Oct 23

DJ NOBU

現在日本で最も多忙で努力家なDJに、Mike Sundaが話を聞いた

By Mike Sunda

 

日本のテクノ・シーンを代表する1人であり、ここ10年以上に渡り日本のクラブを頻繁に回っているDJ Nobuならば、メディアに対し「積極的」とまではいかずとも、気楽に対応してくれるはずだと思う人がいるかもしれない。しかし、筆者の最初のいくつかの質問に対する彼の答えは素っ気なかった。「出身は?」、「千葉の海辺の街、鴨川です」、「若い頃はどんな音楽を?」、「昔はギター、あとクラリネットを演奏していたことがあります」とまばたきもせずに回答した。

 

 

このようなややつれない態度も、彼に過酷な週末 が待ち構えていたことを考えれば当然かもしれない。このインタビューの後、DJ Nobuは渋谷のWombへ向かい、Scubaの出演するパーティーで2 時間のプレイをこなした後、今度はそのまま長野へ直行し、りんご音楽祭で朝11時からプレイする予定になっていた。DJ Nobuは日本国内でDJだけで 生活している数少ないアンダーグラウンドDJのひとりだが、本人は他にこのキャリアを目指す人が多くない理由を明確に理解している。「(DJという生き方は)本当にきついですよ。でも自分はこのために生きていると実感できるんです。」

 

またDJ Nobuは、これとは違う人生があり得たこともよく分かっているように感じられた。自分のこれまでの生活について細かくは話さなかったものの、長らく不本意な仕事で生計を立てなければならない時代があったこと、そして目立たずとも残っている当時の傷が彼の表情に見え隠れしていた。しかし今、DJ Nobuは音楽だけに集中し、DJ、プロデューサー、主宰するレー ベルBittaの運営、パーティー「Future Terror」のオーガナイズなど、多岐に渡る活動で多忙な生活を送っている。2001年にスタートし、昨 年末に12周年を迎えた「Future Terror」は、最近では代官山UNITと彼の地元である千葉市内の会場で不定期に開催されている。そしてフレッシュな客層から長年のファンまでを集めながら、かなりのキャパシティを持つこのヴェニューを満員にし続けているという事実は、彼のDJとしての人気のみならず、近年ではベテラン電子作曲家Charles Cohen、Morphine Records主宰のMorphosis、フィラデルフィアのデュオMetaspliceなどを招聘しているこのパーティーの、挑戦的な姿勢が受け入れられていることを裏付けている。 

 

 

DJ、 プロデューサーとして積極的に活動している彼だが、その名前が示す通り、認知度が高いのはDJとしての彼だ。「元々はNobuという名前で活動していたん ですが、デトロイトでプレイする時にDJ Nobuと表記されていたんですよね。それでその名前で活動することにしました。結局、僕はDJですし。」彼は主にテクノDJとして知られているが、他のスタイルやジャンルにも精通しており、所有するレコードの枚数は1万枚を上回るが、その膨大なコレクションの整理には苦労しているという。この取材後も、ドイツ人ハウスDJ、ProsumerやUKテクノをけん引する新星Livity Sound、デトロイトのBig Strickなど幅広いアーティストとの共演が予定されている。しかし、一番の目玉となりそうなのは、RBMAの一環として11月に予定されているBen UFOとのB2Bだろう。DJ NobuがB2Bに臨むのは珍しいことではなく、時折Cabaret RecordingsのDJ Masdaと共演している他、今年始めにもPeter Van HoesenやSandrienと共にプレイしている。「最初はSandrienと2人でB2Bをやっていたんですよ。そこに途中からPeterが入ってきた。Peterは、B2Bの時に露骨にエゴを出してくるDJは嫌いだ、B2BはDJとしてお互いを尊重し合える人としかやらないと言っていたのが印象的でしたね。」このように言うDJ NobuとBen UFOの組み合わせならば、リスペクトに欠けることはないだろう。特にそのアフターパーティーの雰囲気の良さから東京のクラブファンに長年愛されているOATHで開催されるこのパーティーでは、最高級の選曲が楽しめるはずだ。

 

DJ NobuもBen UFOと同様に ダンスミュージックを幅広く聴いている。最新のミックスCD『Dream Into Dream』では、Yves De Mey、Rrose、Kangding Rayといったアンダーグラウンドなテクノから、ニューヨークのL.I.E.S.の作品や、昨年「Future Terror」にも招聘したMetaspliceのようなラフなサウンドが収録されており、 いわゆる一般的なクラブ・ミュージックのイメージとは違った、彼の音楽的原体験であるパンクやハードコアの要素も反映されているようにも聴こえる。

 

