六月 05

TAICOCLUB’15 Red Bull Music Academy Stage イベントレポート

今年はRBMAステージとして、Red Bull Music Academyの卒業生含む9組のアーティストによるパフォーマンスが展開

今年で10年目を迎える「TAICOCLUB’15」。昨年はサカナクションの山口一郎氏、そしてミニマル・テクノの第一人者であるダニエル・ベル氏によるパブリックレクチャーや、RBMAによるドキュメンタリー映画の上映がレッドブル・ミュージック・アカデミー(以下RBMA)のブースにて行われたが、今年はRBMAステージとして、アカデミー卒業生を含む9組のアーティストたちによるパフォーマンスが繰り広げられた。

 

 

・ WHITELIGHT
会場の基本音響設計はWHITELIGHTによるもので、メインスピーカーを前後左右に4ch、無指向型スピーカーを4ch、計8chのスピーカーシステムで、独立音源を再生出来る環境にセットアップされた。RBMAのステージは、このWHITELIGHTによる無人のセットで幕を開けた。国内外の様々なプロジェクトの第一線でサウンドデザインを手がける彼らだが、今回は、北海道で録音したフィールドレコーディング音源に、シンセや楽器の音をのせたオリジナル・トラックで、マルチチャンネル再生を試みたという。こうして会場は、神秘的な空間へと変貌していき、厳かな雰囲気の中、RBMAのステージがスタートした。

 

 

 

・Albino Botanic
21時を回りRBMAステージが蝋燭の幻想的な光に包まれる中、Albino SoundとSayaka Botanicによるこの日限りのユニット、Albino Botanicによるアンビエントセットが披露された。ギターを抱えて登場したAlbino Soundは、昨年の秋に開催されたRed Bull Music Academy Tokyoに、世界59カ国6000名を超える応募者から選出されて参加しており、ゴールデンウィークに開催された「RAINBOW DISCO CLUB」のRBMAステージでも初日のトップバッターを飾っているが、この日は大きな盛り上がりを見せる他のステージを尻目に、大自然の暗闇に溶け込んでいくような幻想的なステージを披露していた。音響ノイズの中にギターの音色を織り交ぜながら楽曲を構築していくスタイルはFenneszを思わせるが、「音楽を作ったり即興でライブをする時はスポーツをしている時と同じ感覚で作っています」と彼が言うような偶発的な表現とSayaka Botanicのバイオリンが加わることでよりダイレクトに想像力を掻き立てられるサウンドが生み出されていると感じた。

 

 

 

・Young Juvenile Youth
続いて登場したのは、シンガーのYukiとソロでも活動するトラックメイカー、Jemapurによるユニット、Young Juvenile Youthだ。4月にiTunes Storeでデビューミニアルバム『Animation』を先行リリースし、CD版のリリースを6月3日に控えている彼らのライブを一目見ようと、ステージには多くのオーディエンスが詰めかけていた。Yukiのカリスマ性のある佇まいから発せられる歌声は意外にも端正で、Mice Paradeのサポートアクトを務めたこともあるJemapurのシンプルでありながらどこかいびつなトラックを、とてもポップで開かれた印象にしている。Jemapurのアンビエント、エレクトロ、ロウハウスなど様々な音楽を吸収したトラックの数々を飄々と乗りこなす新人とは思えない堂々としたパフォーマンスで、今後の躍進を期待させる素晴らしいライブだった。

 

 

・Ryo Murakami
12時を回ると、深夜の訪れを告げるようにRyo Murakamiのパフォーマンスが始まった。繊細に変化する音の質感と破壊的なダブ処理から生み出されるアブストラクトな音像は夜の大自然と相まってダークな世界観を構築しており、一聴すると難解で複雑な印象を受けるが、時折鳴り響く現在のロウハウスシーンとも共鳴するようなキックやミニマルな展開によって、深遠な空間が延々と広げていくような自由さも同時に感じさせる重層的なライブだった。

 

 

 

・Ametsub (Mbira+DJ)
TychoやClammbonなどのリミックスを手掛け、宮内優里と坂本龍一が年間ベストディスクに選出するなど、現在のエレクトロニカシーンにおいて圧倒的な知名度を誇るAmetsubのライブは、ピアノを中心とした美しいメロディラインとスリリングなカットアップによる独特のグルーヴを生み出しており、ライブならではの音の抜き差しやエフェクトも相まって心地よい高揚感を生み出していた。

 

 

・Yosi Horikawa
Ametsubの美しいメロディーを引き継ぐかのようにスタートしたYosi Horikawaのステージは、浮遊感のあるビートに波の音や映画のセリフと思われるサンプルボイスを散りばめながら、まるで短編映画のように多彩な側面を見せていた。様々なジャンルを横断していながら、一貫した美学が貫かれたサンプリングセンスは、The Avalanchesなどの影響を感じさせるが、現行のクラブミュージックのエッセンスも取り入れながら、あくまで今の音として鳴らす感性は、世界中で大きな注目を集める彼にしか成し得ないと感じさせるほど圧倒的なものであり、集まったオーディエンスの反応も今日一番だったのではないだろうか。

 

 

 

・砂原良徳
次に登場したのは、真っ黒な衣装とラップトップといういつもの出で立ちの砂原良徳だ。初のアンビエントセットでありながら、研ぎ澄まされたミニマルなビートとストイックな姿勢という芯の部分は決してブレることなく、グリッチ的な音響を織り交ぜながら徐々にオーディエンスの体温を上げていくスタイルはもはや職人技と言っても良いだろう。『TAKE OFF AND LANDING』からの楽曲も披露され、ベテランの凄みを見せつけられたパフォーマンスであった。

 

 

 

・Lo-shi
本ステージ唯一のバンド編成での出演となるLo-shiは、リズムマシン、ギター、テルミンという珍しい編成もさることながら、テルミン担当のラルーフが野外フェスであるにも関わらず、ファーマルなシャツにジャケットという服装であったり、お互いが全く別の方向を向いて黙々と演奏したりと、ダモ鈴木や灰野敬二などの強者と共演を果たしてきたのも納得できるただならぬ雰囲気を漂わせていた。しかし、音楽自体はクラウトロックからの影響を感じさせるリズムマシンのリズムに、テルミンやサイケデリックなギターの音色を加えることで心地良いグルーヴが構築されていた。また、口琴を使うなどニューウエイヴ好きにはグッとくるパフォーマンスが披露され、意外にも実験的でありながら独特のユーモアや親しみやすさが感じられる魅力的なパフォーマンスだった。

 

 

・A Taut Line
21時から続いたRBMAステージのトリを飾るのは、Diskotopiaのオーナーやパーティのオーガナイズを行う一方で、本隊A Taut LineとしてのリリースやGreeen Linez名義での活動など、幅広く活動するA Taut LineことMatt Lyneだ。レアグルーヴ(Manu Dibango「New Bell」もプレイしていた)から、ヒップポップ、レゲエ、テクノ、ゴルジェ、JUKEなどを、ヴェイパーウェイヴやシーパンクなどと、インターネット以降のシーンの感覚で融合させた、まるで闇鍋のような音楽性は縦横無尽でありながら、いびつなポップセンスで貫かれており、ひとつのスタイルにとらわれず様々な年代、ジャンルの音楽を取り入れようとする、彼のプロデューサーとしての探究心を垣間見ることができた。

 

リラックスしながら踊ったり寝転がったりしながら思い思いにオーディエンスが音楽を楽しんでいたフロアにもいつしか朝日が降り注ぎ、10時間、総勢9組にも及んだパフォーマンスは日の出とともに終了した。