八月 13

アフロビートガイド

現在UKのダンスミュージックシーンで最も勢いのあるジャンルのひとつを紹介

By Ian McQuaid

 

アフロビートは常に変化している音楽だ。このジャンルは非常に漠然としており、 Burna Boyのジャマイカ音楽的なストリートアンセムやガーナ人プロデューサーSarzのEDM的なハイエナジーなレイブトラックまで、様々なテンポ、表現方法、リズムパターンを擁する。そして2012年の「Azonto Fiesta」のダンスや昨年のShokiなど、時としてダンスをも巻き込みながら、毎年新しいトレンドが生まれては消えていく。

 

これまで、これらの流行は基本的にはアフリカの2都市、ラゴスとアクラから発信されてきた。現在西アフリカは音楽の黄金時代を迎えており、WizKid、D’BanjやDavidoなどのアーティストが、メインストリームの力を借りず、ほぼソーシャルメディアだけの力で音楽を広め、世界的な人気を獲得している。2012年頃までにはガーナがアフリカナンバーワンのインターネット回線速度を誇る国となり、ナイジェリアも8位に食い込んだ。このインターネット回線の高速化が、FacebookやTwitterなどのバイラルパワーと共に、今まで想像すらできなかった形でファンへ直接音楽を届けることを可能にしている。彼らの音楽は数万人規模のローカルから、数百万人規模の西アフリカ出身の人たちの元までも届くようになっており、世界規模でファンと繋がっている。

 

 

 

"プロデューサーたちはヒップホップサンプルをチョップしたジャングルや、ディスコクラシックを再利用した2ステップなど、ジャンルを融合させる手法でアフロビートを生み出している"

 

 

 

その中で、ここ2年程前から、西アフリカ移民の第1世代、第2世代を核とするUKの新世代のプロデューサーたちがこの新しい音楽に反応し始めている。Fuse ODGの成功に少なからず影響を受けたアーティストたちが独自のスタイルでサウンドを生み出しており、UKのオーディエンスに受け入れられる形にアジャストしてこの音楽を紹介している。プロデューサーたちはヒップホップサンプルをチョップしたジャングルや、ディスコクラシックを再利用した2ステップなど、ジャンルを融合させる手法でアフロビートを生み出しており、英語と現地語を融合させた歌詞、シンコペーションの強いリズム、ドラムを前面に押し出したサウンド、アフロビート独特のヴォーカルメロディーが、UKのストリートサウンドと意図的にミックスされている。

 

 

この手法は2011年頃にUKファンキーがディープハウスへ傾倒して以来、彼らの間に浸透し続けている。UKファンキーシーンがMCを中心に据えた粗くファンキーなスキャンクから離れていくと、それまでシーンで成功を収めていたMCたちも離れていき、Mista Silva、SKOB、Tribal Magzなどのアーティストたちはファンキーなレイブサウンドに力を入れ始め、アフロビート特有のスタッカート的な跳ねるハウスビートを用いながら、西アフリカのスラングを歌詞に取り込み、自国(もしくは両親の出身国)の生々しいグルーヴを携えたUKバージョンを生み出していった。Mista Silvaが2012年にリリースしてヒットさせた「Bo Won Sem Ma Ne」はその代表格で、アクラを拠点にするデュオ、5 Fiveのヒット「Move Back」のビートの上に乗せられたSilvaの活き活きとしたヴォーカルがこのトラックを輝かせている。

 

その年の後半、Weray EntクルーがUKとナイジェリアの本格的なハイブリッドトラックを、アフロビートバージョンの「Pow!」である「Ching Chang Wallah」で試みた。このトラックはアグレッシブなグライム風シンセとナイジェリアのスラングを用いたフロー、低音の効いたパーカッションを使ったBPM120のヘヴィーなリズムが特徴的だ。このトラックはアフリカではあまり話題にならなかったが、他のアーティストたちの指標となっており、彼らの努力はようやく報われつつある。

 

 

「2014年、UKサウンドの多くがアフリカのアフロビートマーケットへ進出していったんだ」シーンを代表するDJ Neptizzleが説明する。「アフリカ音楽だけを聴いているオーディエンスに聴かせても受け容れられるんだよ。UK産のトラックで、今アフリカで話題になっているトラックのひとつが、Kwamz & Flavaの『Wo Onane No』さ」

 

 

 