「僕はパンクとハードコアが大好きでしたし、今でもたまに聴きます。ライブにも出掛けますし、先日浅草で開催されたグラインドコアのフェス(※DoomやCripple Bastards等が出演したObscene Extremeというフェスティバル)にも行きました。」過去にMasonnaこと山崎マゾやIncapacitantsなどのノイズミュージシャンたちと共演した経験が、若かりしDJ Nobuをエレクトロニック・ミュージックの制作 –サンプラーのAKAI S3000とCubaseを使った「コラージュ」という手法 −  へ導いた。「90年代の終わり頃はUKのSubheadと仲が良かったんです。それでビデオゲーム『ストリートファイター2』のサウンドをS3000で サンプリングして作った僕のコラージュを彼らが2CBからリリースしたんです。今は誰にも聴いてほしくないですけどね!」

 

 

 

DJとしてのDJ Nobuは、元々ハウスとディスコをプレイしていたが、次第にテクノ寄りのスタイルへ変化していったと言う。「元々、ちょっと変わったトラックが好きだったんですよ。ニューヨークのストレートなハウスよりも、Ron Hardyの変なエディットの方が好きでした。だから例えば今も、”Raw House”と呼ばれるようなトラックの方が好みなんです。昔はハウスとディスコを中心にプレイしていましたが、宇川(直宏:Dommune主宰)君にMixroofficeでプレイしないかと声をかけてもらって、Funktion-Oneのサウンドシステムで初めてプレイしたんですよね。Mixroofficeの音の柔らかさと解像度の高さを活かすスタイルを模索しているうちに、テクノにのめり込むようになりました。」

 

それ以降、DJ Nobuのキャリアは高みへと登り続けている。日本国内を定期的に回りながら、海外でも頻繁にプレイしており、今年は既にBerghainとPlastic Peopleに出演した他、このインタビューの後にはオランダ、フランス、ドイツでのプレイも予定されている。DJ Nobuのプレイのトレードマークとも言える特徴は、フロアをじっと注視し観察する姿だ。「フロアの雰囲気が読めなければ、良いDJは出来ないと思います。当然、技術が左右する場合もあるけど、重要なのは人。フロアにいる人たちです。彼らの気持ちを理解できなければ優れたプレイはできません。彼らをより音楽にフォーカスさせてあげたいという気持ちがないと。」だからといって、DJ Nobuのプレイがフロアを沸かせるようなトラックに頼っているかというと、全くそんなことはない。むしろそれとはかけ離れている。彼のセットは予想不可能で、急激な変化や震動を伴うものであり、オーディエンスをねじ曲がった規格外のテクノの世界へ引き込んでいくが、DJ ブース内の本人はまるでベテランの作曲家のように、フロアの雰囲気を担うオーディエンスの流れにしっかりと反応しながら、全体を指揮していく。

 

 

 

実際のところ、DJ Nobuが積極的に話し始めたのは人間同士のコミュニケーションに話が及んだ時で、一部の日本の政治家たちがマイノリティーへの差別を容認するような動きを見せていることについて本人は憤りを隠さなかった。「時間に余裕がある時はヘイトスピーチを止めに働きかけにいったりもします。僕は差別が嫌いなんですよ。自分も差別された経験がありますし、あれは許容出来るものじゃないです。ドイツへ行った時に、Tama Sumoが主催していたロシアの同性愛禁止法に反対するLGBTのイベントに行ったんですよね。僕が言うと奇妙に聞こえるかも知れませんが、BerghainでDJをすることは、僕にとって凄くスピリチュアルな体験なんです。例えばそこで踊っているゲイの人たちが日々直面している苦労を僕が理解することはできませんが、あのクラブの中では様々な属性を持つ人たちのお互いへのシンパシーが感じられる。」

 

ソーシャル・メディア上で彼が政治的な問題について発言すると、攻撃される時があると彼が言ったことには驚かされた。DJ Nobuは最近Twitter経由で彼の元へ送られてきた、何の文章も書かれておらず、挑発的に笑う日本の某政治家の顔写真が添付されているだけのメッセージを見せてくれた。「僕は元々パンクとハードコアの世界にいたので、音楽や社会の出来事を真剣に受け止め、考えるという姿勢はそこから来ています。だから、僕にとって(そうした発言をすることは)当然のことなんですが、そういう自分を攻撃してくる人がいるんですよね。」

 

インタビュー開始時からはかなり話題が変わっていたが、DJ Nobuはその後に予定されていたWomb でのプレイが無ければ、社会政治的な問題に関して、いつまでも話をしてくれるように思えた。表面的にはパンクやハードコアの時代から先へ進んだように見える DJ Nobuだが、当時の熱き魂は今でも彼の音楽の中に存在している。彼が日本国内で最もエキサイティング且つ重要なDJのひとりとして存在し続けている理由はそこにあるのだ。

 

Photos: Cedric Diradourian