雰囲気は良く覚えている。自分が何者なのか、自分の立場をアピールしなければならない雰囲気があったんだ。覚悟して店内に入って、欲しいレコードだけを手に入れて、とっとと帰ったみたいな体験談は山ほど知っているよ。

 

俺も最初の頃は受け容れてもらえなかった。Suicidal Tendenciesのレコードを買おうとした時のことを良く覚えているよ。ショップにはそのレコードが数枚しか置かれていなかった。それで、その全てをシーンの重要人物かどこかのバンドメンバーが取り置いていたんだ。だから、置いてあるのに俺は買えなかった。当時の俺はそれが理解できなかった。目の前にあるのになんで買えないんだろうって思ったんだ。そのあとで、俺よりも常連の連中が本気でレコードが欲しがっているかどうかを判断していることを知ったんだ。顔なじみになれば、あとはコレクターズアイテムの限定カラーヴァイナルでさえ手に入るようになった。Core Tex Recordsに客として通っていた頃の思い出はこんな感じだ。

 

 

 

 

俺たちは誰でも快く迎え入れようとしている。人種差別主義者のようなアホを除いてね。昔のシーンはもっとハードでラフだったし、いくつかの理由から全員を受け容れていなかった。信頼できる仲間とだけ一緒にいたいと思っていたからさ。昔の俺たちは、良く知らない奴を家に泊めていたよ。同じ音楽を聴いているならいい奴に違いなかったからさ。でも今はそういうことはできない。

 

昔はたまに誰かのレコードが盗まれたり、何か問題が起きたりすることがあったが、シーンが今よりも大分小さかったから、そういう問題を解決するのは簡単だった。昔、俺たちはビールを超低価格で売っていて、朝から晩まで店先で仲間たちがビールを飲んでいた。で、そいつらが怖くて店内に入れない人がいたんだ。それはそれである意味クールだったが、あるタイミングで、少し変わった服を着ているとか、そういう理由だけで他人に罵声を浴びせたり、からかったりするような奴は店には来てもらいたくないという話になった。仲間たちにそういう行為は止めてくれと伝える必要がでてきたのさ。だが結局、俺たちは直接言う代わりに、ビールの価格を20セントほど(約30円)ほど上げることで状況を変えた。これはウィン=ウィンだった。仲間たちに「お客をリスペクトしてくれ」と頼んで、金儲けしか考えていない奴と思われたくなかったからね。

 

 

 

 

CDが登場すると状況が大きく変わった。ショップのルックスも変わった。レコードとCDは何から何まで違うからね。スペースも棚も変える必要があった。そのあと、CDからダウンロードカルチャーが生まれると、倒産する会社が増えた。何しろ簡単にリッピングできたからさ。その代わりに、グッズ / マーチャンダイズビジネスが台頭した。最近のバンドは新作をハイペースでリリースしない。4~5年に1タイトルくらいだ。だが、Tシャツは毎年4種類リリースしている。だから、俺たちは今1,000種類以上のTシャツを扱っているんだ。これは大きな違いだよ。昔の店内の写真を見ると、今の店内とは完全に違う。商品が変わった。これが昔と今の一番の違いだね。

 

ここ2~3年でヴァイナルがかなり盛り返してきている。だから、店内のレイアウトをまた少し変えたよ。CDは死にかけている。ショップに来れば分かるよ。たまに先行予約を受け付けているんだが、最近だとMadballのアルバム『For The Cause』の限定ヴァイナル300枚が予約で完売した。Core Tex Recordsの30周年スペシャルデザイン(ゲートフォルド・ゴールドヴァイナル・シリアルナンバー)になっていたんだ。予約で完売したから、ショップに並ぶことはなかった。一方、CDは予約で13枚くらいしか売れなかった。CDは全く愛されていないんだ。音楽をサポートしている連中、音楽に生きている連中は、ヴァイナルか、自分の好きなプラットフォームからスマートフォンやタブレットに直接ダウンロードしているのさ。

 

 

 

 