"アフロビートを聴かない連中も、イントロを聴けば、『DJ Mustardのどのレコードだ?』と訊ねるようになり、『ワオ、アフロビートがこんな音楽になれるなんて思わなかったよ!』と言うのさ"

− BoatzMadeIT

 

 

 

2014年の春にリリースされた「Wo Onane No」はブレイクするまで時間がかかった。このトラックは明らかにDJ MustardのR&Bのスタッカート的手法を参考にしているが、Mustardが得意とするBPM100をBPM110にまで上げることでドライヴ感を増しており、UKファンキーのスネアパターンを用いたシャッフルの効いた4/4ビートにディープなシンセパッドを併せつつ、呪文のようなKwamzとFlavaのヴォーカルをその上に乗せている。Abrantee、Edu、Naptizzle、Afro BなどのDJたちにヘヴィープレイされたこのトラックは、ヒップホップDJとハウスDJに支持されたが、このトラックをプロデュースしたNewton “BoatzMadeIT” Boatengは、この盛り上がりは想定内だったとしている。

 

「俺はヒップホップをイメージさせるようなトラックを作ろうとしているんだ。俺自身もDJだけど、自分がプレイする時は色々なジャンルをミックスしようとしている。DJが『Wo Onane No』をヒップホップかバッシュメントにミックスするのを聴くけれど、これこそ俺が狙っていたことさ。アフロビートを聴かない連中も、イントロを聴けば、『DJ Mustardのどのレコードだ?』と訊ねるし、最後には彼らもアフロビートのレコードを聴くようになって、『ワオ、アフロビートがこんな音楽になれるなんて思わなかったよ!』と言うのさ」

 

現在、アフリカを拠点にしているアーティストたちはこの「Wo Onane No」の成功に注目しており、プロダクションをBoatzに任せようと躍起だ。「俺はみんなと同じことをやるつもりはないね。逆に俺がトレンドを生み出したい。それを世界レベルに広げたいんだ」こう説明するBoatzの生み出したトレンドに、UKの他のアーティストたちもすぐに反応し、Mustardの隙間の多いサウンドを自分たちの音楽の重要な要素のひとつとして扱っている。Mustardのそぎ落とされたエレクトロニック・ミュージックは、同じく隙間が多いリズムとシンセメロディーから成る8小節ループが特徴のグライムで育ったキッズには伝わりやすいため、この流れは極めて自然と言える。

 

 

C-BoyことCharles Oladunniの「Super Eagles」は自分のルーツへのオマージュで、ビートの上にナイジェリア土着のヴォーカルメロディーが乗せられた、米国のR&Bとアフロビートを組み合わせたものだ。

 

「俺はMustardのような米国から影響を受けたサウンドとアフロビートを組み合わせているんだ」C-Boyはこう説明しながらも、明確な差異を次のように説明する。「だけど、俺のトラックには独自のエレメントがある。ユニークだし、他とは違う。新しいスタイルを持ち込もうとしているんだ。だって俺たちはアフリカじゃなくてUKだからね。独自のジャンルを生み出そうとしているのさ。米国をはじめ、既にスタイルが確立された他のサウンドの真似をしても意味がない。俺たちの手元にはトラックを作るのに必要なものはすべて揃っているんだし、逆に他の奴らが真似したいと思うトラックを作るんだ」

 

C-Boyのこれまでのリリースにはハウス、そしてグライムまでもが取り込まれている。1年前にリリースされた「Drop Your Load」は、グライムを代表するトラック「Ghetto Kyote」を彷彿とさせるもので、「Ghetto Kyote」のシンセのメロディーラインがアフリカのチャントのフレーズとして再利用されている。

 

「俺はグライムを聴いて育ったからね。まぁ、グライムをはじめ、ありとあらゆるジャンルが俺のトラックに影響を与えているよ。俺はすべてをひとつにまとめているんだ。ハウスに影響を受ければハウスになるし、どんなトラックでもありえるね」

 

 

 

"「Confam It」は前例らしい前例が見あたらない。Omeizaにとってこのトラックは「進化」のサウンドだ"

 

 

 

