五月 02

NYダンススタイル:Housing, Flexing, Voguing, Jersey House

ニューヨークを中心に盛り上がる4種類のダンスミュージック / ダンススタイルを紹介するイベントBounce Ballroomがブルックリンで開催された。

By Vivian Host

Red Bull Music Academy New York 2013で最も大きなハイプとなったパーティーのひとつがUnited States of Bassだった。このイベントはバルティモアハウス、シカゴジューク、そしてニューオリンズバウンスなど全米各地に根付いた独自のダンスミュージックを紹介するオールナイトイベントだったが、今年、RBMAはその方向性を押し進めたイベントBounce Ballroomを開催した。これは1ヶ月に渡り開催されるRed Bull Music Academy Festival New Yorkの初日(5月1日)の夜を飾ったイベントで、通常は洋服や飲食が楽しめるウィリアムズバーグの夜間マーケットBrooklyn Night Bazaarを会場とし、ニューヨーク / ニュージャージエリアで盛んな4種類のダンスミュージック及びダンス(ハウシング、ヴォーギング、フレクシング、ジャージークラブ)が紹介された。

80年代から現在に至るまでのニューヨークのクラブカルチャーの歴史を包括したこのイベントは、80年代初期のHousing / Loftingに始まり、90年代のJamaican DancehallやVoguing、そしてよりモダンなFlexing / Bone BreakingやJersey Clubに至るまでの、Twitterの更新よりも速いスピードで進化を続けているダンスミュージック / スタイルと、その表現者であるダンサーたちが一箇所に集う贅沢なもので、伝説のダンサーから高校生までの15人以上のダンサーたちが、ダンスホールレジェンドBobby Konders、ハウスのゴッドファーザーTodd Terry、ジャージークラブのSliinkやMike Gip、そしてボールルームハウスのMikeQとコメンテーターKevin JZ Prodigyなど、それぞれのジャンルを代表するDJ陣と共に出演した。今回はこのイベントで紹介されたダンスミュージック、及びダンススタイルの特徴を紹介する。




HOUSING
ハウスダンス(Housing)がいつ始まったのか、そして何から生まれたのかはよく分かっていない。大胆なフットワーク、ボディアイソレーション(特に首や胴)、そして流れるようなムーブはジャズ、B-Boy、ニュージャックスウィング、サルサ、アフリカンの流れを引いたものだ。70年代後半から80年代前半にハウスミュージックと共に台頭したHousingは、Jacking、Juking(シカゴ)、Jitting(デトロイト)、Lofting(ニューヨーク)など全米各地で独自の発展を遂げていった。尚、Loftingという呼称はDavid MancusoのパーティーThe Loftから取られている。

ハウスダンスはスムースさとファンクネス、そしてハウスミュージックの様々なリズム要素を際立たせるような数々のムーブに重点が置かれている。

全米各地のクラブ、ロフトパーティー、レイヴで30余年に渡って磨き上げられてきたハウスダンスは、今や世界各都市でのダンスバトルやダンススクールのカリキュラムにとって不可欠な存在として認識されている。ニューヨークシティでは、Brian “Footwork” Green、Shannon “Shan S” Selby、Voodoo Rayなどの第一世代のダンサーたちや、ヴォーカリストBarbara Tuckerなどによってその伝統が守られ、現在も80年代後半から90年代初期に活躍したEjoe WilsonやCaleaf Sellersなどが世界中を飛び回る間にレッスンを開いている。

ハウスダンスはスムースさとファンクネス、そしてハウスミュージックの様々なリズム要素を際立たせるような数々のムーブに重点が置かれている。現在マンハッタンではCricketとErikoによって頻繁にハウスダンスのサイファーが開催されているが、この2人のダンススタイルは完全に異なっており、Cricketがタップとブレイクダンスをベースにしたジャンプやしなやかさを特徴としているのに対し、Eriko(女性による4/4ビート愛好会House Wivesの創設者)は連続的なグライドとスピンを特徴としている。今回のイベントではこの2人と70年代にLAで生まれたディスコ風ストリートダンス、Waackingの権威であるPrincess Lockerooの3人が、ニューヨークのハウスレジェンドTodd Terryのクラシックセットに合わせたダンスを披露した。




FLEXING
Flexingは90年代中頃、ジャマイカンダンスホールのパーティーで生み出されたBruk Upをルーツに持つ。Bruk Upとは、幼少期の骨の病気を克服してジャマイカで最も人気のあるダンサーのひとりへと成長し、Buju BantonやBeenie Manと共演し、Wyclef JeanやBusta Rhymesのビデオにも出演したGeorge “Bruk Up” Adamsによって生み出された。カニ歩きやショルダーポップ、ゴーストウォークなどのムーブを特徴とするこのBruk Upは、1994年頃にニューヨークシティのダンスホールファンに受け容れられると、徐々にFlexing(あるいはBone Breaking)へと発展していった。

ニューヨークのダンサーたちはBruk UpにWaving、Poplocking、Tuttingなどのストリートスタイルのヒップホップダンスを組み込み、トラップやダブステップなど新しい音楽にも対応させていった。ちなみにFlexingは米TV番組『America’s Best Dance Crew』にフィーチャーされ、YouTube上にも大量に投稿されるなど、高い人気を得ている。またアンダーグラウンドシーンでの評価も高く、ダンサーStoryboard PがFlying Lotusの2013年のビデオ「Until the Quiet Comes」に出演し、Drew DollazとBones the MachineがMadonnaのバックアップダンサーとしてMDNAツアーに同行した他、Flexingのドキュメンタリー映画『Flex Is Kings』も独立系映画館で上映された。