俺たちと一番強く繋がっているのはニューヨークのシーンだ。俺たちが聴いて育った音楽、俺たちが愛している音楽が生まれたシーンだからね。ニューヨークのハードコアシーン、Agnostic Frontやユースクルー第1世代のバンドが俺たちは大好きだし、ニューヨークの連中とは彼らが有名になる前から直接会っていた。彼らは俺たちの友人みたいな存在なのさ。これまでに色々なバンドと仕事をしてきたよ。Core Tex Recordsはレコードレーベル的な機能も果たしてきたから、バンドと直接組んできた。Agnostic Frontの7インチをリリースしたこともあるし、Hatebreedのようなバンドのレコードもリリースしたことがある。Hatebreedは最大のハードコアバンドのひとつさ。今も積極的にツアーに出ていて、年間200本以上のライブをこなしているよ。

 

ショップは今もクロイツベルクのど真ん中にある。大通り沿いだ。クロイツベルクはかつて “壁” の真横に位置していた。まだベルリンは東と西に分かれていた頃の話さ。クロイツベルクは、昔から移民が数多く暮らす低所得者層のエリアだった。トルコ系が多いという特徴が、このエリアをとてもユニークにしている。でも同時に、この特徴がこのエリアに色々な問題をもたらしてきた。だから、クロイツベルクはとにかく他とは違うエリアなんだ。このエリアに長年住んでいる人を俺は沢山知っている。必要なものはここに全て揃っているんだ。映画館、バー、ヴェニューがちゃんとある。俺は別のエリア出身で、シャルロッテンブルクで生まれ育ったから、昔はいつもこっちまで長旅をしなければならなかった。クロイツベルクは小さな村みたいなんだ。住み心地は最高だよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

昔のクロイツベルクは郊外みたいだった。物価は滅茶苦茶安かったし、廃棄された建物がそこら中にあって、家賃は雀の涙だった。だから、1980年代に巨大なスクワットシーンが形成された。スクワットは他のヨーロッパの都市にもあったが、クロイツベルクのは特別だった。このエリアは左翼思想がとても強いからさ。アクティビスト、活動家が沢山いた。クロイツベルクは今もそうなんだ。当時との唯一の違いは、スクワットに住んでいた連中が今はバーやヴェニューを経営しているってことくらいじゃないかな。俺たちが付き合っている連中は昔から変わらない。ここから数ブロック先にある、あの有名なSO36を仕切っている連中とかだね。SO36でのライブは俺たちにとっては最高なんだ。なぜなら、ショップに立ち寄ってビールを買ってくれたり、少し安い値段でチケットを手に入れたりする人がいるからさ。

 

俺は自分たちがやっていることを続けていきたい。巨大な資本主義に抗いながらね。俺たちはレコードショップであり続けることができればそれでいい。俺が言えるのは、ハードでエクストリームな音楽や、他の素晴らしい音楽を好きな人たちがいる限り、俺たちはそういう音楽を売り、ディストリビューションもして、俺たちみたいにやっていきたいと思っているバンドやアーティストを助けていくってことだ。俺たちの愛する音楽はクラブのものだ。ディスコのものではないし、車で聴くものでもない。ヘッドフォンで聴くものでもない。友人がいて、ステージダイブ、ポゴダンス、スラムダンスが行われている、薄暗いクラブの音楽なんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

永遠に続かないことは分かっている。俺も48歳だし、ルックスもパンクじゃない。俺がまだ髪をグリーンに染めたり、モヒカンにしたりしてカウンターに立っていたら、お客からは「白髪交じりの髭のこのおっさんは何なんだ?」と思われるだろう。店に立つスタッフは若者であるべきだ。お客と繋がりを持っている必要がある。だから、俺と2人のパートナーは裏方に回るようになっているんだ。もうパンクなルックスをしている必要はないのさ。パンクスはいつまでもパンクスだしね。パンクってのは、ハートの中にあるものなんだ。話してみなければ見えてこないものなのさ。俺にとってのパンクは、権力者たちに疑問を投げかけること、全てを疑問視することだ。俺たちを追いやって、ゴチャゴチャと指示してくる連中を疑うことさ。

 

俺たちのミッションは、素晴らしいバンドを世の中に届けること、あとはビジネスを続けることだ。5年に1度店舗契約を更改するたびに、ほっとする。肩から重荷が下りるんだ。「あと4~5年は今の仕事を続けられるって家族に言えるぞ」ってね。このショップを始めてから、他の仕事をやることなんて一度も考えたことがないし、これまでの30年と同じようにこの先も続けていきたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

All Photos inc. Header Photo:© Maxwell Schiano