七月 22

ラリー・レヴァンからのメッセージ:未来へ続く音楽体験
A TRIBUTE TO LARRY LEVAN 2014 - RED BULL MUSIC ACADEMY EDITION – ライブレポート

エレクトロニックミュージック界の伝説ラリー・レヴァンが死去し20年以上の時が流れたが、生前のパラダイス・ガレージでのプレイや音楽性は、時代を超えて音楽文化や新人アーティスト、そして世界中の音楽ファンに影響を与え続けている。

5月11日に彼の功績をたたえ、かつて伝説的なParadise Garageが存在したKing Streetを「Larry Levan Way」に改名しようという署名活動が行われ、Red Bull Music Academyも「Larry Levan Street Party」を開催した。 François Kevorkian、David DePino、Joey Llanosなど、彼と縁の深いアーティストを招いて行われた1日だけのこの大規模なストリートイヴェントには18,000人以上が訪れ、世界へストリーミング配信された映像は10万人以上が視聴するほど、音楽ファンが興奮を体験した。そして今月、日本でもラリー・レヴァン還暦バースデーとなる7月20日と、その前日19日にトリビュートイヴェント「A tribute to Larry Levan 2014 - Red Bull Music Academy Edition - 」が代官山Airと恵比寿Liquidroomで開催された。

 

まず19日には、「次のラリー・レヴァンになる素質」を持つと言われたヴィクター・ロサドが来日、Dazzle DrumsとDJ NORIと共に、アナログを使ったプレイで代官山の夜を沸かせた。

 

Dazzle DrumsがThorensのターンテーブルとUREIミキサーによる80年代のNYを再現したセットアップで観衆を盛り上げていく。そしてDJ NORIはグルーヴ感満ちたインストからボーカルチューンまでアップテンポなクラシックで本格派のNYスタイルを披露し優しくも時に激しく音とリズムでつないでいく。

 

そして大きな身体のヴィクター・ロサドがターンテーブルの前に立つと盛り上がりは最高潮に達し、誰もがディスコやハウスの名曲に身体を動かし歓声をあげ続けた。ヴィクターも時折観衆に目をやりながらも無闇に煽るわけでもなく、彼らの興奮を計るように、静かな緊張感と開放感を醸し出しながら淡々と曲を流暢にプレイし続けた。その姿はまるでリスナーがまだ体験したことのない音楽の世界へ案内するガイドのように、音楽の知性や歴史、文脈そして音楽を愛する純粋な気持ちを表現していく1人のアーティストだった。

 

  

 

20日のゲストにはNYディスコ黎明期の中心的イヴェント「the Gallery」を主催し、ラリー・レヴァンの師でもあるニッキー・シアーノが登場した。ゴスペルやブギーからディスコ、ジェームス・ブラウンなどファンクまでの幅広い選曲、腕を振り歌詞を口ずさみながら観衆を盛り上げる熱狂的なパフォーマンス。前日のヴィクターが「静」のNYアーティストなら、ニッキーはまさしく「動」のアーティストと言える。独特の世界観を情熱的に大音量で表現していった。

 

この日のトップに登場したMOODMANは、1曲ずつで見せる審美眼で丁寧にプレイし、ラリー・レヴァンとNYというストーリーを創りだした。そしてDJ NORIはハウスミュージックの軸の中でも、エレクトロなシンセやヘヴィーなベース音を効かせた昨夜よりもより激しい曲で会場を沸かせた。そしてこの日の最後に登場したMr.T.Tは、身体の奥底から高揚感を引き上げるようなアップテンポのトラックを連続でプレイするパワーを印象づけた。同じハウスでもこれほどまでにも世界観が変わってしまうのかと実感できるほど、豊かなアクトが集まった二日間のイヴェントだった。

 

 

 

 

現代の音楽は、ソフトやPCを使えば、ボタン1つでデータが残せ、流行りの設定に変換し再現することができる、制御可能な世界になった。しかしどんなにプログラムして演出をしても、大音量で聴いた時の驚きや感動、興奮につながる音楽体験は超えられないのではないだろうか。

 

未来の音楽にも、純粋に人を喜ばせたいクリエイターの思いが込められており、言葉を超越して人を感動させ続けるはずだ。それは、音にこだわりつつも、決してサウンド・システムに制限されずに独自の世界観を体験させてきたラリー・レヴァンが伝えたかったメッセージのような気がした。そしてこの思いの継承者とも言える、未来の音楽のクリエイターが集まるRed Bull Music Academyの日本開催が今秋に迫っている。果たしてどれだけ「音楽を体験する」世界を目指す挑戦者がそろっているのだろうか。今から楽しみになってきた。

 

Text by Jay Kogami