UKのアーティストたちは実用主義的なアプローチを取っている。UKが拠点の彼らは、複雑で特殊なピジンイングリッシュを用いたストレートなアフロビートが、ラゴスやアクラではロンドンやリヴァプールのようには受け容れられないことを理解している。そのため彼らは自分たちを現地に適応させるのだが、これには大きく分けて2つのアプローチが用いられている。まず、アフリカのアフロビートのトラックは、ビートに合わせながらメロディーとシンクロするようなヴォーカルを用いる傾向があるが、UKのアーティストたちは全体のメロディーよりはキャッチーなフレーズのリピートを重視しており、またリズムもパワーを重視している。UKではリリックのダイナミクスがその内容と同じ重要度で扱われており、Vibe Squadの「Drop」はこの好例と言える。彼らのリリックはナイジェリア人独特の強いアクセントで歌われているが、ピジンイングリッシュは用いておらず、フロアを沸かせるようなパワーを持ったワンフレーズのコーラスを重視している。

 

2つ目のアプローチは欧米の音楽要素の存在感を高めるという方法だ。ナイジェリアのDavidoなど、アフリカのビッグアーティストは「Aye」のような楽曲で自国での大ヒットを狙える。この曲は基本的には伝統的な西アフリカのラブソングだが、UKのアーティストたちはこのような楽曲がUKのオーディエンスに同様に受け容れられるとは考えておらず、アフロビートのビートの側面だけを利用することに注力している。

 

BoatzMadeITやC-Boyと同様、プロデューサー兼アーティストのOmeizaことDavid Aliyuもこの点を強く意識しており、トラックにEDM的手法を取り入れているが、彼にとってのEDMは、Tiëstoよりも、Cashmere Cat、Disclosure、Kaytrananda、James Blakeに近い。

 

 

その結果として生み出された「Confam It」の謎めいた作風は、マンチェスター在住のナイジェリア人Ezi Emelaと共に作られたものだ。このトラックは前例らしい前例が見あたらない。深いリバーブに沈んだドラム、輪郭がはっきりとしないレイヴシンセ、そしてEzi Emelaの囁くようなヴォーカルが特徴のこのトラックはヒップホップ、エレクトロニカ、アフロビート、ソウルの影響が感じられるが、これらのどれにも似ていない。Omeizaにとってこのトラックは「進化」のサウンドだ。

 

「しばらくアフロビートを作っていたし、自分を違う方向へ進めたかった。アフリカのサウンドをEDMやソウルと組み合わせて、マーケットを横断するようなトラックが作りたかった。ナイジェリアのビッグヒットはUKでは売れない。何故なら共感出来ないからね。だからアフリカ人がUKの人たちに理解される曲を作るには、違うアプローチが必要になる。いかにもアフリカなトラックよりも『Confam It』のようなトラックの方が彼らは反応するのさ」こう説明するOmeizaは「Confam It」のポジティブなリアクションに好感触を得たため、更なる進化を目指しており、現在は攻撃的なトラップをハウサ族の伝統音楽と組み合わせようとしている。

 

「Fuse ODGのチャートヒットからどれだけ距離を取ろうと、結局みんなが生み出そうとしているのはアフロビートだ」という指摘に異論を唱えるプロデューサーはいないだろう。彼らはジャンルの壁を作り出して、ひとつのテンポ、ひとつのサウンド、ひとつのリズムパターンに自分たちを閉じ込めようとは考えていない。彼らの多くは、スローなR&Bに影響されたトラックでも、パワフルでフロア向けの4/4ビートのトラックと同様、アフロビートのトラックになり得るという考えを持っている。ある意味、アフロビートという言葉は「アーバン」のアフリカバージョンのようなものであり、つまりは音楽よりも単純な「言葉」に近い存在で、その範疇には様々なサウンドが含まれる。しかし、「アーバン」と異なるのは、「アフロビート」が本来の意味を失っていないということだ。非アフリカ系アーティスト(DJ Neptizzleはベトナム系だ)がアフロビートを生み出せるようになっている一方で、サウンドのルーツ自体に変化はない。

 

そして多分これこそが、彼らがアフロビートを誇っている理由だ。C-Boyは「アフロビート」という言葉からは大きな自由を感じ取れるとしている。「アフロビートなら自分の好きな方向に進めるんだということを知った時に得たあの感覚は、言葉じゃ説明できないね。ただの感覚なんだよ。ビートを聴いて、それを気に入り、『自分のやり方で表現できるぞ』と思うだけさ。自分自身に戻って自分を表現するだけ。境界やルールはないんだよ」