今回のBounce Ballroomには、重力を無視するようなスムースなグライドが特徴のDollaz、彼が率いるGas Mask Mobbのメンバーで、「Bone Breaking」の名にふさわしい体の柔らかさを活かした圧倒的な連続ムーブが特徴のBones the Machine、表現方法が非常に映像的だという理由から「Moviemansam」と呼ばれるSamiam、そして George Adams同様、幼少時の足の病気を克服しシーンを代表するダンサーにまで成長し、その幽玄なムーブとタイトなポップロックからThe Ghostと呼ばれる、Bed-Stuy Veterans/Loud Leagueの創設者Albert “The Ghost” Esquilinがダンサーとして出演し、Hot 97のDJで、Massive Bを率いるニューヨークシティのレジェンドBobby Kondersが音楽を担当した。




VOGUING
Madonnaの「Vogue」とドキュメンタリー映画『パリ、夜は眠らない』により、 80年代にハーレムのゲイシーンから生まれたこのダンススタイルは、シーンに殆ど興味がない人でも知っているはずだ。ファッション誌『Vogue』のファッションモデルたちのポーズからインスピレーションを受けて生まれたVoguingは、ランウェイを歩くモデルを真似たパフォーマンスから複雑なムーブ(デスドロップ、ダックウォークなど)を組み込んだものへと発展していき、後にVogue FemmeやBanjyなど様々なサブカテゴリが編み出されていった。

ボールルームハウスはハーレム時代から長い歴史を誇っているが、最近再びこのボールルームハウスとヴォーグカルチャーに注目が集まっており、特にMikeQやVjuan Allure、B. Ames、Divoli S’vereなどのDJ / プロデューサーたちはシーンを飛び出た形でコラボレーションを重ねている。VoguingはMOMAや『America’s Best Dance Crew』などでフィーチャーされており、またRobbie Troncoの「Walk for Me」やMasters at Workの「Ha Dance」などVoguingのクラシックトラックもUKベース/テクノのBoddikaやフットワークのDJ Rashad、ジャージークラブのJayhood、ドラムンベースのDom & Roland、そしてLAのKingdomなどによってサンプリング・リサンプリングが繰り返されている。ちなみにMikeQはKingdomのFade to Mindから「Stalker Ha」をヒットさせ、ボールルームシーンを世界中に知らしめることになった。

Bounce Ballroomでは Willi Ninja(Voguingの始祖。『パリ、夜は眠らない』の出演者であり、Madonnaにヴォーギングを教えた本人)によって作られた伝説のHouse(チームを意味する)、House of Ninjaのメンバーで、そのグラマラスで流麗でシャープなダンスからVoguingの親善大使的な役割も担っているJavier Ninja、 インストラクター兼モデルとして活躍し、duckwalk、catwalk、dip、spinなどをふんだんに盛り込んだスタイルが特徴のHouse of EvisuのメンバーDashaun Wesley、そして スキンタイトな衣装と15センチヒールを身にまといながらも、軽やかにhair whip、dip、catfightなどを披露する女性的なVoguingが特徴のLeoimy Prodigyという、シーンを代表する3人のダンサーが招待された。またDJはFade 2 Mind/Qween BeatのDJ MikeQが勤め、コメンテーターはKevin JZ Prodigyが担当した。



JERSEY CLUB
今回の4種類ダンスミュージック / スタイルの中で最も歴史が短いJersey Clubは、ここ5年間で急成長を遂げたシーンだ。音楽的には、80年代後半にCharm City DJsのFrank Ski、Scottie B、DJ Spen、Miss Tonyなどによって生み出された、チョップされたブレイクビーツとコールアンドレスポンススタイルのチャントが特徴的なバルティモアクラブの影響を受けている。バルティモアクラブはアトランタからフィラデルフィアを経由して「ブリックシティ」ことニューアークへと伝わり、Brick BanditsクルーのDJ Tameil、Black Mic、Tim Dollaによって、よりハードでヒップホップとR&Bのサンプルを盛り込んだJersey Clubが生み出された。

近年、ニュージャージーには数多くのハングリーな若手DJとプロデューサーが集っており、ボトルサービス系のクラブからプロムパーティーに至るあらゆるヴェニューでパーティーが開催されている。主な客層は高校生、または21歳を越えるか越えないかの若者たちで、パーティーではダンスやクルーの結成、そして新しいムーブの創出が行われている。今回のBounce Ballroomには若干23歳だが、既にジャージークラブシーンのベテランDJであるDJ Sliinkが招待された。尚、DJ Sliinkの活動は、Mad Decentからのリリースやニューアーク周辺の人気パーティー#THREADのスタートアップ、更にはCashmere CatやChris Brownなどのリミックスを手がけた20歳の若手Mike Gipの発掘など多岐に渡っており、その積極的な活動からこのスタイルを代表する存在として知られている。

そしてダンサーとしては、前述のMike Gipが育てたSoSo、Emanni、そしてアーティスト/ラッパー/DJ/ダンサーのFiinesseといった若手ダンスクルーと、DJ LilmanのクルーTeam Lilmanに所属するAni TL、King Naboo、Urkleが招待され、Tip-Toe、Getty Up、One Leg Back、Sexy Walkなどニューアーク周辺で日々編み出されている数々の新しいムーブが披露された。